EutelsatがOneWeb衛星229機とIRIS²衛星を発注

フランスの衛星通信会社Eutelsatは2026年9月10日、パリで開かれた国際宇宙サミットに合わせ、通信衛星の大型発注を相次いで公表しました。

ひとつは、同社が運用する通信衛星群「OneWeb」を維持するための衛星229機で、Airbus Defence and Spaceに追加発注します。
もうひとつは、欧州連合(EU)が整備する通信衛星網「IRIS²」向けで、ベルギーのAerospacelab、Airbus、Thales Alenia Spaceの3社との契約が同じ日に動きました。

3行で分かるポイント

  • OneWebの更新用にAirbus Defence and Spaceへ229機を追加発注し、更新分の合計は669機、投資額は約10億ユーロの見込みです。
  • EUの通信衛星網IRIS²では、衛星の本体264機をAerospacelabが24億ユーロで、66機以上をAirbusが引き受けます。
  • 330機ぶんの通信装置はThales Alenia Spaceがまとめて手がけ、初期分の契約額は約5億ユーロです。
目次

まず押さえたい背景

Eutelsatは、パリに本社を置く衛星通信会社です。
静止軌道の衛星31機と、低軌道を回るOneWebの衛星600機以上を組み合わせ、50を超える国でテレビ放送や通信のサービスを提供しています(出典: Eutelsat「Group」)。

低軌道は地表から数百kmから千数百kmほどの高さで、衛星は地球を短時間で一周します。
1機が同じ場所の上空にとどまれないため、多数の衛星を連携させて順番に受け持つ「コンステレーション」という方式をとります。
OneWebはその代表例です。

Airbus Defence and Spaceは、欧州の航空宇宙大手Airbusの宇宙・防衛部門です。
地球観測衛星のSentinel-2やMetOp、通信衛星や測位衛星のほか、月へ向かう宇宙船Orionの欧州補給モジュールや木星探査機JUICEも手がけています(出典: Airbus「Space」)。

IRIS²は、EUが自前で持つ安全な通信網として整備する衛星システムです。
低軌道と中軌道を合わせて348機を配置する計画で、欧州委員会が所管します。
運営は、SES・Eutelsat・Hispasatの3社でつくる企業連合SpaceRISEが12年間の事業契約で担い、政府向けサービスの開始は2030年が目標です(出典: 欧州委員会「IRIS² secure connectivity」「IRIS² – the European Commission awards the concession contract to SpaceRISE consortium」)。

何が発表されたか

OneWebについて、EutelsatはAirbus Defence and Spaceと「作業開始承認(ATP)」を結びました。
これは正式契約に先立ち、製造の初期作業を始めてよいと発注側が認める取り決めです。
対象は229機で、すでに発注済みの440機と合わせて669機になります。
Eutelsatはこの追加分の投資額を約10億ユーロと見込み、2034年までの配備を計画しています(出典: Eutelsat「Eutelsat procures a further OneWeb 229 LEO satellites from Airbus」)。

新しい衛星には、受信した電波を機上でデジタル処理して必要な場所へ振り分けるデジタルチャネライザーを積みます。
本来の通信任務とは別の機器を相乗りさせる、ホステッドペイロードにも対応します。
製造はフランス・トゥールーズにあるAirbusの量産工場が担います。

IRIS²では、低軌道部分の分担が固まりました。
Airbusは第1層にあたる66機以上を担当し、2029年の引き渡しを目指します。
使う電波は軍用のKa帯という周波数帯で、欧州の政府利用者向けの通信を担います(出典: Airbus「Airbus starts the development of IRIS² satellites on behalf of Eutelsat」)。

残る264機の衛星本体は、2018年設立のAerospacelabが24億ユーロで引き受けます。
Eutelsatが低軌道部分の取りまとめ役として進めた競争的対話を経て選ばれました(出典: Aerospacelab「Aerospacelab Awarded €2.4 Billion Landmark Contract to Build 264 LEO Satellites for IRIS²」)。

通信装置は3社目のThales Alenia Spaceが担います。
同社はThalesが67%、イタリアのLeonardoが33%を出資する合弁会社で、2025年の売上高は23億6,000万ユーロ、7か国の14拠点で8,000人以上が働いています。
EutelsatとのあいだでLetter of Agreement(基本合意書)を交わし、330機すべてに載せる政府向けのデジタル通信装置を設計・製造します。

初期分の契約額は約5億ユーロで、IRIS²全体での受注規模は30億ユーロを超える見込みです。
衛星が回る高度は1,200kmです(出典: Thales Alenia Space「Thales Alenia Space to provide digital and secure payloads for 330 IRIS2 telecommunications satellites in Low Earth Orbit」)。

宇宙業界にとっての意味

低軌道の通信衛星群は、一度そろえれば終わりという設備ではありません。
Eutelsatは今回の669機を、OneWebのサービスを続けるための更新計画として説明しています。
運用しながら衛星を入れ替えていく事業では、まとまった数を続けて作れる製造側の体制が欠かせません。

今回決まった発注先は、その体制を用意した企業が並びます。
Airbusはトゥールーズの量産工場を欧州に戻し、そこでOneWebの新しい機体を作っています。
Aerospacelabはベルギーのモン=サン=ギベールに本社を置き、衛星の本体から搭載機器までを自社で作る会社で、年間500機の生産をうたう「メガファクトリー」を整備しています(出典: Aerospacelab「Home」)。
IRIS²の348機のうち264機を1社が担う形になります。

IRIS²は、欧州が自前の通信網を持つための事業です。
今回の低軌道部分で選ばれた3社はいずれも欧州の企業で、衛星の本体と通信装置の両方が域内で作られます。

今後の注目点

OneWebでは、先に発注した440機のうち最初の衛星が次の四半期に引き渡される予定です。
IRIS²は、Airbusが担う第1層の66機以上が2029年、Aerospacelabが担う264機が2030年から打ち上げの予定で、EUの政府向けサービス開始も2030年が目標です。
Eutelsatは、IRIS²でのKu帯による商用サービスの開始を2032年半ばと見込んでいます。

229機は作業開始承認の段階にあり、金額などの条件は今後の正式契約で決まります。
示された納入時期どおりに量産が立ち上がるかが、次の焦点になります。

ほしまる

衛星の本体をつくる会社と、電波をやりとりする装置をつくる会社が別々に決まっているんだ。ぼくのころは1機まるごとの特注だったから、330機ぶんをそろえる話はスケールが違うよ。

出典

ほしまる
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