米宇宙軍は、機動型の静止軌道衛星が提供する商用通信サービスについて、調達計画を再び延期しました。
米国の宇宙専門紙SpaceNewsが2026年9月29日に報じました。
この計画の価値は最大約9億ドルとされます。
延期はこれまでにも重なっていて、今回はその延長にあたります。
3行で分かるポイント
- 米宇宙軍は、軌道上で位置を変えられる民間の通信衛星からサービスを買う計画を、さらに先へ延ばしました。
- 計画の価値は最大約9億ドルで、これまでにも発注の時期が何度か遅れてきました。
- この仕組みに向けて衛星を用意している企業にとっては、受注できる時期がさらに先になります。
まず押さえたい背景
米宇宙軍(U.S. Space Force)は米国の軍組織です。
今回の計画では、民間企業の衛星から軍が使う通信を「サービスとして買う」立場にあります。
窓口は宇宙軍の商用衛星通信室(CSCO:Commercial Satellite Communications Office)です。
この部署は、軍が民間から調達する衛星通信の需要予測を、毎年度企業向けに公表しています(出典:Air & Space Forces Magazine「Space Force Plans $905 Million for Maneuverable GEO Program」)。
静止軌道(GEO)は赤道の上空約3万6,000kmにある軌道です。
ここを回る衛星は地球の自転と同じ周期で回るので、地上からは空の同じ位置に止まって見えます。
通常、静止軌道の通信衛星は決められた位置(軌道位置)に留まり、決まった地域をカバーし続けます。
「機動型」は、この位置を必要に応じて移せる衛星を指します。
宇宙軍が機動性を求める理由として報じられているのは、次の3点です。
- 軌道位置の間を移動して特定の地域の通信を手厚くできること
- 宇宙ごみ(デブリ)を避けられること
- 地域的な紛争などの際に部隊の必要へ柔軟に応じられること
2024年9月、当時の宇宙軍商用宇宙室長だったリッチ・ナイズリー大佐は、止まったままの軌道にいない衛星は軍にとって大きな転換になるという趣旨の発言をしています(出典:Defense News「Space Force developing plan for maneuverable GEO satellite services」)。
何が発表されたか
SpaceNewsによると、宇宙軍は機動型の静止軌道衛星を使う商用通信サービスの調達計画を、さらに後ろへずらしました。
計画の価値は最大約9億ドルです(出典:SpaceNews「Space Force delays procurement of maneuverable GEO satellite services」)。
この計画の遅れは今回が初めてではありません。
宇宙軍は当初、2025年7月に契約を結ぶ予定で、CSCOの2025会計年度の予測にも載せていましたが、この計画は遅れました。
その後、2026会計年度の予測では、今後5年間で9億500万ドル分の契約を見込み、2026年6月までの契約締結を目指すとしていました(出典:Air & Space Forces Magazine「Space Force Plans $905 Million for Maneuverable GEO Program」)。
2025年10月の報道では、企業同士の競争(入札)を2026年1月に始める計画とされていました(出典:Air & Space Forces Magazine「Space Force Plans 2026 Competition for Maneuverable Satellites」)。
今回の延期で、この日程もさらに後ろにずれたことになります。
計画で求めているのは、静止軌道で動ける小型の商用衛星です。
主な用途は衛星通信で、特に利用できる周波数が限られる軍用周波数帯を使えることが重視されています。
宇宙軍は、老朽化する軍の衛星通信を補うこと、ロシアや中国の脅威に対して通信網を打たれ強くすることも目的に挙げています。
宇宙業界にとっての意味
軍や政府が衛星を自前で持つ代わりに、民間の衛星からサービスを買う形は「サービス調達」と呼ばれます。
企業は衛星を造って運用し、軍は使った分の契約を結びます。
この計画は、機動型の静止軌道衛星という新しい種類の衛星について、軍が大口の買い手になる入口と位置づけられていました。
2024年9月の報道では、このような衛星を運用する事業の市場はまだ立ち上がったばかりで、持続する事業モデルが描けるかどうかが課題とされていました(出典:Air & Space Forces Magazine「Space Force Wants Market for Commercial Satellites That Can Maneuver in Orbit」)。
このような段階の市場では、大口顧客の発注時期が収入の見通しに直結します。
今回の延期により、この計画での受注を狙う事業者にとっては、売上が立つ時期がさらに先になります。
今後の注目点
まず注目されるのは、宇宙軍が新しい入札開始と契約締結の時期をいつ示すかです。
CSCOが公表する企業向けの需要予測に、この計画がどの時期・規模で載るかが手がかりになります。
あわせて、計画の規模(約9億ドル)や、求める衛星の条件が見直されるかどうかも確認点です。
ほしまる動ける衛星は、遠くの地域へ寄っていくこともできるんだよ。でも、そのための契約が決まる日は、まだ先に延びたままなんだ。
出典
- SpaceNews「Space Force delays procurement of maneuverable GEO satellite services」
- Air & Space Forces Magazine「Space Force Plans $905 Million for Maneuverable GEO Program」
- Air & Space Forces Magazine「Space Force Plans 2026 Competition for Maneuverable Satellites」
- Air & Space Forces Magazine「Space Force Wants Market for Commercial Satellites That Can Maneuver in Orbit」
- Defense News「Space Force developing plan for maneuverable GEO satellite services」