2026年9月18日、小型の地球観測衛星を運用するアクセルスペースと、道路や河川などのインフラの計画・設計を手がけるパシフィックコンサルタンツが、業務提携の覚書(MOU)を結びました。
宇宙から撮った画像を、災害時に被害の広がりをつかむことや、老朽化するインフラの見守りに使うサービスを一緒につくる計画です。
今回結んだのは協力の方向性を確認する覚書で、具体的なサービスの内容はこれから企画・実証していく段階です。
3行で分かるポイント
- 衛星を運用する会社と、インフラの計画・設計を担う会社が、協力の方向性を確認する覚書を結んだ
- 狙いは、宇宙から撮った画像を防災やインフラの維持管理に使うサービスをつくること
- 新しいサービスの企画・実証や、発注者への共同提案はこれから進める段階
まず押さえたい背景
株式会社アクセルスペースは、東京都中央区日本橋に本社を置き、2026年8月に設立された宇宙ベンチャーです(出典:アクセルスペース「会社概要」)。
100kg級の小型地球観測衛星「GRUS(グルース)」を複数機運用し、撮影したデータを「AxelGlobe(アクセルグローブ)」という事業で提供しています(出典:アクセルスペース/PR TIMES「業務提携覚書(MOU)を締結」)。
2026年7月7日には次世代機「GRUS-3」7機が打ち上げられ、同月にそのうち2機が撮影した最初の画像が公開されました(出典:Axelspace「Axelspace Released First Images Captured by GRUS-3 Earth Observation Microsatellites」)。
GRUSは光学衛星です。
光学衛星は、地上から届く太陽の光を宇宙から撮る衛星で、大きなデジタルカメラを軌道に載せたものと考えると分かりやすいです。
何機もの衛星を連携させて運用する仕組みはコンステレーションと呼ばれ、同じ場所を短い間隔で繰り返し撮れるようになります。
パシフィックコンサルタンツ株式会社は東京都千代田区に本社を置く建設コンサルタントで、道路・交通・防災・環境・都市計画などの事業を手がけています。
建設コンサルタントは、国や自治体などから依頼を受けて、インフラやまちづくりの計画・設計・運用を担う仕事です(出典:パシフィックコンサルタンツ「衛星データ利活用による社会インフラ課題の解決に向けた業務提携のお知らせ」)。
同社は1951年の創立以来、道路・河川・港湾・都市計画などのインフラ整備に携わってきたと説明しています。
何が発表されたか
両社は2026年9月18日、衛星データを使って社会インフラ分野の課題を解決することを目的に、業務提携に関する覚書(MOU)を締結したと発表しました。
覚書は、正式な契約を結ぶ前に、協力の方向性や分担を確認するための取り決めです。
両社が挙げた取り組みは次の4つです。
- 国内外で、衛星データを使った新しい技術・サービスを企画・研究・開発する
- 防災・インフラマネジメントなどの社会課題の解決に向けて、実証と社会実装を進める
- 衛星データの活用につながる案件形成・提案活動・広報・営業で連携する
- パシフィックコンサルタンツの事業で、アクセルスペースの衛星技術・サービスを活用する
案件形成は、発注者と話し合いながら仕事の中身を具体的な事業の形にまとめていく作業です。
社会実装は、試験で終わらせずに実際の現場で使われる状態にすることを指します。
具体的な用途としては、災害時に被害状況を早く把握すること、広い範囲を監視すること、インフラの劣化や変形を継続して観測・管理することが挙げられています。
パシフィックコンサルタンツ技術開発室長の佐々木信和氏は、衛星データを使って社会課題への対応や意思決定のあり方を変える新しいサービスとして事業化することを目標に挙げました。
アクセルスペース取締役の折原大吾氏は、これまで衛星技術が十分に活用されてこなかった社会課題に、新しいアプローチを生み出せると述べています。
宇宙業界にとっての意味
両社は提携の背景として、次の事情を挙げています。
人口減少と高齢化でインフラの維持管理を担う人材の確保が難しくなっていること、気候変動に伴って自然災害が激しく頻繁になっていること、老朽化するインフラへの対応が必要なことです。
そのうえで、広い範囲を定期的に、現地に行かずに観測できる衛星データを、防災やインフラ管理に使うニーズが高まっているとしています。
衛星を運用する会社にとっては、撮った画像を実際の業務で使ってもらうことが事業の成り立ちに直結します。
一方で、インフラの管理や防災の現場で何が求められているかは、その分野で仕事をしてきた側がよく知っています。
今回の提携は、衛星データを提供する側と、インフラ分野の業務を担う側が組み、国内外の顧客や発注機関に共同で提案していく形をとっています。
今後の注目点
覚書は協力の出発点で、どの課題にどのサービスで取り組むか、実証をいつどこで行うかはこれから具体化される段階です。
注目したいのは、防災やインフラ管理のどの用途で最初の実証が始まるか、発注機関への共同提案が実際の案件につながるか、そして覚書が正式な契約や事業化へ進むかです。
アクセルスペースは2026年7月にGRUS-3の7機を打ち上げたばかりで、新しい衛星のデータがこの提携でどう使われるかも見どころになります。
出典
- アクセルスペース(PR TIMES)「アクセルスペースとパシフィックコンサルタンツ、衛星データ活用による社会インフラ課題の解決に向けた業務提携覚書(MOU)を締結」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000078.000066150.html
- パシフィックコンサルタンツ「パシフィックコンサルタンツとアクセルスペース、衛星データ利活用による社会インフラ課題の解決に向けた業務提携のお知らせ」 https://www.pacific.co.jp/news/2026/20260918-002806.html
- アクセルスペース「会社概要(Company)」 https://www.axelspace.com/ja/company/
- Axelspace「Axelspace Released First Images Captured by GRUS-3 Earth Observation Microsatellites」 https://www.axelspace.com/news/grus-3_firstimages/
- 財経新聞(プレスリリース転載)「アクセルスペースとパシフィックコンサルタンツ、衛星データ活用による社会インフラ課題の解決に向けた業務提携」 https://www.zaikei.co.jp/releases/3624560/
- 財経新聞(プレスリリース転載)「パシフィックコンサルタンツとアクセルスペース、衛星データ利活用による社会インフラ課題の解決に向けた業務提携」 https://www.zaikei.co.jp/releases/3624572/