気候変動が起きている主な原因は、人間の活動が大気中に出してきた温室効果ガスです。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2023年の統合報告書で、人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がない、と結論づけました。
世界の平均気温は、1850〜1900年を基準として、2011〜2020年に1.1℃の温暖化に達しています。
二酸化炭素が増えるとなぜ気温が上がるのか、太陽活動のような自然の要因とはどう比べられているのか、そして地球全体の変化をどうやって測っているのか。
この3つを順に取り上げます。

気候変動は、人間が出した温室効果ガスで起きている
IPCCは、世界各国の研究者が発表した論文を集めて評価し、いま何がどこまで分かっているのかをまとめる国際的な組織です。
報告書の要点は「政策決定者向け要約」という短い文書にまとめられ、各国政府の代表が参加する総会で承認されます。
2023年の統合報告書の政策決定者向け要約は、冒頭で次の結論を示しています。
人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには、疑う余地がありません。
1850〜1900年を基準とした世界平均気温は、2011〜2020年に1.1℃の温暖化に達しました(出典:環境省「AR6 統合報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要(暫定訳)」)。
「疑う余地がない」は、IPCCの文書としてはかなり強い書き方です。
報告書では多くの結論に「確信度が高い」「可能性が非常に高い」といった確からしさの表現が添えられ、どこまで言い切れるかが区別されています。
原因が人間活動にあるという部分は、その段階をすでに越えた扱いになっています。
同じ要約は、世界全体の温室効果ガスの排出量が増加し続けていることも記しています。
原因が特定されたあとも、その原因そのものは増え続けています。
気候変動と地球温暖化は、指している範囲が違う
「地球温暖化」と「気候変動」は、同じ話題を指して使われますが、言葉が指す範囲は同じではありません。
地球温暖化は、世界の平均気温が上がること自体を指します。
気候変動は、気温の上昇に伴って現れる、もっと広い範囲の変化までを含めて使われます。
IPCCの統合報告書は、その広がりを「大気、海洋、雪氷圏、及び生物圏に広範かつ急速な変化が起こっている」と表現しています。
雪氷圏とは、地球上で雪や氷に覆われた部分の全体を指す言葉です。
南極やグリーンランドを覆う厚い氷である氷床、山岳地帯の氷河、海に浮かぶ海氷、積雪、凍った土壌が含まれます。
生物圏は、生き物が存在している領域を指します。
つまり、変化が現れる場所は気温だけではありません。
海水の温度と高さ、氷の量、生き物の生育期間まで含めた全体が、観測の対象になっています。
二酸化炭素の濃度、気温、海面の高さ、氷の量は、いずれもその一部です。
世界の平均気温は、工業化以前から1℃あまり上がった
気温が「どれだけ上がったか」を示す数字は、どの期間をどの期間と比べたかで変わります。
そのため、数字だけを取り出しても意味が定まりません。
IPCCの第6次評価報告書のうち、気候変動の自然科学的な根拠を扱う第1作業部会の要約は、次の推定を示しています。
1850〜1900年から2010〜2019年までの人為的な世界平均気温上昇は、可能性が高い範囲が0.8℃〜1.3℃、最良推定値が1.07℃です(出典:気象庁暫定訳「IPCC第6次評価報告書 第1作業部会 政策決定者向け要約」)。
基準となっている1850〜1900年は、世界平均気温を推定できるだけの観測が地球規模で行われるようになった最も早い時期にあたり、工業化以前の状態の近似値として使われています。
同じ期間に実際に観測された昇温は1.06[0.88~1.21]℃で、人間活動による昇温の最良推定値1.07℃とほぼ重なります。
観測された気温上昇のほとんどが、人間活動によって説明される、ということになります。
期間の取り方を変えると、数字の見え方も変わります。
気象庁の統計では、世界の年平均気温は1891年の統計開始以降、100年あたり0.79℃の割合で上昇しています(出典:気象庁「世界の年平均気温」)。
こちらは1891年以降の全体を均した上昇の速さで、先ほどの1.07℃とは測っているものが違います。
2025年の世界の平均気温は、1991〜2020年の30年平均値からの偏差がプラス0.48℃でした。
二酸化炭素が増えると、なぜ地球が暖まるのか
温室効果ガスと呼ばれる気体には、二酸化炭素のほかに、メタン、一酸化二窒素、そして水蒸気があります。
太陽の光は大気を通り抜け、地表から出る熱は捕まる
地球を暖めているエネルギーは、太陽から届く光です。
この光の大部分は、大気にあまり吸収されないまま通り抜けて、地面や海面に届きます。
届いた光は地表を暖めます。
暖まった地表は、受け取ったぶんのエネルギーを宇宙へ向けて放ちます。
このとき出ていくのは、目に見える光ではなく、赤外線という目に見えない光です。
物が温度を持つと赤外線を出すという性質は、太陽から届く光とは別の現象です。
二酸化炭素やメタンは、この赤外線を吸収する性質を持っています。
吸収したエネルギーは、再びあらゆる方向へ放たれます。
上に向かうものもあれば、地表に戻ってくるものもあります。
その結果、地表から宇宙へ熱が逃げていく速さが下がり、地表の温度は以前より高いところで釣り合うようになります。

この働きは、人間が何かをする前から地球にありました。
温室効果がまったくなければ、地球の平均気温はいまよりずっと低くなります。
変わったのは効果の有無ではなく、その強さです。
赤外線を吸収する気体が大気中に増えたぶん、熱の逃げにくさが増しました。
大気中の二酸化炭素は、工業化以前より5割以上増えた
気象庁によると、2024年の大気中二酸化炭素の世界平均濃度は423.9ppmで、前年と比べて3.5ppm増えました(出典:気象庁「二酸化炭素濃度の経年変化」)。
工業化以前である1750年の平均的な値とされる約278ppmと比べると、52%の増加にあたります。
ppmは濃度を表す単位で、100万分のいくつかを示します。
423.9ppmは、空気を100万個の粒に分けたとき、そのうち約424個が二酸化炭素にあたる、という意味になります。

増加はいまも続いています。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)がハワイのマウナロア観測所で測った月平均濃度は、2026年8月に427.55ppmでした(出典:NOAA「Trends in Atmospheric Carbon Dioxide」)。
前年同月の425.48ppmから上がっています。
直近1年ぶんの値は速報の扱いで、較正などの確認を経て修正される場合があります。
濃度と排出量は、別の量です。
排出量は人間が1年間に出した二酸化炭素の量で、濃度は大気中にたまっている割合を指します。
排出を続ける限り、濃度は積み上がっていきます。
なお、IPCCの第1作業部会の要約は、2019年の大気中の二酸化炭素濃度が、長い時間スケールで見ても前例のない高さにあると評価しています。
ほしまる人間が出した二酸化炭素は、全部そのまま空にたまっているのかな。それとも、どこかへ行くんだろう?
出した二酸化炭素の半分ほどは、陸と海が吸収している
出した二酸化炭素のすべてが大気に残るわけではありません。
IPCCの第1作業部会の要約によると、陸域と海洋は、人間活動による二酸化炭素の排出を過去60年間にわたってほぼ一定の割合で吸収しています。
その割合は世界全体で毎年約56%で、地域による差があります。
森林などの陸上の植物は、光合成によって二酸化炭素を取り込みます。
海は、大気と接する海面から二酸化炭素を溶かし込みます。
この2つの働きによって、排出量の半分あまりが大気中から陸や海へ移り、残りが大気中の濃度の上昇として現れています。


ただし、吸収されたぶんが消えてなくなるわけではありません。
海に溶けた二酸化炭素は、海水の性質そのものを変えます。
海水に二酸化炭素が溶けると酸性の方向へ傾き、これを海洋酸性化と呼びます。
IPCCの第1作業部会の要約は、人為的な二酸化炭素の排出が、現在進行している外洋表層の世界的な酸性化の主要な駆動要因であることはほぼ確実だとしています。
つまり、陸と海が吸収した部分は、気温とは別の形の変化として現れています。
太陽の活動や火山が原因ではないのか
太陽の活動や大きな火山の噴火は、実際に地球の気温を動かします。
IPCCは、それぞれの要因が気温をどれだけ変化させたかを、幅を持たせた推定値として示しています。
太陽と火山の影響は、0.1℃ほどの範囲にとどまる
要因ごとの寄与は、次のように推定されています。
いずれも1850〜1900年から2010〜2019年までの世界平均気温への寄与で、可能性が高い範囲として示された値です(出典:気象庁暫定訳「IPCC第6次評価報告書 第1作業部会 政策決定者向け要約」)。
| 要因 | 世界平均気温への寄与 |
|---|---|
| よく混合された温室効果ガス | 1.0℃〜2.0℃の昇温 |
| 他の人為起源の要因(主にエーロゾル) | 0.0℃〜0.8℃の降温 |
| 自然起源の要因(太陽活動と火山活動) | マイナス0.1℃〜プラス0.1℃の変化 |
| 気候システムの内部変動 | マイナス0.2℃〜プラス0.2℃の変化 |
エーロゾルとは、大気中に漂っている細かい粒子のことです。
石炭や石油を燃やすと、二酸化炭素と一緒にこうした粒子も出ます。
粒子は太陽の光をさえぎったり反射したりするため、気温を下げる向きに働きます。
人間活動は、気温を上げる要因と下げる要因の両方を出してきたことになります。
内部変動は、気候システムの内部で自然に起きる揺らぎを指します。
エルニーニョ現象のように、外から要因が加わらなくても数年単位で気温が上下する動きがこれにあたります。
太陽活動と火山活動を合わせても、推定された範囲はマイナス0.1℃からプラス0.1℃にとどまります。
一方、温室効果ガスの寄与は1.0℃から2.0℃です。
実際に観測された昇温が1.06[0.88~1.21]℃であることと並べると、自然起源の要因だけでは、この幅を埋められません。


報告書に掲載された図でも、太陽活動と火山活動だけを考えたシミュレーション結果は、1850年以降ほぼ横ばいで推移しています。
観測された気温の上昇と重なるのは、人為起源と自然起源の両方を考えた場合です。



自然の要因の幅は、プラス側にもマイナス側にも同じくらい伸びているんだ。気温を上げたのか下げたのか、向きすら決まっていない大きさなんだよ。
過去にも気候は変わってきたが、今の速さが違う
地球の気候が昔から変動してきたことは、氷に閉じ込められた空気や地層の分析から分かっています。
氷期と間氷期が繰り返してきたことも、確かめられています。
ここで問われているのは、気候が変わるかどうかではなく、変わる速さです。
IPCCの第1作業部会の要約は、気温の歴史を示した図に「人間の影響は、少なくとも過去2000年間に前例のない速度で、気候を温暖化させてきた」という見出しを掲げています。
本文でも、世界平均気温は1970年以降、少なくとも過去2000年間にわたって、他のどの50年間にも経験したことのない速度で上昇していると評価されています。
過去の温暖な時期と、いまの変化には、進み方の違いがあります。
同じ図の解説によれば、約12万5000年前の最終間氷期を含む過去の温暖な期間は、数千年にわたる緩やかな軌道要素の変動によって引き起こされました。
軌道要素とは、地球が太陽のまわりを回る軌道の形や、地軸の傾きといった要素です。
これらはゆっくり変化するため、気候への影響も数千年かけて現れます。
いま起きている変化は、この時間の尺度に収まりません。
二酸化炭素の濃度についても、1750年以降の増加は、少なくとも過去80万年間にわたる氷期と間氷期の数千年規模の自然変動をはるかに超えていると評価されています。
数千年かけて起きてきた規模の変化が、100年あまりの間に現れている、という違いです。


地球の変化は、宇宙から測られている
気温や二酸化炭素の濃度は、地上の観測所で測られた値が土台になっています。
一方で、南極の氷の量や外洋の海面の高さは、人が常に立ち会って測れる場所にはありません。
この部分を担っているのが人工衛星です。
衛星は、氷、海面、大気中の気体を、それぞれ別の方法で測っています。
重力のわずかな変化から、氷の重さを量る



南極の氷が減っているって、どうやって分かるんだろう。あの広さを端から測って回るわけにもいかないよね。
氷の量を調べるために使われているのが、重力です。
重力の強さは、その場所の下にどれだけの質量があるかで、わずかに変わります。
氷が失われれば、その地域の重力はほんの少し弱くなります。
この変化を宇宙から捉えているのが、アメリカとドイツが共同で進めてきたGRACEと、その後継のGRACE Follow-Onです。
GRACEは2002年から2017年まで、GRACE Follow-Onは2018年から観測を続けています。
2機の衛星が約220km離れて縦に並んで飛び、互いにマイクロ波を送り合って、その間隔を精密に測り続けます(出典:NASA/JPL「GRACE-FO Mission Overview」)。
重力がわずかに強い地域の上を通るとき、まず先を行く衛星が引かれて間隔が広がります。
後ろの衛星が同じ場所にさしかかると、今度はそちらが引かれて間隔が縮みます。
この伸び縮みの記録から、地表の質量がどこでどれだけ変わったかを割り出します。


観測の結果、南極は年間およそ135ギガトン、グリーンランドは年間およそ264ギガトンの氷を失っています(出典:NASA「Ice Sheets」)。
1ギガトンは10億トンです。
この氷の減少は、南極で年0.4mm、グリーンランドで年0.8mm、世界の海面を押し上げる量にあたります。


海面の高さは1993年から測り続けられている
海面の高さは、別の系統の衛星が測っています。
衛星から海面へ電波を発射し、跳ね返って戻るまでの時間から、衛星と海面の距離を求めます。
衛星自身の軌道の高さは別の方法で分かっているため、この距離から海面の高さが計算できます。
TOPEX/Poseidonに始まり、Jason I、Jason II、Jason III、そしてSentinel-6 Michael Freilichへと、観測を引き継ぎながら1993年から測定が続けられてきました。


この記録では、世界平均海面水位は1993年から107.7mm上昇し、現在の上昇率は年0.44cmに達しています(出典:NASA Sea Level Change Portal「Global Mean Sea Level」)。
もっと長い期間については、IPCCの第1作業部会の要約が値を示しています。
世界平均海面水位は1901年から2018年までの間に0.20m上昇しました。
平均上昇率は1901〜1971年が1.3mm/年、1971〜2006年が1.9mm/年、2006〜2018年が3.7mm/年と、段階的に増えています。
観測の方法も期間も異なる2つの資料が、上昇と、その加速の両方を示しています。
海面が上がる理由は、大きく2つに分かれます。
陸にある氷床や氷河が解けて海に流れ込むぶんと、海水が暖まって膨張するぶんです。
IPCCの第1作業部会の要約は、1971年から2018年に観測された上昇の内訳を評価しています。
海洋の熱膨張が主な割合を占め、氷河からの氷の減少、氷床からの氷の減少、陸域の貯水量の変化がこれに続きます。
ただし内訳は期間によって変わり、2006年から2018年の上昇では、氷床と氷河の質量減少が支配的な要因になっています。
温室効果ガスそのものを測る日本の衛星いぶき
濃度の観測にも、衛星が加わっています。
地上の観測所は陸地に偏っていて、広い海域や観測網の整っていない地域では測定点が限られます。
大気中の温室効果ガスを宇宙から直接測れれば、地球全体を同じ方法で捉えられます。
この分野で日本が続けてきたのが「いぶき」の系譜です。


2009年に「いぶき」、2018年10月29日に「いぶき2号」が打ち上げられ、2025年6月29日には「いぶきGW」が打ち上げられました(出典:JAXA「いぶきGW(GOSAT-GW)」)。
いぶきGWは、温室効果ガスの観測と水循環の観測を1機で担う衛星です。
搭載されたTANSO-3は、二酸化炭素とメタンに加えて、新たに二酸化窒素を観測します。
広い範囲を10kmの分解能で捉えるモードと、3kmの分解能で細かく捉えるモードを使い分けます。
もうひとつのAMSR3は、地表や海面、大気から自然に放たれるマイクロ波を捉え、海面水温、海氷の密接度、土壌の水分、降雪といった水に関わる現象を観測します。
気温、氷、海面、大気中の気体。
それぞれ別の原理で、別の機関が測った結果が、同じ方向の変化を示しています。
日本の気温は、世界の平均より速いペースで上がっている
気候変動の現れ方は、場所によって同じではありません。
IPCCの第1作業部会の要約によれば、2011〜2020年の気温は1850〜1900年と比べて、陸域で1.59℃、海上で0.88℃高くなっています。
地球全体を均した数字の内側には、このような差があります。
100年あたり1.44℃という上がり方
日本の気温の変化は、世界の平均より大きく現れています。
次の値はいずれも気象庁の統計によるもので、偏差は1991〜2020年の30年平均値を基準としています。
| 世界 | 日本 | |
|---|---|---|
| 統計開始年 | 1891年 | 1898年 |
| 100年あたりの上昇率 | 0.79℃ | 1.44℃ |
| 2025年の基準値からの偏差 | プラス0.48℃ | プラス1.23℃ |
日本の年平均気温は、1898年の統計開始以降、100年あたり1.44℃の割合で上昇しています(出典:気象庁「日本の年平均気温」)。
世界の0.79℃と比べると、およそ1.8倍の速さです。
2025年の偏差も、世界のプラス0.48℃に対して、日本はプラス1.23℃でした。
統計の開始年は7年ずれていますが、どちらも100年あたりの割合に直した値で、基準とする30年平均の期間も共通です。
海も暖まり、日本近海の上昇率は世界の2倍を超える
変化が現れているのは気温だけではありません。
気象庁によると、日本近海における2025年までの海域平均海面水温の上昇率は、100年あたりプラス1.36℃です(出典:気象庁「日本近海の海面水温の長期変化傾向」)。
同じ統計で、世界全体で平均した海面水温の上昇率は100年あたりプラス0.63℃、北太平洋全体ではプラス0.66℃です。
日本近海の値は、世界全体の2倍を超えています。
海の温度が上がっていること自体は、世界中で確認されています。
IPCCの第1作業部会の要約によれば、世界の海洋表層である水深0〜700mが1970年代以降昇温していることは、ほぼ確実です。
人間の影響が主要な駆動要因である可能性も、極めて高いと評価されています。
同じ要約によれば、気候システム全体にたまった熱のうち、91%は海洋の温暖化が占めています。
残りは陸域の温暖化、氷の減少、大気の温暖化などが分け合っています。
大気の気温として現れている変化は、地球にたまった熱のごく一部だということになります。
よくある質問
まとめ
気候変動の原因と現状は、複数の独立した観測によって確かめられてきました。
最後に、確かめられていることと、まだ決着していないことを整理します。
分かっていること。
- 原因は人間活動による温室効果ガスの排出で、IPCCはこの点を「疑う余地がない」と評価しています
- 二酸化炭素の濃度、気温、海面の高さ、氷の量は、それぞれ別の原理と別の観測網で測られ、同じ方向の変化を示しています
- 太陽活動と火山活動の寄与は、推定された範囲がマイナス0.1℃からプラス0.1℃にとどまり、観測された昇温を説明できません
- 日本の気温と近海の海面水温の上昇率は、いずれも世界平均を上回っています
分かっていないこと。
- 今後どれだけ気温が上がるかは、今後の排出量のシナリオと、気候の感度の幅に左右されます。温室効果ガスの濃度が2倍になったときの昇温量を表す平衡気候感度は、最良推定値が3℃、可能性が高い範囲が2.5℃から4℃と評価されています
- 南極氷床の質量減少に対する人間の影響については、証拠が限定的で、研究者の間の見解一致度は中程度にとどまります
IPCCの統合報告書によれば、大幅で急速かつ持続的な温室効果ガスの排出削減は、約20年以内に地球温暖化の識別可能な減速をもたらし、数年以内に大気組成に識別可能な変化をもたらすと見込まれています。
宇宙から地球を測る技術は、この星がいまどんな状態にあるのかを、外側から確かめる手段でもあります。
かつて人類が命がけで海を渡り、新しい大陸を目指したように、いつか人類は、この惑星を離れて星々のあいだへ漕ぎ出していくのかもしれません。
ASTRONOTEは「人類が地球の寿命を超え、宇宙のどこかで存在し続ける未来へ」という言葉を出発点にしています(発起人の想い)。
ただ、その旅立ちの準備を進められる場所は、いまのところ地球しかありません。
氷が減り、海面が上がり、大気の組成が変わっていく。
その一つひとつを、人類は自らの手で打ち上げた衛星で、宇宙から見つめ続けています。
母港の状態を知らずに、遠い航海には出られません。
重力で氷を量り、電波で海面を測り、大気の成分を見分けて積み上げられた記録は、この惑星を、人類が宇宙へ飛び立つための拠点として長く保つための、いちばん確かな海図になっています。
出典
- 環境省「AR6 統合報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要(暫定訳)」
- 気象庁 暫定訳「IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約」
- 気象庁「世界の年平均気温」
- 気象庁「日本の年平均気温」
- 気象庁「二酸化炭素濃度の経年変化」
- 気象庁「日本近海の海面水温の長期変化傾向」
- NOAA Global Monitoring Laboratory「Trends in Atmospheric Carbon Dioxide」
- NASA Earth Indicators「Ice Sheets」
- NASA Sea Level Change Portal「Global Mean Sea Level」
- NASA/JPL「GRACE-FO Mission Overview」
- JAXA サテライトナビゲーター「いぶきGW(GOSAT-GW)」