アメリカ国防総省の組織である国防イノベーションユニット(DIU)が、宇宙やミサイルの脅威を把握し、先読みするためのAIソフトウェアの提案を企業から募集しています。
公募の名称は「Space Threat Intelligence Synthesis Engine(宇宙脅威情報統合エンジン)」で、提案の締め切りは2026年9月24日です。
応募できるのはアメリカ国内の企業だけではなく、海外の企業も対象になっています。
3行で分かるポイント
- レーダーや衛星画像などばらばらに届く情報をひとつにまとめ、宇宙やミサイルの脅威を先読みするソフトウェアを、米国防総省の一部門が企業から募集している
- データが届いてから画面に表示されるまで5秒以内、できれば2秒以内という速さが条件に入っている
- 海外企業も応募できるが、会社として機密情報を扱う資格と、最高区分の機密を扱える人員が必要になる
まず押さえたい背景
国防イノベーションユニット(DIU)は、アメリカ国防総省の直轄組織です。
2015年8月に、当時の国防長官アシュ・カーターが「DIUx」という名称で設立しました(出典: DIU「About」)。
設立の背景には、商業分野の技術が防衛分野の研究開発より速く進んでいるのに、軍の調達手続きには時間がかかるという問題意識があります。
DIUの役割は、軍の部隊が抱える運用上の課題を持ち込み、民間企業の技術でそれを解決することです。
拠点はシリコンバレーに置かれています(出典: Via Satellite「DIU Wants AI System to Understand and Predict Space Threats」)。
そのために使われるのが、通常の政府調達とは別枠の契約制度です。
「その他の取引(Other Transaction)」と呼ばれる権限を使うと、試作品の開発を通常より短い期間で発注できます。
DIUはこの権限と、公開型の公募を組み合わせることで、防衛産業での実績がない企業でも参加しやすくしています。
今回の公募が扱うのは、宇宙とミサイルの脅威に関する情報です。
公募文書は、脅威の情報が多くの情報源に分散しているため、既存のツールでは、接近して並んだ物体を見分けること、新しく現れた脅威を追跡すること、脅威の想定を最新の状態に保つことが難しいと説明しています。
センサーから見て近い方向に複数の物体があると、それらは区別しにくくなります。
何が発表されたか
DIUが求めているのは、複数の情報源から届くデータを取り込み、ひとつのまとまった状況として示し続けるソフトウェアです。
取り込む対象として挙げられているのは、リアルタイムの映像、衛星画像、レーダーやセンサーからの信号、地理空間データ、そして機密扱いの情報報告です(出典: DIU「Space Threat Intelligence Synthesis Engine」)。
これらを自動で突き合わせ、隠れたパターンや複雑な関係、脅威の行動の予測を取り出すことが求められています。
性能の条件は具体的です。
データが届いてから表示や検索に反映されるまでの遅れは、5秒以内が最低ラインで、2秒以内が目標とされています。
扱うデータ量は通常で毎分20〜30MB、一時的に集中するときは毎分約5GBまで。
事後の分析のために、複数年分のデータを保存することも条件に入っています。
出力は2種類が求められています。
ひとつは運用者が見て判断できる可視化、もうひとつは指揮統制の自動処理につなぐための、ソフトウェア同士が直接やり取りする窓口(API)です。
警報には確からしさの評価を付け、なぜそう判断したのか、どのデータに基づくのかがたどれる形にすることも挙げられています。
技術としては、AIや機械学習、画像から物体を判別するコンピュータービジョン、情報同士の関係をつないで表す知識グラフなどが想定されています。
応募する企業には、会社として機密情報を扱える資格(施設保全許可)を取得・維持できることと、最高区分の機密とその中の限定された区分を扱える人員を契約期間中および将来の量産契約やFARに基づく後続契約の期間中も割り当てることが条件として示されています。
宇宙業界にとっての意味
注目したいのは、応募できる企業の条件です。
この公募では、米国法第10編4022条にもとづき、3つの条件のうち少なくともひとつを満たすことが求められます。
- 防衛契約の実績が乏しい「非伝統的」な企業が開発に大きく寄与すること
- 参加者がすべて小規模企業であること
- 試作費用の3分の1以上を連邦政府以外の資金でまかなうこと
これは、防衛産業の外側にいるAI企業やソフトウェア企業を意識的に引き込むための枠組みです。
もうひとつは、試作のあとの扱いです。
試作で成果を出した提案は、あらためて競争手続きを経ることなく、量産段階の契約へ進む可能性があると公募文書に記されています。
宇宙やミサイルの監視に使うデータ解析の分野で、商業側のAI技術に発注の入口が開かれている、という形になります。
一方で、機密情報を扱う資格と人員という要件は、海外企業にとって現実的なハードルです。
今後の注目点
提案の締め切りは2026年9月24日で、提出物は5ページ程度の資料か15枚以内のスライドという簡潔な形式です。
契約の規模を示す金額は、この公募文書には記載されていません。
今後の焦点は、どのような企業が選ばれ、試作がどこまで実用的な速さと精度に届くかです。
5秒以内、目標2秒以内という応答の速さと、機密情報を含むデータを安全に扱うという要求を同時に満たせるかどうかが、評価の分かれ目になります。
ほしまる海外の会社にも門が開いているんだけど、機密を扱う資格がいるんだ。応募できることと、実際に手を挙げられることは別なんだよ。