LatConnect 60がインドのNSILと衛星の運用支援で合意

オーストラリアの地球観測衛星企業LatConnect 60(LC60)が、2026年9月7日、インドのベンガルールで開かれた宇宙産業の展示会「Bengaluru Space Expo 2026」でふたつの提携を発表しました。
ひとつは、インド政府が所有する企業NewSpace India Limited(NSIL)と結んだもので、2027年に打ち上げる衛星2機を地上から支える体制に関するものです。
もうひとつは、インドの地理空間情報企業GeoSyze EO Solutions LLPとの提携で、観測データをインドの防衛分野へ届ける経路をつくります。

3行で分かるポイント

  • LC60は、2027年に打ち上げる衛星2機の管制と通信をNSILの地上設備に任せる合意を結びました
  • 対象はSWIRSAT-1(2027年第1四半期に打ち上げ予定)とSWIRSAT-2(同年第2四半期)の2機です
  • GeoSyzeとの提携により、観測データや分析をインドの防衛分野の顧客へ届ける窓口を確保しました
目次

まず押さえたい背景

LC60は、西オーストラリア州パースに本社を置く地球観測企業です。
SWIRSATと名付けた衛星群を開発しており、オーストラリア宇宙庁と西オーストラリア州政府の支援を受けています。
2029年までに18機の衛星群を、2035年までに100機を超える規模をめざす計画を掲げています。

社名にあるSWIRは短波赤外のことで、人の目に見える赤い光よりも波長の長い赤外線のうち、比較的波長が短い領域を指します。
NASAの地球観測衛星ランドサットは、1.55〜1.75µmと2.08〜2.35µmという2つの短波赤外の帯域を観測に使っています。
この波長では、葉に含まれる水分の量の違いから植物を見分けたり、粘土鉱物を他の鉱物と区別して鉱物資源の探査や土壌の分類に役立てたりできます。
可視光に比べて大気による散乱の影響を受けにくいため、山火事のように煙が出ている場面でも地表の様子をとらえやすいという特徴もあります(出典: NASA「Spectral Bands and Applications」)。

相手方のNSILは、インド政府が全額を出資し、宇宙省の下に置かれている企業です。
インド宇宙研究機関(ISRO)の商業部門にあたり、ベンガルールに本社を構えています。
ロケットPSLVやSSLVの製造、打ち上げサービス、衛星や地上設備の製造、通信・観測サービスの提供を手がけており、PSLVによってこれまでに33カ国297機の顧客衛星を打ち上げたと公表しています(出典: NewSpace India Limited 公式サイト)。

GeoSyzeはインドに本社を置き、カナダにも拠点を持つ地理空間情報の企業です。
衛星画像やリモートセンシングのデータを集めて処理・解析し、コンサルティングやデータ供給、一括請負の案件、研修として提供しています。
防衛・情報、海洋、災害対応、林業、エネルギー、都市計画、農業、インフラなどの分野を対象としています(出典: GeoSyze「About Us」)。

何が発表されたか

発表の場となったBengaluru Space Expo 2026は、2026年9月7日から9日までベンガルール近郊の展示場で開かれた国際展示会です。
インドの産業団体Confederation of Indian Industryが、ISRO、IN-SPACe、NSILと組んで開催しました(出典: Bengaluru Space Expo 2026 公式サイト)。

NSILとの合意は、SWIRSAT-1とSWIRSAT-2の2機に対して、テレメトリー・トラッキング・コマンド(TT&C)と呼ばれるサービスを提供する内容です(出典: SpaceNews「LatConnect 60 Expands India Market Presence for SWIRSAT With NSIL Agreement and GeoSyze Partnership」。以下、両提携に関する事実は同発表によります)。
TT&Cは、衛星の温度や電力の状態を示すデータを地上で受け取り、衛星が今どこを飛んでいるかを追跡し、地上から動作の指示を送る、という一連の作業をまとめた呼び方です。
衛星が地球を回り続けているあいだ、この3つを絶やさずに続けなければ運用は成り立ちません。

合わせて、NSILが持つ地上局の設備をLC60が使えるようになります。
地上局は、大きなアンテナで衛星と電波をやり取りする施設で、今回は運用の支援と、衛星が撮影したデータを地上へ降ろす経路の両方に使われます。
2機の打ち上げ時期は、SWIRSAT-1が2027年第1四半期、SWIRSAT-2が同年第2四半期の予定です。

GeoSyzeとの提携では、同社が戦略コンサルタント兼チャネルパートナーという立場に就きます。
チャネルパートナーは、その国の顧客に向けて相手企業の製品やサービスを代わりに届ける役割の提携先です。

GeoSyzeは、LC60の地球観測データや今後のSWIR製品、分析サービスをインドの防衛市場へ届ける道筋を探り、実際の提供を後押しします。
NSILとの署名には、オーストラリア宇宙庁や、西オーストラリア州政府のインド投資通商事務所などが立ち会いました。

宇宙業界にとっての意味

地球観測衛星の多くは低い軌道を高速で周回するため、ひとつの地上局と電波をやり取りできる時間は、その上空を通過するあいだに限られます。
撮影したデータを早く届けたい事業では、地上局が世界の複数の場所にあるほど有利になります。
一方で、自前でアンテナ網を各地に整えるには土地・設備・現地の許認可が必要で、衛星の開発と並行して進めるのは負担が大きい部分です。

今回LC60が選んだのは、すでに設備と運用の経験を持つ相手からサービスとして買う形でした。

インドは、ロケットと地上設備の双方を国として持ち、NSILがその商業窓口を担っています。
海外の小規模な衛星事業者にとって、インドは打ち上げの依頼先としてだけでなく、運用の基盤の調達先としても選択肢になりうる、という形が今回の合意に表れています。

ふたつの提携は性格が異なります。
NSILとの合意は衛星を動かすための基盤で、GeoSyzeとの提携はデータの届け先を確保するものです。
衛星を軌道に上げるだけでは事業にならず、買い手のいる市場につなぐ経路が要ります。

今後の注目点

まず2027年第1四半期のSWIRSAT-1の打ち上げが、最初の節目になります。
実際に軌道上でTT&Cと地上へのデータ伝送が計画どおり動くかどうかが、この合意の実質的な検証になります。

GeoSyzeとの提携は、現時点では既存の地球観測データに加えて「今後のSWIR製品」を対象に含む段階です。
インドの防衛分野の顧客に何がどの形で提供されるかは、衛星が軌道に入って観測を始めたあとに具体化していきます。
さらに、2029年に18機という構成に向けて、量産と資金調達がどう進むかも合わせて見ていく点です。

ほしまる

同じ山を撮っても、人の目に映る光と、それより少し波長の長い光では写るものが変わるんだ。どちらが優れているということではなくて、見えるものが別なんだよ。

出典

ほしまる
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