夜空で、自分の誕生日の星座を探してみたことはありますか。
たいていの人は、見つけられずに終わります。これは探し方が悪いのではありません。
そもそも、誕生日で決まるあの12星座と、天文学でいう黄道十二星座は、別々の原理でつくられた区分です。
片方は天球を区切った「領域」、もう片方は角度を等分した「区画」。名前が共通していて、おおむね対応しているだけ。
「へびつかい座を入れて13星座」という話も、この2本立てを知るときれいにほどけます。
この記事は、国立天文台・日本天文学会の一次情報を基にASTROWORKS編集部がまとめています。
この記事で分かることは次のとおりです。
- 黄道と黄道十二星座の定義、12星座の名前と略符の一覧
- 誕生日の星座を決めている「黄道十二宮」と星座の違い
- 誕生星座と実際の太陽の位置がずれる理由
- へびつかい座が12に数えられていない理由
読み終える頃には、天文学の区分と黄道十二宮の関係を、どちらも否定せずに整理できます。
ほしまるぼくは40年かけて太陽系を回りながら、この道筋をずっと横目に飛んでいたよ。同じ名前でも中身が違う、というのがこの話のいちばんの勘どころなんだ。
太陽の通り道に並ぶ、12の星座
黄道は、太陽が1年かけて描く「見かけの道」
日本天文学会の天文学辞典は、黄道を「天球上における太陽の平均的な通り道のこと。あるいは、地球が太陽の周りを公転するときの平均の軌道面(黄道面)と天球の交線といってもよい」と定義しています(出典: 日本天文学会 天文学辞典「黄道」)。


天球というのは、星までの距離をいったん脇に置いて、空を大きな球の内側として扱う考え方です。
位置を「方向」だけで表せるので、角度の計算がぐっと楽になります。
実際に動いているのは、もちろん地球のほうです。
地球が1年かけて太陽のまわりを回るので、地球から見ると、太陽が星々のあいだをゆっくり移動していくように見える。
この見かけの道筋が黄道です。
厳密には同じではありませんが、基準をどこに置くかで同じ運動の見え方が入れ替わる、という点は座標変換に少し似ています。
同じ辞典は、地球の自転軸が「黄道に対して垂直ではなく、23.4°ほど(黄道傾斜角)傾いている」とも記しています(出典: 日本天文学会 天文学辞典「黄道」)。
この傾きは季節の移り変わりにつながる量ですが、ここでは「黄道は天の赤道と斜めに交わっている」とだけ押さえておけば足ります。
定義はなぜ、わざわざ「へびつかい座を除く」と断るのか
黄道を含む星座のうち、へびつかい座を除く12の星座。プトレマイオス(Ptolemaeus)に由来する。おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、おとめ座、てんびん座、さそり座、いて座、やぎ座、みずがめ座、うお座の12星座である。
(出典: 日本天文学会 天文学辞典「黄道十二星座」)
読み飛ばしそうな一文ですが、ここに重い情報が入っています。
わざわざ「除く」と断っているということは、裏を返せば、へびつかい座もまた黄道を含む星座だ、ということです。
つまり「太陽が通る星座=黄道十二星座」という理解は、そのままでは正確ではありません。
太陽が通る星座を素直に数えると12では収まらず、そこからひとつ外した枠組みが黄道十二星座と呼ばれています。
プトレマイオスに由来する、とあるとおり、この12という枠は古代に整えられたもの。
現代の星座は「形」ではなく「区画」
現代の天文学で星座といえば、星のつなぎ方ではなく、天球上の区画を指します。
国立天文台の解説には「現在の88星座の名称と略符(アルファベット3文字)は1922年に国際天文学連合(IAU)総会で採択されました。また、星座の境界の決め方は1928年までの議論を基にIAU総会で採択され、1930年にIAUが出版した書物 “DELIMITATION SCIENTIFIQUE DES CONSTELLATIONS” によって星座の境界が確定しました」と記されています(出典: 国立天文台「星座名・星座略符一覧」)。
国際天文学連合(IAU)は天文学の国際的な学術組織で、星座の名称や天体の命名について世界共通の取り決めを担っています。
境界線が引かれた意味は小さくありません。
空が隙間なく区画に分けられているので、「この方向はどの星座か」という問いに、必ずひとつの答えが返ってきます。
ソフトウェアで領域判定をするとき、境界条件を曖昧にしたままだと結果が定まらないのと同じ理屈です。
「太陽がいまどの星座の領域にいるか」という後半の話も、この区画があって初めて成り立ちます。
12星座の一覧と、夜空で探すときの季節感
名前・略符・面積を、並べて眺めてみる
星座名・学名・略符・面積は、国立天文台の「星座名・星座略符一覧」の表記に合わせています。
| 星座名 | 学名 | 略符 | 面積(平方度) |
|---|---|---|---|
| おひつじ座 | Aries | Ari | 441.395 |
| おうし座 | Taurus | Tau | 797.249 |
| ふたご座 | Gemini | Gem | 513.761 |
| かに座 | Cancer | Cnc | 505.872 |
| しし座 | Leo | Leo | 946.964 |
| おとめ座 | Virgo | Vir | 1294.428 |
| てんびん座 | Libra | Lib | 538.052 |
| さそり座 | Scorpius | Sco | 496.783 |
| いて座 | Sagittarius | Sgr | 867.432 |
| やぎ座 | Capricornus | Cap | 413.947 |
| みずがめ座 | Aquarius | Aqr | 979.854 |
| うお座 | Pisces | Psc | 889.417 |
(出典: 国立天文台「星座名・星座略符一覧」)
学名はラテン語で、表に載せたのはその主格の形です。
個々の星の名前を書くときには、学名の属格(所有格)か略符を添えます。おひつじ座なら属格は Arietis、略符は Ari。
国立天文台は例としてオリオン座α星を「α Orionis, α Ori」と示しています(出典: 国立天文台「星座名・星座略符一覧」)。
平方度は天球上の面積を表す単位で、その星座が空をどれだけ占めているかを表します。
目を引くのは、いちばん右の欄です。
最大のおとめ座は1294.428平方度、最小のやぎ座は413.947平方度。3倍以上の開きがあります。
12個に区切られているとはいえ、大きさは少しもそろっていません。
この不ぞろいが、次に出てくる黄道十二宮との決定的な違いになります。
誕生日の星座は、誕生日の頃には見えない
冒頭の「見つけられない」話に戻ります。


理由は単純で、太陽がその星座の方向にいる時期は、その星座が昼の空にあるからです。
黄道は太陽の通り道。太陽と同じ方向に並んでいる星座は、太陽と一緒に昇って、一緒に沈みます。
昼間の空は明るく、星の光はその中に埋もれてしまう。
では、いつなら見えるのか。
地球が公転しているため、太陽は黄道を1年かけて1周するように見えます。
ある星座に太陽がいた時期からおよそ半年たつと、その星座は太陽と正反対の方向に来る。真夜中に空高く昇る位置です。
自分の星座を探すなら、誕生日からおよそ半年ずれた季節を目安にしてみてください。
見やすい月は星座ごとに違い、観察する時間帯や場所によっても前後します。
正確な日付や高度は、後半で紹介する国立天文台の暦計算室で調べられます。
誕生日の星座を決めていたのは、星座ではなかった
黄道十二宮は、角度を30度ずつ切っただけの区画
天文学辞典は黄道十二宮を「天球上で、黄道を中心とした、惑星(太陽と月などを含む)が運行する帯状の領域(獣帯: zodiac)を黄経にしたがって等分割した12の『サイン(sign)』の総称」と定義しています。
同じ項目には「サインは『宮』とも呼ばれていたのでこの名がある。占星術に登場する概念である」とも書かれています(出典: 日本天文学会 天文学辞典「黄道十二宮」)。


黄経は、黄道に沿って測る角度です。
天文学辞典によると「黄経の原点は春分点の方向にとり、黄道に沿って東回りに角度を測る」と決められています(出典: 日本天文学会 天文学辞典「黄道座標系」)。
国立天文台暦計算室の解説では、黄道十二宮は黄道を30度ずつ12等分したものとして整理されています。
白羊宮(おひつじ)が0度から30度、金牛宮(おうし)が30度から60度、というように黄経の範囲で表にまとめられています(出典: 国立天文台暦計算室「暦Wiki/黄道十二宮」)。
要するに、ものさしに等間隔の目盛りを刻む作業です。
区切る位置を決めているのは角度だけ。そこに実際どの星座があるかは、条件にまったく入っていません。
同じ名前なのに、境界は重なっていない
天文学辞典は、黄道十二星座について「これらの星座はほぼ黄道十二宮に対応しているが、両者の境界は厳密には一致していない」と明記しています(出典: 日本天文学会 天文学辞典「黄道十二星座」)。
この「厳密には一致していない」は、細かい誤差の話ではありません。
つくり方の原理がそもそも違います。
- 星座は、天球を不規則な境界線で区切った領域。面積は413.947平方度から1294.428平方度までばらばら
- 宮は、黄経を30度ずつ等分した区画。すべて同じ幅
- 名前が共通しているのは、宮の名称が黄道沿いの星座名に由来するため
あくまでイメージですが、一方は地形に沿って引かれた県境、もう一方は緯度経度で機械的に切った方眼のようなものです。
呼び名が同じでも重なりきらないのは、むしろ当然といえます。



同じ名札が付いた箱でも、中身の詰め方が違えば別物なんだ。星座と宮は、ぼくにとってもずっとそういう関係だったよ。
ずれは、なぜ時代とともに大きくなるのか
地球は、ゆっくり首を振る巨大なコマ
天文学辞典は歳差を、次のように説明しています。


南北に扁平な回転楕円体に近い形状をしている地球に対し、黄道面近くにある月や太陽から引力が及ぼされると、地球の重心に対する力との差分(潮汐力)が偶力となって自転軸を起こそうというトルクが働く。すると、あたかも回転するコマが首を振るように、回転する地球も徐々にその向きを変えていく。
(出典: 日本天文学会 天文学辞典「歳差」)
まずは、この引用の最後にあるコマのたとえだけを頭に置いてください。
勢いよく回っているコマは、傾いたまま倒れずに、軸の先が円を描いてゆっくり回ります。地球もそれと同じで、自転軸の向きが長い時間をかけて円を描く。
ここまでつかめれば、この節の要点は押さえたことになります。
ここから先は、なぜ地球にコマと同じことが起きるのかを、引用に出てくる語をひとつずつほどいていく部分です。
回転楕円体とは、球を赤道方向にわずかに膨らませた形状。地球は赤道側が張り出し、極側がやや潰れています。
この出っ張りがあるおかげで、外から引力を受けたときに力のかかり方が前後で釣り合わなくなります。
潮汐力とは、天体の場所ごとに引力の強さが違うために生まれる、力の差のこと。月や太陽に近い側と遠い側では引力の大きさがそろわず、その差が地球を引き伸ばすように働きます。
偶力については、厳密な定義に踏み込むより、はたらきで捉えたほうが早いでしょう。赤道の出っ張りに、向きの異なる力が離れた場所でかかる。その結果、自転軸を起こそうとする回転の力、つまりトルクが生じます。
回転している物体に横からトルクを加えると、加えた向きではなく、それと直角の方向へ軸が振れていく。
モーターの回転体やジャイロセンサーを扱った経験があれば、感覚をつかみやすい動きです。地球という巨大なコマでも、同じことが起きています。
その速さは、日常の感覚からすると気が遠くなるほどゆっくりです。天文学辞典は「地球の自転軸が黄道の極に対して約23.4°傾いたまま、自転とは逆向きに周期約26,000年で回転する」と記しています(出典: 日本天文学会 天文学辞典「歳差」)。
春分点が動けば、宮の起点ごと動く
先ほど確認したとおり、宮の起点は春分点でした。
その春分点は、天の赤道と黄道が交わるふたつの点のひとつです(出典: 日本天文学会 天文学辞典「春分」)。
天の赤道は地球の自転軸の向きで決まります。ということは、自転軸が首を振れば、交点である春分点も黄道上を移動していく。
移動の量は、国立天文台暦計算室が数字で示しています。歳差により春分点は1年あたり50秒程度動き、約72年で1度、2150年ほどで30度ずれるとされています(出典: 国立天文台暦計算室「暦Wiki/黄道十二宮」)。ここでの秒は時間ではなく角度の単位で、1度の3600分の1にあたります。
30度。少し前に出てきたばかりの数字です。
宮ひとつ分の幅と、ちょうど同じ値。約2150年たてば、宮の区切りは星座の並びに対して、まるまる1区画ぶん滑っていく計算になります(出典: 国立天文台暦計算室「暦Wiki/黄道十二宮」)。
実際、国立天文台暦計算室によると、春分点は現在うお座のあたりにあります。黄道十二宮が成立したころはおひつじ座にあったため、今でも春分点にはおひつじ座の星座記号が用いられています(出典: 国立天文台暦計算室「暦Wiki/黄道十二宮」)。
宮の起点である0度の目印だけが名前として残り、その方向の実際の星座は入れ替わっている。
誕生日の星座と、その日に太陽が実際にいる星座が食い違う場合があるのは、この積み重ねによるものです。
どちらかが間違っているのではなく、動く基準の上に区分が置かれている、という構造の問題です。
へびつかい座は、なぜ12に入れてもらえないのか
面積は、12星座のうち10個より広い
へびつかい座は、国立天文台の星座名一覧に学名Ophiuchus、略符Oph、面積948.340平方度として掲載されています(出典: 国立天文台「星座名・星座略符一覧」)。88星座に含まれる、れっきとした星座です。


しかも、決して小さくありません。
948.340平方度という面積は、黄道十二星座12個のうち10個より広い値です。おとめ座とみずがめ座に次ぐ広さを持ちながら、12の枠には入っていない。
先に引用したとおり、天文学辞典の定義は「黄道を含む星座のうち、へびつかい座を除く12の星座」でした。へびつかい座に黄道がかかっている事実は、定義の文言そのものが前提にしています。
なぜこのような形になったのか。黄道十二星座の枠組みはプトレマイオスに由来する古代の区分で、星座の境界が現在の形に確定したのは1930年です(出典: 国立天文台「星座名・星座略符一覧」)。
古代に整えられた12という枠と、20世紀に線引きされた区画。このふたつを重ねたときに、はみ出しが見えるようになった。
それが実際のところで、星座が新しく増えたわけではありません。
「12」は、星座を数えた結果ではなかった
そもそも、なぜ12なのか。順序が逆だと考えると、すっきり理解できます。
星座を数えたら12になったのではなく、黄道帯を等分割するという発想が先にありました。
天文学辞典が黄道十二宮を「黄経にしたがって等分割した12の『サイン』」と定義しているとおり、12は分割の個数です(出典: 日本天文学会 天文学辞典「黄道十二宮」)。星座の実際の大きさや並びから導かれた数ではありません。
だからこそ、面積が3倍以上ばらついている星座の区画と、幅がぴったりそろった宮の区画は、最初から性質が違います。
両者が合わないのは、後から不都合が見つかったからではなく、設計思想が別だからです。
黄道十二宮の伝統的な12区分は、その体系の中では一貫しています。天文学の88星座は、天球を漏れなく区切るという別の目的のために整えられました。
目的が違うふたつのものさしが、並んで置かれている。そう捉えるほうが、実態に近いはずです。



ものさしが2本あるとき、目盛りが合わないのは壊れているからじゃないんだ。測りたいものが違うだけだよ。
夜空で黄道を見つける、いちばんの近道
月と惑星が並ぶ帯を、目でたどる
黄道の近くを動いているのは、太陽だけではありません。天文学辞典は黄道十二宮の定義の中で、この領域を「惑星(太陽と月などを含む)が運行する帯状の領域」と説明しています(出典: 日本天文学会 天文学辞典「黄道十二宮」)。
理由は太陽系の成り立ちにあります。同じ辞典には、黄道座標系について「太陽系の惑星や小天体は黄道面近くに多く分布しているから、太陽系天体の運動を考えるのに便利な座標系といえる」という記述もあります(出典: 日本天文学会 天文学辞典「黄道座標系」)。
太陽系の天体は、おおむね同じ平面の近くを回っています。
この性質は、そのまま夜空での目印になります。
月と明るい惑星が空に並んで見えていたら、その並びをなぞった線が黄道のおおよその位置です。黄道は南の空に大きな弧を描いて横切ります。その線を目でたどっていけば、12の星座はその上に並んでいます。
星座の形を先に覚えようとすると、途中で迷子になりがちです。
先に帯を見つけて、それから帯の上を探す。この順番のほうが、はるかに見つけやすくなります。
日付ごとの位置は、暦計算室で自分で確かめられる
記事に載っている一覧を信じるより、自分で確かめたほうが確実です。国立天文台の暦計算室では、日付を指定して天体の位置を計算できます。
サイトで公開されている主な機能は次のとおりです。
- 太陽・月の位置を日付ごとに調べる計算メニュー
- 惑星の位置を調べる計算メニュー
- 天体高度方位(スカイマップ)で、指定した日時の空の見え方を確認する機能
(出典: 国立天文台暦計算室)
観測に出かける前に、目当ての星座がその日の何時にどの高さまで昇るかを確認しておけば、空振りを減らせます。
自分の誕生日を入力して太陽の位置を調べてみるのも、この記事の内容を確かめる近道になります。
一次情報を読者が自分の手で確かめられる。編集部としては、これが天文分野の恵まれたところだと思っています。
よくある質問
まとめ 分かっていることと、見ごろの目安
分かっていることは、次の3点です。
- 黄道十二星座は、黄道を含む星座からへびつかい座を除いた12の星座。その区画は面積が3倍以上ばらつく不規則な領域である
- 誕生日の星座を決めているのは黄道十二宮で、こちらは黄経を30度ずつ等分した区画。名前は共通していても、境界は厳密には一致していない
- 地球の歳差運動で春分点が動くため、宮と星座の対応は時代とともに変わる。春分点はいまうお座のあたりにあり、宮が成立した当時のおひつじ座から1区画ぶん移った
一方で、ひとつの答えに決めきれないこともあります。
- 12星座それぞれの見ごろは、太陽がその星座を通る時期からおよそ半年後が目安になる。何月に見やすいかは、観察する時間帯や場所によって前後する
次に晴れた夜は、月や惑星が並んでいる帯を目で追ってみてください。
その線の上に、12の星座が並んでいます。