欧州宇宙機関(ESA)とインド宇宙研究機関(ISRO)が、2002年1月に発効した協力協定を5年間延長する書簡の交換に署名しました。
署名は2026年9月10日にパリで行われ、協定は2032年1月8日まで有効になります。
今回の更新では、従来の地球観測や衛星測位などに加えて、宇宙天気と人とロボットによる探査が協力の対象に加わり、宇宙活動の持続可能性の重要性が認識されました。
ESAが9月21日に発表しています。
3行で分かるポイント
- ESAとインドのISROが、2002年から続く協力協定を2032年1月8日まで5年延長する文書に署名しました
- 協力の対象に、太陽活動による障害への対応(宇宙天気)と人とロボットによる探査が加わり、宇宙活動の持続可能性の重要性が認識されました
- 署名の場は、2026年9月10日にパリで開かれた国際宇宙サミットでした
まず押さえたい背景
ESAは、ヨーロッパ各国が共同で宇宙開発を進めるための機関です。
1975年に設立され、本部はフランスのパリにあります。
加盟国は23か国で、平和目的に限って宇宙の研究と技術開発で協力することを設立の目的に掲げています。
ISROは、インド政府の宇宙省(Department of Space)のもとで活動するインドの宇宙機関で、本部はインド南部のベンガルールにあります。
PSLV、GSLV、LVM3、SSLVといった自国のロケットを開発・運用し、月探査機のチャンドラヤーン、太陽を観測するアディティアL1、有人宇宙飛行計画のガガンヤーンなどを手がけています。
今回延長されたのは、協力協定(Cooperative Agreement)と呼ばれる枠組みの文書です。
枠組みの文書は、どの分野で協力し、どのように進めるかをあらかじめ定めておくもので、個別の事業はその下で具体化されます。
ESAとISROの協力協定は2002年1月に発効し、20年以上にわたって両者の協力の土台になってきました。
今回とられた「書簡の交換」は、両者が文書を取り交わすことで合意を成立させる方式です。
何が発表されたか
署名が行われたのは、2026年9月10日のパリです。
この日程で開かれていた国際宇宙サミットは、フランス大統領のエマニュエル・マクロン氏の招待を受け、9日と10日の2日間パリで行われた会議です。
書簡の交換により、協力協定は2032年1月8日まで5年間延長されます。
対象となる分野には、地球観測、衛星測位、宇宙科学、ミッション運用の支援に加えて、宇宙天気と人とロボットによる探査が含まれ、宇宙活動の持続可能性の重要性も認識されました。
宇宙天気は、太陽の活動によって地球周辺の電磁的な環境が乱れる現象を指し、衛星の不具合や通信・測位の障害につながります。
宇宙活動の持続可能性は、増え続ける人工の物体やデブリのなかで宇宙を使い続けられるようにするための取り組みです。
ESA長官のヨゼフ・アッシュバッハー氏は、宇宙での活動が広がるなかで国際協力は欠かせないとしたうえで、今回の更新によって両機関はより大きな目標をともに追える位置に立つと述べています。
ISROのV・ナラヤナン会長は、ISROとESAの協力はインドと欧州の双方に具体的な成果をもたらし、国際協力の価値を示してきたと述べています。
宇宙業界にとっての意味
この協定の下で、両機関はすでに実務を積み重ねてきました。
2021年7月には、選ばれた将来のミッションについて、航法・運用・データ処理の支援を互いに提供する取り決めを結んでいます。
ESA側はドイツのダルムシュタットにある欧州宇宙運用センター(ESOC)が管理する深宇宙局の網で追跡を担い、その代わりに将来のESAのミッションはISROの追跡局から同様の支援を受けます。
深宇宙局は、遠く離れた探査機と電波をやり取りする大型アンテナの施設です。
打ち上げ直後や着陸のようなやり直しのきかない場面では、交信できる局が確保できているかどうかが運用の余裕を左右します。
ESAは、この相互支援が役立ちうるミッションとして、ガガンヤーン、月探査機のチャンドラヤーン3号、アディティアL1を挙げていました。
有人探査では、2025年5月にニューデリーで開かれた宇宙探査の国際会議GLEXで、両機関が共同の意向表明に署名しています。
そこでは、地球低軌道で互いの宇宙船が協力できるようにするためのランデブー・ドッキング装置の相互運用性、宇宙飛行士の訓練、地上で宇宙ミッションの一部を模擬するアナログミッション、放物線飛行を使った実験が挙げられました。
今回の更新は、こうした領域を協定そのものの対象に組み入れるものです。
今後の注目点
ESAは、2026年12月にローマで中間閣僚級会合を開き、2028年に次の閣僚級理事会を予定しています。
ESAは、これらの会合が欧州の宇宙戦略を長期にわたって方向づける場になるとしています。
インド側では、2025年5月の意向表明のなかで、インドが構想する宇宙ステーション「バーラティーヤ・アンタリクシュ・ステーション(BAS)」への協力や、ESAの宇宙飛行士の飛行機会、月ミッションでの協働が、将来の可能性として示されています。
協定が定めるのは協力する分野であり、個々の事業の中身や時期は、今後の個別の取り決めで決まる段階です。
ほしまるぼくが土星のあたりにいたころは、地球側でアンテナが一基空いているかどうかで、その日に送れる記録の量が決まったんだよ。
出典
- ESA「ESA and ISRO extend and broaden cooperation agreement」
- ESA「What is ESA?」
- ISRO 公式サイト
- India Science, Technology & Innovation ポータル(インド政府)「Department of Space and ISRO HQ, Bangaluru」
- ESA「European Space Agency announces new cooperation with Indian Space Research Organisation」
- ESA「ESA and Indian space agency ISRO agree on future cooperation」
- ESA「Europe’s space future in focus at the International Space Summit」