AstroXが岩手県宮古市と包括連携協定を結び田老地区で実験へ

気球でロケットを成層圏まで持ち上げ、そこから空中発射する「Rockoon方式」を開発するAstroX株式会社が、2026年9月10日に岩手県宮古市と包括連携協定を締結しました。
市の北部にある田老地区を実験と打上げの場所とし、2026年10月から各種実験を順次実施する予定です。
AstroXにとって、自治体との包括連携協定は2023年の福島県南相馬市に続く2例目にあたります。

3行で分かるポイント

  • AstroXと宮古市が2026年9月10日に包括連携協定を結び、市北部の田老地区が気球とロケットの実験場所になりました。
  • 協定には実験環境の確保のほか、市内の事業者への発注や、小中高校での授業・講演も盛り込まれています。
  • 同社は2026年度中に気球から発射したロケットで高度100kmへ到達し、2029年度中の衛星軌道投入を目指しています。
目次

まず押さえたい背景

AstroX株式会社は、福島県南相馬市小高区に本社を置く2022年5月20日設立の会社です(出典: AstroX「Company」)。事業内容は宇宙輸送事業で、東京都台東区のオフィスのほか、南相馬市原町区に福島R&Dセンターと工場を構えています。

同社が開発しているのがRockoon方式です。
地上の発射台からロケットを打ち上げるのではなく、高高度気球でロケットを成層圏まで運び、そこで空中発射します。

成層圏は地表付近より空気が薄く、そこから飛び始めるロケットは、地上から飛び立つ場合に低い高度で受ける空気抵抗を避けられます。
AstroXはこの方式によって、従来より効率的で柔軟な宇宙輸送の実現を目指すとしています(出典: PR TIMES・AstroX株式会社「AstroX×岩手県宮古市、包括連携協定締結―東北2例目の自治体パートナーシップで宇宙への道を拓く」。以下、今回の協定に関する内容は同リリースによります)。

相手方の宮古市は、岩手県の沿岸部にあり、本州最東端に位置する市です(出典: 宮古市「宮古が分かったつもりになれるQ&A」)。
東に太平洋が開けていて、市域は旧市街のほか、北部の田老地区、内陸の山間部に分かれています。

包括連携協定は、個別の1件だけを対象にするのではなく、複数の分野にまたがる協力の進め方をまとめて定める取り決めです。

何が発表されたか

協定の締結式は2026年9月10日16時、宮古市民交流センターで行われ、AstroX代表取締役CEOの小田翔武氏と、宮古市長の中村尚道氏が署名しました。

協定に盛り込まれた連携・協力の事項は4つです。

  • 「ロケット・気球等の実験及び打上げの実施環境の確保及び支援」——田老地区での用地利用の調整、安全の確保、住民や漁業協同組合との調整を進めます。
  • 「市内事業者との連携及び地元調達の促進」——建設工事を地元に発注するほか、資材・物流・宿泊も市内での調達を進めます。
  • 「次世代人材の育成」——市内の小中学校・高校を対象にした出前授業や講演を実施します。
  • 目的達成に必要なその他の事項

実験と打上げの場所として挙げられているのは、田老地区のグリーンピア三陸みやこ周辺です。
選定の理由として、同地区は周辺に住宅地が少なく、実験や打上げを行ううえでの条件が合致していることが示されています。
各種実験は2026年10月から田老地区で順次実施する予定で、具体的な日程は天候などにより変動します。

締結の当日には、午前に田老第一小学校で宇宙の授業が、午後に田老第一中学校と宮古北高校で講演が行われました。

AstroXは、2026年度中にRockoon方式で宇宙空間(高度100km)へ到達する計画を示し、これが民間として世界初になるとしています。
さらに2029年度中の衛星軌道投入を目指し、商用化の段階では年間50回の打上げを計画しています。

宇宙業界にとっての意味

ロケットの実験や打上げは、機体さえできれば実施できるものではありません。
落下が想定される範囲の安全を確保し、周辺の住民や、海を使う漁業関係者と日程を調整する必要があります。
今回の協定は、この調整を市とともに進める枠組みを、実験開始の前に取り決めたものといえます。

地域の側から見た効果については、先行する南相馬市での数字が示されています。
南相馬オフィス勤務のメンバーは6名、地元への発注は累計116件・累計5,800万円で、1回の打上げでは約400名が南相馬市に宿泊しました。
ロケット開発が、工事や資材、宿泊といった形で地元の事業者に回る金額として説明されている点が特徴です。

宇宙輸送の分野では、打上げ場所をどこに確保するかが開発の速度を左右します。
Rockoon方式は地上に大規模な発射台を必要としない一方、気球を放つ広さと、東に開けた海域が要ります。
AstroXが南相馬市に加えて宮古市という2つ目の拠点を得たことは、実験の場を広げる動きにあたります。

今後の注目点

まず確認したいのは、2026年10月から田老地区で始まる実験の中身と、そこで何段階目まで進むかです。
田老地区での用地利用の調整や、住民・漁業協同組合との調整がどう進むかも、実験の日程に直結します。

そのうえで、2026年度中を目標とする高度100km到達が計画どおりに進むかが節目になります。
高度100kmに届けば、次は2029年度中の衛星軌道投入という、より難しい段階へ移ります。
軌道に乗せるには高度だけでなく、周回を続けられる速度まで加速する必要があるためです。

ほしまる

協定を結んだら場所がすぐ決まった、というわけじゃないんだね。用地の調整も、住んでいる人や漁協との話し合いも、これからなんだ。

出典

ほしまる
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