AT&Tら米大手3社が衛星とスマホを直接つなぐ合弁会社を正式設立

米国の大手携帯電話会社AT&T、T-Mobile、Verizonの3社が、衛星から手持ちのスマートフォンへ直接電波を届ける通信サービスのための合弁会社を正式に設立しました(出典:Via Satellite「Verizon, AT&T and T-Mobile Formally Establish Joint Venture for D2D Services」)。
3社は2026年5月14日に設立の基本合意を発表しており、今回、正式な合弁事業契約を結んだ形です。
正式なCEO(最高経営責任者)を探している間は、通信業界で長く働いてきたポール・ロス氏が暫定CEOを務めます。

3行で分かるポイント

  • 米国の携帯大手3社が、衛星とスマホを直接つなぐ通信のための共同会社を正式に立ち上げた
  • 3社が持つ電波の利用枠を持ち寄り、複数の衛星会社が参加できる共通の仕組みを作るとしている
  • 各社が衛星会社と個別に結んでいる契約はそのまま続き、共同会社が取引を独占するわけではない
目次

まず押さえたい背景

AT&T、T-Mobile、Verizonは、米国で携帯電話サービスを提供する大手通信事業者です。
AT&Tは、米国の1億を超える世帯や個人と約250万の企業に通信サービスを提供していると説明しています(出典:AT&T・T-Mobile・Verizon「AT&T, T-Mobile, and Verizon Plan to Launch New Joint Venture that Helps End Dead Zones」)。
T-Mobileは5Gの携帯電話網を運営しています。
Verizonは、携帯電話のプランに加えて、インターネット回線(ブロードバンド)や法人向けのサービスを手がけています(出典:Verizon「Our company」)。

今回のテーマは「D2D(Direct-to-Device)」と呼ばれる通信です。
衛星電話のような専用端末を使わずに、ふだん使っているスマホが宇宙の衛星と直接電波をやりとりします。
地上の基地局から電波が届かない山奥や海の上など、いわゆる「圏外」になる場所を減らす手段として注目されています。

カギになるのが周波数です。
電波は周波数ごとに国から免許を受けて使うもので、使える幅には限りがあります。
3社は、各社が持つ全国で使える免許の周波数を持ち寄り、衛星経由の音声とデータの通信に使うとしています(出典:The Desk「AT&T, T-Mobile, Verizon form joint venture to close wireless dead spots」)。

3社はこれまで、別々の衛星会社と組んできました。
T-MobileはSpaceXと組んでいます。
AT&Tは、AST SpaceMobileの衛星を使ったサービスを提供する予定です。
Verizonは、一部のAndroidスマホ向けにSkyloの衛星サービスを提供していて、AST SpaceMobileとも商用契約を結んでいます。

AST SpaceMobileは米国テキサス州ミッドランドに本社を置き、ふつうのスマホから直接つながる4G・5Gの携帯ブロードバンド網を宇宙に築こうとしている会社です(出典:AST SpaceMobile「Company」)。
Skyloは、提携する衛星事業者の回線を各国の携帯電話網に組み込み、端末が衛星につながるようにするサービスを提供しています(出典:Skylo「Company」)。

何が発表されたか

3社は、5月の「基本合意」から一歩進め、合弁事業契約を正式に結びました。
基本合意は、詳しい契約を結ぶ前に方向性を確認しておく取り決めです。
5月の時点では、正式な契約の交渉と通常の手続き(クロージング条件)が残っているとしていました。

経営体制も示されました。
暫定CEOのポール・ロス氏は、米国の通信会社であるAT&T、Cingular Wireless、Ameritechで幹部を務めた経歴を持ちます(出典:Telecompaper「AT&T, T-Mobile and Verizon name Paul Roth to lead rural joint venture」)。
合弁会社は、3社それぞれの代表者が入る取締役会が運営します。

合弁会社の最初の取り組みは、衛星からスマホへ直接つなぐ通信を使いやすくすることです。
衛星を使った携帯通信の共通の技術仕様を作り、特定の技術に縛られない形で複数の衛星事業者が競えるようにするとしています。
地方の携帯電話事業者も合弁会社と組めるようにし、災害などで地上の通信網が止まったときの予備の通信手段にもするとしています。

この合弁会社は独占的なものではありません。
3社が衛星会社と結んでいる既存の契約は続き、各社が独自に進める取り組みもそのまま続けられます。
合弁会社の正式な社名はまだ決まっておらず、利用者向けのサービスがいつ始まるかも示されていません(出典:Android Authority「AT&T, T-Mobile, and Verizon are officially teaming up to kill dead zones」)。

宇宙業界にとっての意味

衛星事業者から見ると、米国の大手3社がまとまった買い手として登場することになります。
5月の発表で3社は、この合弁会社を、衛星事業者がより多くの利用者に届くための統一された窓口と位置づけていました。

3社の経営者は、複数の衛星会社から選べる形を重視しています。
Via Satelliteによると、AT&Tのジョン・スタンキーCEOは5月、特定の1社にサービスが偏らないようにして価格を抑えると述べていました。
T-Mobileのスリニ・ゴパランCEOは投資家に対し、将来は衛星サービスの大部分を合弁会社を通じて調達すると見込んでいると説明しています。
この見通しのとおりになれば、米国の大手通信会社と取引したい衛星事業者にとって、合弁会社が最も重要な交渉相手になります。

SpaceXは、T-Mobileの提携先であると同時に、次世代サービス「Starlink Mobile」で3社と競争する構えも見せています。
衛星事業者が通信会社の「提携先」なのか「競争相手」なのかという関係は、まだ固まっていない段階です。

今後の注目点

次の節目は、正式なCEOの決定と、合弁会社の社名の発表です。
あわせて、どの周波数をどれだけ持ち寄るのか、どの衛星事業者が参加するのか、共通の技術仕様がいつまとまるのかが具体的になるかを確認する必要があります。

既存の個別契約が続くなかで、ゴパランCEOが見込むように衛星サービスの調達が合弁会社に集まっていくのかも注目点です。
利用者がいつから使えるようになるかは、今後の発表を待つ段階です。

出典

ほしまる
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