FireflyがStarcloudと契約し月周回でAI計算を実証へ

米国の宇宙企業Firefly Aerospaceは2026年9月30日、宇宙データセンターを開発するStarcloudと商業ペイロード契約を結んだと発表しました。
Starcloudの計算装置「SC-1L」を、Fireflyの宇宙機「Elytra(エリトラ)」に載せて月の周回軌道へ運びます。

月を回りながらAI計算を行い、処理済みのデータを地球へ送る実証です。
このミッションの打ち上げは、早くて2028年の予定です。

3行で分かるポイント

  • Fireflyが、Starcloudを月周回ミッションの商業顧客として迎える契約を結んだと発表しました。
  • 月を回る宇宙機でカメラの画像をその場でAI処理し、結果を地球へ送れるかを確かめます。
  • 打ち上げは早くて2028年です。宇宙機は月周回軌道に5年間とどまる計画です。
目次

まず押さえたい背景

Firefly Aerospaceは、米国テキサス州リアンダーに本社を置く宇宙・防衛技術の会社です(出典:Firefly Aerospace「About」)。
小型〜中型のロケット「Alpha」、月着陸機「Blue Ghost(ブルーゴースト)」、軌道上で使う宇宙機「Elytra」などを開発しています。
同社は、民間企業として初めて月面着陸に成功したと公表しています。

Starcloudは、米国ワシントン州レドモンドに拠点を置くスタートアップです。
地上ではなく宇宙にデータセンターを置き、AIの計算を行う事業を目指しています(出典:Starcloud 公式サイト)。
データセンターとは、大量のコンピューターを集めて計算やデータ保存を引き受ける施設です。
同社は宇宙に置く利点として、電池を使わずに豊富な太陽エネルギーを得られることと、熱を宇宙空間へ放射して冷やせることを挙げています。

今回の舞台になるElytraは、荷物(ペイロード)の輸送、撮影、長距離通信などを担う多目的の宇宙機です。
地球と月のあいだの空間で使うことを想定しています(出典:Firefly Aerospace「Elytra」)。
ペイロードとは、宇宙機に載せて運ぶ観測装置や実験装置のことです。

もうひとつ関わるのが「Solux(ソラックス)」です。
Soluxは、カメラとAI用の計算機を組み合わせたFireflyの視覚システムで、星や地形の画像から宇宙機の位置や向きを割り出すことなどに使われます(出典:Firefly Aerospace「Solux」)。

何が発表されたか

Fireflyの発表によると、StarcloudのSC-1LはElytraに搭載され、月を回るデータセンターの中核となる機能を検証します(出典:Firefly Aerospace「Firefly Aerospace Signs Starcloud as Commercial Customer, Demonstrating Data Center Capabilities Around the Moon」)。
SC-1Lは、Elytraに載ったSoluxからデータを受け取り、軌道上で高い電力を使うAI計算を行い、処理したデータを素早く地球へ送ります。
撮った画像をまるごと地球へ送ってから解析するのではなく、宇宙でその場で処理してから結果を送る仕組みです。

Starcloudが加わるのは、Fireflyにとって3回目となる月ミッションです。
打ち上げは早くて2028年の予定です。
このミッションで、Elytraはまず月着陸機Blue Ghostを月まで運び、通信を中継します。

Blue Ghostは、月面の「グルイトゥイゼン・ドーム」と呼ばれる地域に着陸し、NASAの商業月面輸送サービス(CLPS)の一環として科学・技術の観測装置を動かします。
CLPSは、NASAが米国企業と組み、科学・探査・技術のペイロードを月面や月周回軌道へ届ける取り組みです(出典:NASA「Commercial Lunar Payload Services」)。

着陸機のミッションが終わったあとも、Elytraは月周回軌道に5年間とどまります。
その間に、Starcloudの実証を含む顧客のペイロード運用や撮影を行います。

発表の中で、Starcloud共同創業者で最高技術責任者(CTO)のEzra Feilden氏は、企業向けのGPUでAIモデルを動かし、学習させることに地球低軌道で成功したと述べています。
GPUは、画像処理やAIの計算を大量に並列でこなすのが得意な半導体です。
Feilden氏は、この技術を月周回軌道へ持っていくと説明しています。
契約金額は、発表には示されていません。

宇宙業界にとっての意味

今回の契約は、宇宙機が「運ぶ・撮る・中継する」に加えて、「その場で計算する」サービスを月周回で商業的に試す事例です。
FireflyでVP of Spacecraft(宇宙機部門の責任者)を務めるRay Allensworth氏は、月でのデータ取得・処理・送信を実証し、将来の月面活動が頼る計算基盤の土台を築くと述べています。
Feilden氏も、データが生まれた場所で大量のデータを処理できることを示すと述べています。

Fireflyは同じ発表で、自社の月撮影サービス「Ocula(オキュラ)」のデータをElytra上で処理するため、NVIDIAと協力することにも触れています。
NVIDIAの小型計算モジュール「Jetson」と、子会社SciTecを通じたFireflyのAIソフトウェアを使う計画です。
月周回の宇宙機に計算機能を持たせる取り組みを、Fireflyは自社サービスと外部顧客の両方で進めていることになります。

一方で、今回はあくまで実証の契約です。
月を回るデータセンターが事業として成り立つかどうかは、この実証の結果を見なければ判断できません。

今後の注目点

最初の節目は、Fireflyの3回目の月ミッションの打ち上げです。
予定は早くて2028年です。
まずBlue Ghostがグルイトゥイゼン・ドームへ着陸し、そのあとにElytraの5年間の月周回運用が始まります。

実証が始まってからは、SC-1LがSoluxのデータを軌道上でどこまで処理できるか、処理結果をどれだけ素早く地球へ届けられるかが焦点になります。
Starcloudが地球低軌道で積み上げてきた実績を、月の周回軌道でも再現できるかも注目されます。

出典

ほしまる
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