NASAが月面基地向け5G通信網の開発で約3,800万ドルの契約を締結

NASAは2026年9月30日(米国時間)、月面で使う5G通信システムの主要部分の開発を、Modulate Space Corporationに発注したと発表しました。
このシステムにはWi-Fi 6も組み込みます。
契約額は約3,800万ドルで、将来の月面基地での活動を支える通信の仕組みをつくることが目的です。
地上での試験から月面での実証までを、2028年末までの期間で進めます。

3行で分かるポイント

  • NASAが、月面で使うスマートフォン系の通信網の開発を約3,800万ドルで民間企業に発注した
  • 地上の携帯電話や無線LANと同じ共通規格を月に持ち込み、将来の月面基地での活動を支える狙い
  • 地上の実験室で試したあと、2028年末までに月面での実証まで進める計画
目次

まず押さえたい背景

発注元はNASAのグレン研究センターです。
NASAの研究拠点のひとつで、本拠地はアメリカ・オハイオ州クリーブランドの空港近くにあります(出典:NASA「Glenn Research Center」)。
NASAはこのセンターの強みとして電力・推進・通信の技術を挙げ、月探査計画「アルテミス計画」を進めるうえで欠かせない拠点と位置づけています。
受注したModulate Space Corporationは、NASAからこの月面通信システムの開発を請け負った民間企業です。

5Gは、スマートフォンで使われている第5世代の移動通信の規格です。
Wi-Fi 6は、家庭やオフィスの無線LANで使われている規格の世代のひとつです。
どちらも国際的に決められた共通の規格なので、対応する機器どうしならメーカーが違ってもつながります。
今回の契約名にある「電波伝搬測定」は、電波が送信地点から受信地点までどのように届くかを実際に測ることです。
地形や障害物の配置が地球と違う月面で電波の届き方を確かめることは、通信網を設計するうえでの基礎データになります。

何が発表されたか

契約の正式名称は「5G System and Lunar Surface Communications Evaluation and Radio Propagation Measurements」です(出典:NASA「NASA Awards Contract to Develop 5G Communications for Moon」)。
契約の形式は固定価格契約で、契約額は約3,800万ドルです。
固定価格契約は、あらかじめ決めた金額で仕事を請け負う方式です。

NASAはこの取り組みを、前倒しで進める計画と位置づけています。
作業は次の2つに分かれます。

  • 「5G Network-in-a-Box」の開発と実験室での実証(2026年10月1日〜2028年1月31日)
  • 月面での5GとWi-Fiの統合ネットワーク構築と、月面での飛行実証(2026年11月30日〜2028年12月31日)

Network-in-a-Boxは、通信網をつくるのに必要な機能をひとつの装置にまとめたものです。
地上の携帯電話網のように大きな設備を各地に置かなくても、装置を運び込めばその場で通信網を立ち上げられます。
NASAはこれらの実証を通じて、統合した月面通信システムに必要なハードウェア、ファームウェア(機器を動かす組み込みのソフトウェア)、ソフトウェアの技術開発を調達するとしています。
目指すのは、規模を広げられる、共通規格に基づいた通信能力です。

宇宙業界にとっての意味

NASAは今回の成果について、システムの構成と運用時の性能を把握でき、将来の月面通信に合わせて技術を発展させる柔軟性も得られると説明しています。
月面基地では、人や機械が離れた場所で同時に活動することになります。
そのときに必要になるのが、月面の機器どうしをつなぐ通信網です。

地上で広く使われている5GやWi-Fi 6を土台にすると、宇宙専用の通信方式を一から設計しなくて済みます。
共通規格に対応した機器であれば、同じ通信網につなげられます。
今回の契約は、この方針で月面通信をつくる計画が、地上の実験室での試験から月面での実証まで日程つきで動き出したことを示しています。
月面の通信を民間企業が開発して提供する流れが、契約として具体的な形になった点でも、業界にとって節目といえます。

今後の注目点

最初の節目は、2028年1月末までの期間で行う実験室での実証です。
装置が性能目標を満たせるかが、月面での実証へ進むための前提になります。
その後、2028年12月末までの期間で、月面での統合ネットワークの構築と実証が予定されています。

確認したいのは、どの着陸機で装置を月へ運ぶのか、月面でどの程度の距離と通信速度を実現できるのか、という点です。
電波伝搬測定の結果が、今後の月面基地の通信設計にどう生かされるのかも注目点です。

出典

ほしまる
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