2026年9月10日、パリで開かれた国際宇宙サミットで、JAXAの山川宏理事長とフランス国立宇宙研究センター(CNES)のフランソワ・ジャック総裁が「戦略的宇宙協力の強化に関する共同声明」に署名しました。
署名には、小野田紀美宇宙政策担当大臣と、フランスのフィリップ・バティスト高等教育・研究・宇宙大臣が立ち会っています。
両機関は日仏協力の重要性について共通認識を確認し、今後の対話や協力を促進していく意向を共有しました。
3行で分かるポイント
- 日本とフランスの宇宙機関のトップが、パリで協力強化の共同声明に署名した
- 声明の中身は、協力の重要性についての共通認識と、今後の対話を進める意向の共有
- 山川理事長はサミットの科学と探査のワークショップにも登壇し、月面での日本とJAXAの取り組みを発信した
まず押さえたい背景
CNESは1961年に設立されたフランスの宇宙機関です。
国の宇宙戦略を立案して実行し、宇宙技術に支えられた公共政策を進める役割を担い、パリ、トゥールーズ、南米のフランス領ギアナにあるクールーに拠点を置いています(出典: CNES「CNES at a glance」)。
扱う領域は防衛、国土管理、農業、医療、通信、自然災害への対応まで広く、衛星やロケットの開発、ミッションの運用も手がけます。
日本とフランスの宇宙機関どうしの関係は長く続いてきました。
1996年11月、宇宙開発事業団(現在のJAXA)とCNESが「宇宙分野における長期協力の準備に係る機関間協定」に署名し、2010年には新たな機関間協定が締結され、2015年10月にはさらにその改定が行われています。
2015年の改定では、将来の共同ミッションの検討、社会に活かす宇宙利用、宇宙環境下での部品の3分野が重点に置かれました(出典: JAXA「フランス国立宇宙研究センター(CNES)との機関間協力協定の改定について」)。
実際の共同作業も積み重なっています。
小惑星リュウグウのサンプル分析では、CNESが赤外分光顕微鏡MicrOmegaを提供しました。
赤外分光顕微鏡は、試料に赤外線を当てて、返ってくる光の波長ごとの強さから、そこにどんな物質が含まれるかを読み取る装置です。
2023年5月には、NASAの探査機OSIRIS-RExが持ち帰った小惑星ベンヌのサンプルについても、同様の研究協力を広げることで合意しています(出典: JAXA宇宙科学研究所「フランス国立宇宙研究センター(CNES)総裁が相模原来訪 ―小惑星サンプル分析の協力を拡大―」)。
何が発表されたか
今回署名されたのは「戦略的宇宙協力の強化に関する共同声明」です。
署名したのはJAXAの山川宏理事長とCNESのフランソワ・ジャック総裁で、日時は2026年9月10日、場所はパリで開かれていた国際宇宙サミットの場でした(出典: JAXA「国際的な取り組みと貢献」。以下、今回の署名に関する記述は同ページによります)。
日仏それぞれの担当大臣が立ち会い、両機関は協力の重要性についての共通認識を確認したうえで、今後の対話や協力を促進していく意向を共有しました。
共同声明は、作業の中身や費用の分担を細かく定める契約書とは別のもので、当事者が同じ方向を向いていることを文書で確認するために交わされます。
具体的な作業は、その後に結ぶ実施取決めのような個別の文書で決まります。
JAXAとCNESは2025年9月30日、月震計ネットワークの研究に関する協力の実施取決めに署名しており、そこには月震計の開発や、日本の月着陸機に搭載できるかどうかの実現可能性の調査といった中身まで書かれています(出典: JAXA宇宙科学研究所「フランス国立宇宙研究センター (CNES) との月震計ネットワーク研究に関する協力の実施取決めの締結」)。
月震計は、月面に置いた地震計で月の揺れをとらえ、揺れの伝わり方から月の内部構造や活動を調べるための装置です。
山川理事長は、サミットの科学と探査のワークショップにも登壇しました。
国際協力や官民連携の重要性と、月面における日本とJAXAの取り組みについて発信しています。
宇宙業界にとっての意味
日仏の宇宙協力は、これまで個別のテーマごとに積み上げられてきました。
小惑星サンプルを分析する装置の提供や、月震計ネットワークの研究がその例です。
今回の共同声明は特定の機器や計画を対象とするものではなく、両機関の戦略的な協力そのものについて方向性を確認した点が、これまでの取決めとの違いです。
もうひとつの特徴は、機関のトップどうしの署名に、日仏双方の担当大臣が立ち会ったことです。
機関間の協定は1996年に始まり、締結・改定を経ながら30年にわたって続いてきました。
その積み重ねの上に、予算と政策を決める政府の側が同席する形で今回の署名が行われています。
なお、今回立ち会ったバティスト大臣は、2023年5月にCNES総裁としてJAXA相模原キャンパスを訪れ、小惑星サンプル分析の協力拡大に合意した人物でもあります。
今後の注目点
共同声明で共有されたのは方向性であり、どの分野でどう協力するかは、これから結ばれる個別の文書で決まる段階です。
手がかりのひとつが月です。
2025年の実施取決めでは、月震計の開発と、日本の月着陸機への搭載・設置に関する実現可能性の調査が挙げられており、この検討がどこまで進むかが見どころになります。
小惑星サンプルの分析協力がリュウグウからベンヌへ広がったように、すでに動いている協力がどこまで広がるかも合わせて追いたい点です。
ほしまる声明を交わしたあと、どの計画から先に動きだすんだろうね。日仏で進めている月震計の検討は、ぼくも続きが気になるよ。