欧州宇宙機関(ESA)は2026年9月22日、加盟国が宇宙探査の強化を打ち出した文書「A call to boost European space exploration(欧州の宇宙探査を後押しする呼びかけ)」を承認したと公表しました。
承認は9月9日、パリで開かれた国際宇宙サミットの場で行われました。
文書は地球低軌道・月・火星という3つの段階で欧州の役割を強める方針を示し、12月15日にローマで開かれる中間閣僚級会合に向けた政治的な指針になります。
3行で分かるポイント
- ESAの加盟国が9月9日、宇宙探査で欧州の役割を強める方針をまとめた文書を承認しました
- 柱は3つで、国際宇宙ステーション後の地球低軌道での活動の確保、月での存在感の強化、その先の火星探査への足がかりづくりです
- ESAは12月15日にローマで開く閣僚級の会合に向けて、各国が検討するための具体的な選択肢を準備しています
まず押さえたい背景
ESAは1975年に設立された、欧州の国々が共同で宇宙の研究・技術・利用に取り組むための機関です。
本部はパリにあり、23か国が加盟しています。
職員は約3,000人で、2025年の予算は76億8,000万ユーロです(出典:ESA「ESA facts」。以下、ESAの組織に関する数値は同ページの表記によります)。
地球や太陽系の観測、衛星を使った技術やサービスの開発、欧州の宇宙産業の支援を担っています。
地球低軌道は、高度が数百kmほどの、地球のすぐ外側を回る領域です。
国際宇宙ステーション(ISS)が飛んでいるのもこの高さで、宇宙飛行士が長期滞在して実験を続けてきました。
そのISSについて、NASAは2030年まで運用し、その後は民間企業が所有・運用する施設へ移る方針を示しています(出典:NASA「FAQs: The International Space Station Transition Plan」)。
ISSという足場が無くなったあと、地球低軌道で何をどう続けるかが、欧州にとっての課題になります。
何が発表されたか
国際宇宙サミットは9月9日から10日にかけてパリで開かれ、各国の首脳や閣僚、産業界の関係者、宇宙飛行士が参加しました。
その初日に、ESAの加盟国が今回の文書を承認しました。
文書は3つの優先事項を掲げています。
ひとつめはISS後の地球低軌道へのアクセスと活動の確保、ふたつめは国際協力と的を絞った自律性を組み合わせて月面と月周回での存在感を高めること、みっつめは地球低軌道と月を火星探査への足がかりとして使うことです。
文書は、欧州が意欲を高めることは国際協力に代わるものではなく、既存の協力関係を補強し新たな協力を結ぶための土台だと位置づけています。
そのうえで、重要な技術を自ら押さえ、戦略的な装備を持ち、意欲的なミッションに取り組むことで、頼りになる欠かせない相手になれると述べています。
フランス大統領府が公開した文面には、欧州23か国が名を連ねています。
この文面は、宇宙飛行士を運ぶ欧州独自の輸送能力を育てることや、商業的に成立しコストに見合うやり方を進めることも掲げています(出典:フランス大統領府「A Call to Boost European Space Exploration.」)。
ESA長官のアッシュバッハー氏は、欧州は地球低軌道でより大きな自律性に向かい、月探査でより大きな役割を担い、より競争力のある宇宙産業をもつ道を歩み始めた、と述べています。
文書に具体的な金額は示されていません。
宇宙業界にとっての意味
欧州はこれまで、他国が主導する計画に重要な装備を提供する形で有人探査に加わってきました。
代表例が、NASAの宇宙船オリオンに組み込まれる欧州サービスモジュールです。
推進用のエンジン、展開すると幅19mになる太陽電池パネル、宇宙飛行士が使う酸素・窒素・水のタンク、温度を保つ放熱器を収めた部分で、オリオンを目的地まで押していく役割を担います(出典:ESA「European Service Module」)。
今回の文書は、このような協力を続けながら、宇宙飛行士の輸送のように欧州が自前で持つ能力を増やす方向を示しました。
商業的に成立する進め方を掲げた点は、欧州の企業がどの範囲をサービスとして担うのかという論点につながります。
ただし、どの計画にどれだけの予算が付くかは決まっておらず、規模はローマの会合を経て具体化する段階です。
今後の注目点
次の節目は、12月15日にローマで開かれる中間閣僚級会合です。
ESAが用意する選択肢の中身と、各国がそれぞれどれだけ拠出するかが焦点になります。
ESAは、加盟国の拠出額に応じて、その国の企業に産業契約を配分する「地理的リターン」の原則で運営されています。
拠出の決まり方は、どの国のどの企業に仕事が回るかに関わります。
月や火星に向けた計画の名前や、国際的な協力相手との役割分担についても、会合でESAが示す選択肢に何が含まれるかを確認することになります。
ほしまる方針が決まったのに、計画の中身はまだ決まっていないの? ぼくは待つのが得意だから、12月の会合で何が出てくるのか見てみるよ。