- 「2026年の皆既月食って、いつだったっけ?」
- 「もう終わったの? それともこれから見られるの?」
- 「見逃したかもしれない。次のチャンスはいつ?」
結論から書きます。
2026年の皆既月食は3月3日の夜に起こり、すでに終わっています。
日本全国で、欠け始めから欠け終わりまでの全過程が見られた月食でした。
そして次に日本全国で皆既月食が見られるのは、2029年1月1日です。
この記事は、宇宙の科学と宇宙産業の情報を一次情報と整合させて発信するASTROWORKS編集部が、国立天文台の公開資料をもとにまとめています。
この記事で扱うのは次の4点です。
- 2026年3月3日の月食が実際にどう進んだのか、時刻と食分
- 8月28日の部分月食が日本から見られない理由と、2030年までの月食一覧
- 皆既中の月が赤銅色になる仕組みと、赤の濃さが毎回変わる理由
- 次の皆既月食に向けて、今から始められる観察と撮影の準備
読み終える頃には、次に赤い月を見上げたとき、隣にいる人へ理由を説明できるようになっているはずです。
ほしまる3年後なんてずいぶん先だと思うかもしれないけど、宇宙の時間ではすぐ明日みたいなものだよ。ぼくは40年も待つことばかりしてきたけど、待ち方を知っていると、その一夜がもっと輝いて見えるんだ。


2026年の皆既月食は3月3日に終わっている
まず、いちばん知りたいところをはっきりさせます。
2026年の皆既月食は、3月3日のひな祭りの夜に起こりました。
東京では18時50分に欠け始め22時18分に部分食が終わった
2026年3月3日の皆既月食は、日本全国で部分食の始まりから終わりまでのすべてが見られる月食でした。
月は東の空で欠け始め、皆既食のあいだは赤黒い色に変わり、南東の空で欠け終わっています。
国立天文台が公表した進行は次のとおりです(出典: 国立天文台「2026年3月3日 皆既月食 解説資料」)。
| 現象 | 時刻 | 食分 |
|---|---|---|
| 部分食の始まり | 18時49.8分 | 0.000 |
| 皆既食の始まり | 20時04.0分 | 1.000 |
| 食の最大 | 20時33.7分 | 1.156 |
| 皆既食の終わり | 21時03.4分 | 1.000 |
| 部分食の終わり | 22時17.6分 | 0.000 |
国立天文台の解説ページでは、この時刻を丸めて「18時50分に欠け始め、20時04分に皆既食となり、21時03分に皆既食が終わり、22時18分に部分食が終わる」と案内していました。
この時刻は全国共通です。
解説資料には「部分食の始まり、皆既食の始まり、食の最大、皆既食の終わり、部分食の終わりは、どこで観察しても同じ時刻です」と明記されています。
実際、暦要項に載っている那覇から札幌までの予報時刻はすべて同じ値でした。
地域によって変わるのは、そのときの月の高さと方角のほうです。
食の最大の時点での月の高度は、東京で35.3度、那覇で27.3度、札幌で33.4度と差がありました。
つまり「自分の街の時刻」を探し直す必要はなく、探すべきは月が見える方角だけでした。
2026年8月28日の部分月食は日本から見られない
「年内にもう一度チャンスがあるのでは」と考える人もいるはずです。
残念ながら、2026年に日本で見られる月食は3月3日の一度だけでした。
国立天文台暦計算室の暦要項には、2026年について「本年は日食が2回、月食が2回あり、そのうち日本では月食が1回見られる」と書かれています。
この年の4つの現象は次のとおりです。
- 2月17日の金環日食(日本では見られない)
- 3月3日の皆既月食(日本全国で見られた)
- 8月13日の皆既日食(日本では見られない)
- 8月28日の部分月食(日本では見られない)
8月28日の部分月食は、最大食分0.935、食の最大が日本時間の13時13分と予報されています(出典: 国立天文台「2026年3月3日 皆既月食 解説資料」表3「近年の月食」)。
日本ではその時刻は昼間で、月は地平線の下にあります。
月食は月そのものが地球の影に入る現象なので、月が空に出ていない地域では観察できません。
国立天文台の月食一覧でも、2026年8月28日の部分月食は「日本で見えない」と分類されています。
世界のどこかでは起こるものの、日本からは追えない月食、という位置づけです。
見逃した人が3月3日の月食を追体験する方法
当日を逃した場合でも、記録から追体験する道は残っています。
公的機関が配信・公開した映像や画像を当たるのが確実です。
当日の様子をたどる手がかりを挙げます。
- 国立天文台は3月3日の午後6時30分から午後9時15分まで、三鷹キャンパスから皆既月食のライブ配信を実施(配信先はYouTubeとニコニコ生放送)
- 国立天文台のFlickrには皆既月食のアルバムがあり、過去の皆既月食の画像をまとめて参照できる
- 日本公開天文台協会のページからは、全国の公開天文台・科学館の観望会とライブ配信の一覧をたどれる
- 月食のしくみを解説した動画「それでも月食が起こるわけ」も、国立天文台が公開中
ライブ配信は当日限りの企画のため、アーカイブが残っているかどうかは配信元の運用によります。
編集部の確認時点では、配信ページと配信先の案内は公開されていました。
映像を探すときは、日付と時刻を手がかりにすると目的の場面へたどり着きやすくなります。
20時04分から21時03分までが皆既食、20時33.7分が食の最大です。
この1時間弱が、月がもっとも赤黒く見えていた時間帯でした。



見逃したからって、がっかりしなくていいんだ。記録を追いかけるところから始めた人ほど、次の本番でよく見えるようになるんだよ。
次に日本で見られる皆既月食は2029年1月1日
ここからが、この記事でいちばん押さえておきたい情報です。
次のチャンスの日付を、先に手帳へ書き込んでしまいましょう。
国立天文台は、日本全国で見られる次回の皆既月食を2029年1月1日としています。
しかも、時間帯がかなり印象的です。
国立天文台の解説ページには「年が明けるとすぐに(0時7分)月が欠け始める」と書かれています。
元日になった直後から月が欠け始める、という巡り合わせ。
解説資料の表3「近年の月食」には、この月食の最大食分が1.251、食の最大が日本時間の1時52分と記載されています(出典: 国立天文台「2026年3月3日 皆既月食 解説資料」表3「近年の月食」)。
2026年3月3日の最大食分1.156より大きい値です。
食分は月がどれだけ深く地球の影に入り込むかを示す値なので、より影の中心近くを通ることになります。
年明けの深夜という時間帯は、寒さ対策が必要な代わりに、街の明かりが落ち着き空が静かになる時間でもあります。
初日の出を待つ前に、赤い月を見上げる元日。
そのような過ごし方ができるのは、この巡り合わせのときだけです。
各地の月の高度と方角は、国立天文台暦計算室の「月食各地予報」で計算できます。
自分の観察地点を指定すれば、その場所での見え方や各時刻の詳細を事前に調べられます。
その前に2028年7月7日の部分月食が月入帯食として見られる
皆既月食までの3年弱、日本で月食がまったく見られないわけではありません。
その前に一度、部分月食のチャンスがあります。
国立天文台の資料によると、日本全国で見られる次回の月食は2028年7月7日の部分月食です。
同じ表3では、最大食分0.394、食の最大が日本時間の3時20分と記載されています(出典: 国立天文台「2026年3月3日 皆既月食 解説資料」表3「近年の月食」)。
資料には「全国で見られる(一部地域で部分食のまま月の入り)」という注記が添えられています。
この日の各地の高度・方位や詳しい時刻は、暦計算室の「月食各地予報」で観察地点ごとに計算できます。
この「欠けたまま月が沈む」見え方には名前があります。
月食一覧では、2028年7月7日の見え方を「日本で見える(月入帯食)」と表記しています。
用語を整理しておきます。
- 月入帯食は、月が欠けた状態のまま地平線へ沈んでいく見え方
- 月出帯食は、月がすでに欠けた状態で地平線から昇ってくる見え方
- どちらも、月食の途中で月が見えなくなる、あるいは途中から見え始めることを意味する
月入帯食は、地平線に近い低い空で欠けた月を追うことになります。
西の空が開けた場所を選ぶ必要があり、建物や山があると途中で見えなくなります。
逆にいえば、地上の風景と一緒に欠けた月を写せる貴重な機会でもあります。
2030年までに日本で見られる月食の一覧
先の予定をまとめて押さえておきましょう。
国立天文台の月食一覧から、2026年8月以降の行を書き出します。
| 日付 | 種類 | 日本での見え方 |
|---|---|---|
| 2026年8月28日 | 部分月食 | 日本で見えない |
| 2028年1月12日 | 部分月食 | 日本で見えない |
| 2028年7月7日 | 部分月食 | 日本で見える(月入帯食) |
| 2029年1月1日 | 皆既月食 | 日本で見える |
| 2029年6月26日 | 皆既月食 | 日本で見えない |
| 2029年12月21日 | 皆既月食 | 日本で見える(月入帯食) |
| 2030年6月16日 | 部分月食 | 日本で見える(月入帯食) |
この一覧には注意書きが2つあります。
「日付は、食が最大になるときを日本時間で表しています」と「『半影月食』については掲載していません」です。
一覧の対象期間は2010年から2030年までで、2031年以降は載っていません。
表を見ると、2027年の行がありません。
半影月食が掲載対象外のため、この年に本影に月が入る月食(部分月食と皆既月食)が一覧に無い、と考えるのが正確です。
もうひとつ目を引くのが、2029年に皆既月食が3回並んでいる点です。
そのうち日本で見られるのは1月1日と12月21日の2回で、12月21日は月入帯食。
全過程をゆっくり追える皆既月食としては、2029年1月1日が当面の本命になります。
皆既月食が日本で数年に一度しか見られない理由
一覧を眺めると、間隔が数年空くことに気づきます。
これは、いくつもの条件が同時にそろわないと成立しないためです。
必要な条件を分解します。
- そもそも月が地球の本影に入ること(満月のたびには起こらない)
- 月全体が本影に入り、部分食ではなく皆既食まで達すること
- そのタイミングで日本が「月が見えている側」にあること
- 月が地平線より上にあり、途中で沈んだり昇ったりしないこと
国立天文台の解説資料は、月食の見え方をこう説明しています。
皆既食が起これば、月が見えている地域、つまり地球の約半分の地域すべてで観察できます。
日食のように帯状の狭い範囲に限られない代わりに、地球の裏側にあたる地域からは一切見えません。
条件が掛け算になるため、世界で起こる回数と日本で見られる回数には差が生まれます。
一覧の2029年がわかりやすい例です。
皆既月食が3回起こる年でも、日本で全過程を追えるのは1回だけでした。
だからこそ、日付が決まっている現象は先に予定として押さえる価値があります。
天候まではどうにもなりませんが、その日に空を見上げる準備をしているかどうかは自分で決められます。
皆既月食は満月が地球の本影にすっぽり入る現象
ここからは時期に左右されない話です。
仕組みを知っておくと、次に見るときの解像度が変わります。
月食は太陽と地球と月がこの順で一直線に並んだときに起こる
月食は、月が地球の影の中に入る現象です。
国立天文台は「地球にも太陽の光による影があり、太陽とは反対の方向に伸びています」と説明し、この影の中を月が通ることで月が暗くなったり欠けて見えたりする現象を月食と呼んでいます。
影には濃さの違う2種類があります。
太陽の光がほぼさえぎられた濃い部分が本影、その周りを取り囲む薄い部分が半影です。
NASAも同様に、本影を地球の影の内側の部分、半影を影のかすかな外側の部分と説明しています。
日食との違いは、並び順で整理すると混同しません。
- 月食は、太陽・地球・月の順に並び、地球の影に月が入る(起こるのは満月のとき)
- 日食は、太陽・月・地球の順に並び、月が太陽を隠す(起こるのは新月のとき)
影が落ちる相手も違います。
月食では地球の影が月に落ち、日食では月の影が地球に落ちます。
影が落ちる先が広い月面か、狭い地表かという違いが、そのまま見える範囲の広さの違いになっています。
この違いは観察の実務にも効きます。
日食は場所ごとに始まる時刻が変わりますが、月食は月が見えている地域ならどこでも同じ時刻に進行します。
毎月の満月で月食が起きないのは月の軌道が傾いているから
満月は毎月やってきます。
それなのに月食が数年に一度しか巡ってこないのは、月の通り道が傾いているためです。
国立天文台は、太陽の通り道である黄道に対して、月の通り道である白道が傾いていると説明しています。
そのため、ふだんの満月は地球の影の北側や南側にそれたところを通ります。
影の高さを外れて通り過ぎるので、満月であっても欠けません。
NASAは、この傾きを地球の公転面に対して約5度と記しています。
わずか5度に思えますが、地球から月までの距離では十分な「ずれ」になります。
条件を整理すると次のようになります。
- 満月であること(月が地球から見て太陽の反対側にある)
- そのとき月が、白道と黄道の交わる付近を通っていること
- 交点から離れていると、月は影の上か下を素通りする
つまり月食は、満月であることに加えて、月が軌道の交点近くに来るタイミングが重なったときにだけ起こります。
この重なりが数か月から数年おきにしか成立しないため、月食は特別な夜になります。
同じ理由で、日食も毎月の新月では起こりません。
NASAは、この軌道の傾きが毎月の日食と月食を妨げていると説明しています。
半影食と部分食と皆既食は月が影のどこに入るかで決まる
月食にはいくつか種類があります。
違いは、月が影のどこまで入り込むかだけです。
国立天文台の説明に沿って整理します。
| 種類 | 月が入る影 | 見え方 |
|---|---|---|
| 半影月食 | 半影のみ | ほとんど暗くならず、注意深く観察してやっと変化に気づく程度 |
| 部分月食 | 本影に一部 | 月の一部が欠けたように暗くなる |
| 皆既月食 | 本影に全体 | 月全体が本影に入り、赤黒い赤銅色に見える |
半影は太陽の光が一部だけさえぎられた領域なので、月が入っても光は届き続けます。
そのため半影月食は肉眼での変化が乏しく、月食一覧にも掲載されていません。
どこまで入り込んだかを数値で表すのが食分です。
国立天文台は食分を、地球の影で覆われる月の直径の度合いと定義しています。
値が大きいほど月が影の中へ深く入り込んだことを意味し、1.0以上のときに皆既食になります。
2026年3月3日の月食は、食の最大の食分が1.156でした。
1.0をやや上回る値で、月全体が本影に入りきった状態が約1時間続いています。
2026年8月28日の部分月食のほうは最大食分0.935で、1.0に届かないため皆既にはなりません。
食分は「どれくらい赤くなりそうか」を事前に測る目安にもなります。
数字が1.0を大きく超えるほど、月は影の中心近くを通ります。


皆既中の月が赤銅色に見えるのは地球の大気を通った光が届くから
皆既食の月は真っ暗になりません。
国立天文台が「赤銅色(しゃくどういろ)」と呼ぶ、赤黒い色に変わります。
月に届いているのは地球中の夕焼けを集めた光
本影は、太陽の光が地球によって完全にさえぎられた領域です。
それでも月が見えるのは、地球の大気が光の通り道になっているからです。
国立天文台の解説はこうです。
太陽光が大気を通過するとき、波長の短い青い光は空気の分子に散乱されて、大気をほとんど通り抜けられません。
波長の長い赤い光のほうは散乱されにくく、弱められながらも大気を通過します。
そして大気がレンズのような役割を果たし、太陽光が屈折して本影の内側へ入り込みます。
このかすかな赤い光が皆既食中の月面を照らしています。
国立天文台は、これが朝日や夕日が赤く見えるのと同じ理由だと補足しています。
NASAはさらに踏み込んだ言い方をしていて、皆既中の月には「世界中の日の出と日の入りが投影されているかのようだ」と表現しています。
視点を月側に移すと、この現象の面白さがはっきりします。
- 皆既中の月から地球を見ると、地球は太陽を隠す黒い円になる
- その黒い円のふちが、大気を通った光で赤いリングのように光る
- そのリングが、地球の昼と夜の境目、つまり朝焼けと夕焼けの帯にあたる
月を照らしているのは、地球上のどこかで同時に起きている朝焼けと夕焼けの光です。
赤い月を見上げるとき、実は地球の空の色を月面越しに眺めていることになります。



遠くから地球を振り返ると、まわりが細く赤く光って見えるんだ。あの赤が月に届いているんだと思うと、少しくすぐったい気持ちになるよ。この目で、見てきたんだ。
同じ皆既月食でも赤の濃さが毎回変わる
赤くなる、で終わらせるともったいない現象です。
同じ皆既月食でも、色と明るさは毎回違います。
国立天文台は、皆既食中の月の色はいつも同じではないと明記しています。
大気中のちりが少ないと大気を通り抜ける光の量が多くなり、明るいオレンジ色に見えます。
逆にちりが多いと通り抜ける光が減り、黒っぽく見えます。
大規模な火山噴火が起き、火山灰や火山ガスが成層圏まで達した場合には、黒っぽい皆既食が観察されています。
NASAの資料はこの点を実例で裏づけています。
1963年のアグン山と1982年のエルチチョンの噴火は、大量のガスと灰を成層圏に送り込み、その後数年にわたって非常に暗い月食が続いたと記録されています(出典: NASA「Visual Appearance of Lunar Eclipses」)。
同じ資料には、1991年のピナトゥボ噴火の1年半後にあたる1992年12月9日の皆既月食が、月面が鈍い灰色で肉眼では見つけにくいほど暗かったという記述もあります。
この色の違いを記録する物差しが、20世紀初頭にフランスの天文学者ダンジョンが用いた尺度です。
国立天文台の解説資料には、次の5段階の表が掲載されています(出典: 国立天文台「2026年3月3日 皆既月食 解説資料」表4「ダンジョンの尺度(皆既食中の月の色)」)。
| 尺度 | 月面の様子 | 簡略的な表現 |
|---|---|---|
| 0 | 非常に暗い食。月のとりわけ中心部は、ほぼ見えない | 黒 |
| 1 | 灰色か褐色がかった暗い食。月の細部を判別するのは難しい | 灰色またはこげ茶色 |
| 2 | 赤もしくは赤茶けた暗い食。たいていの場合、影の中心に一つの非常に暗い斑点を伴う。外縁部は非常に明るい | 暗い赤 |
| 3 | 赤いレンガ色の食。影は、多くの場合、非常に明るいグレーもしくは黄色の部位によって縁取りされている | 明るい赤 |
| 4 | 赤銅色かオレンジ色の非常に明るい食。外縁部は青みがかってたいへん明るい | オレンジ |
同じ尺度はNASAの月食解説にも英語で掲載されており、L=0からL=4の5段階という構成は共通です。
「簡略的な表現」の列については、過去に国立天文台が実施した皆既月食の観察キャンペーンで使用したものだと解説資料に注記があります。
実際、国立天文台の「皆既月食を観察しよう 2018」の色に関するページでも、同じ言い換えを添えた表が公開されています。
次に皆既月食を見るときは、この尺度で何番だったかを書き残しておくと、その回だけの記録になります。
欠け際が青く見えるターコイズフリンジという現象
赤の話には続きがあります。
影のふち、つまり欠け際が青緑色に見えることがあり、日本ではターコイズフリンジと呼ばれることがあります。
原因は、大気の上の方にあるオゾンです。
NOIRLabは2022年11月8日の月食の連続写真について、影の左右に見える青い縁を「ozone fringe」と説明し、地球の成層圏上部でのオゾンによる吸収が理由だとしています。
赤い光を吸収して青い光を通すオゾンの性質が、赤い本影の縁に青いふちどりを作ります。
同じ写真の解説には、この月食の深い赤色について、2022年のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火による灰の名残と考えられる、とも書かれています。
ひとつの月食の写真の中に、成層圏のオゾンと火山噴出物という2つの痕跡が写り込んでいたことになります。
見どころを整理します。
- 本影の中心に近い部分は、大気を通った赤い光に照らされて赤黒くなる
- 本影の外周付近は、オゾンを通った光の影響で青緑がかって見えることがある
- 部分食から皆既食へ移る時間帯は、この赤と青の境目がもっとも観察しやすい
NASAの資料でも、ダンジョンの尺度4の説明として「外縁部は青みがかってたいへん明るい」という記述が確認できます。
赤と青が同時に写る月は、写真好きにとって次の目標にしやすい題材です。


次の皆既月食に向けた観察と撮影の準備は今から始められる
次の皆既月食は2029年1月1日です。
当日の持ち物より、それまでに慣れておくことのほうが効きます。
肉眼と双眼鏡で見える色はここまで変わる
特別な機材は要りません。
国立天文台は解説資料の中で、月食を肉眼で十分に観察できる天文現象だと説明しています(出典: 国立天文台「2026年3月3日 皆既月食 解説資料」6-3「月食の観察方法は?」)。
太陽を見る日食とは事情が違います。
月食で見ているのは、地球の影に入って暗くなった月です。
減光用の道具を用意しなくても、そのまま見上げて観察できます。
そのうえで、道具があると体験が変わります。
同じ解説資料と、基礎知識のページ「月食の観察のしかた」をもとに整理します。
- 肉眼でも、月が本影に入って少しずつ欠けていく様子は確かめられる
- 双眼鏡や望遠鏡で拡大すると、地球の影が月面のクレーターや海を横切っていく様子を追える
- 皆既が近づく頃には、光を集める分だけ月面の色や明るさの変化が鮮明になる
- 手持ちではなく三脚に固定すると手ぶれが消え、長く快適に観察できる
ダンジョンの尺度は肉眼での観察が基本です。
双眼鏡や望遠鏡を使うと、やや明るく感じたり、逆に暗く感じたりすると国立天文台は注意を添えています。
色を記録するときは、どの方法で見たのかも一緒に書き残しておくと後で比べられます。
道具を買い足すより先に、手元にある双眼鏡で満月を眺めてみるところから始めるのが近道です。
スマホでも露出を下げれば赤い月は写る
写真は写せます。
ただし自動任せだと、たいてい思った絵になりません。
国立天文台の解説資料は、月食の撮影で注意すべき点を5つ挙げています(出典: 国立天文台「2026年3月3日 皆既月食 解説資料」6-4「月食は写真に写せる?」)。
- ストロボをオフに設定する(近くに浮かぶほこりが光を反射して写り込む場合がある)
- ピントを合わせる(自動ピントは暗い背景の中の明るい月が苦手なので、手動なら無限遠に合わせる)
- なるべく望遠で撮る(レンズの視野が広いと月がたいへん小さく写る)
- 露出を低めに調整する(自動だと夜空に明るさが合い、月が露出オーバーになる)
- カメラを三脚などに固定する(望遠になるほど手ぶれが拡大される)
とくに効くのが露出です。
背景の夜空に明るさを合わせられると、月は強い光とハレーションに埋もれ、欠けた形も表面の模様も写りません。
スマートフォンでも露出補正を下げれば、模様のある月が写るようになります。
皆既に近づくと状況が反転します。
月の光っている部分が少なくなるにつれ、今度は月が暗くなって写りづらくなります。
国立天文台も、その都度露出を調整するとよいと書いています。
明るい部分食のときと、赤くなった皆既のときで、設定を変える前提で臨むのが正解です。
満月の夜に予行演習しておくと本番で慌てない
次の皆既月食までは3年近くあります。
この長い間隔は、練習時間がたっぷりあるということでもあります。
同じ解説資料には、月食の当日になる前に実際の月と当日使うカメラでテストを行い、適切な設定や手順を把握しておくとよい、と書かれています。
満月はおよそ1か月に一度めぐってきます。
本番と同じ被写体で、何度でもリハーサルができます。
予行演習でやっておきたいことを挙げます。
- 手持ちのカメラやスマートフォンで満月を撮り、露出補正の下げ幅を体で覚える
- 望遠にしたときの手ぶれを確認し、三脚や固定方法を決めておく
- 双眼鏡で月面のクレーターや海を見つけ、影が横切る場所の見当をつけておく
- 自宅や近所から、月がどの方角のどの高さに見えるかを確かめておく
観察地点選びも先に済ませておけます。
国立天文台暦計算室の「こよみの計算」では、各地の月の出入り時刻を調べられます。
月入帯食が起こる回に備えるなら、西の空がどこまで開けているかが重要になります。
準備が終わっている人は、当日の空だけを見ていられます。
慌てて設定をいじるか、赤い月をじっと眺めていられるか。
その差は、その日までに何回満月を撮ったかで決まります。



待つのはぼくの得意分野なんだ。待っている時間に何をしておくかで、その一瞬の見え方が変わるんだよ。


よくある質問
まとめ 2026年の皆既月食を振り返り2029年の次回に備える
2026年の皆既月食は3月3日の夜に起こり、すでに終わりました。
18時49.8分に欠け始め、20時04.0分から21時03.4分まで皆既食が続き、22時17.6分に部分食が終わっています。
8月28日の部分月食は日本から見られないため、この年のチャンスは3月3日の一度だけでした。
次に日本全国で皆既月食が見られるのは2029年1月1日で、年が明けた0時7分に月が欠け始めます。
その前に2028年7月7日の部分月食があります。
赤銅色の正体は、地球の大気を通り抜けた赤い光でした。
色の濃さは大気の状態で毎回変わり、欠け際にはオゾンによる青い縁が現れることもあります。
次に赤い月を見上げるまでの時間は、満月を相手に練習するための時間です。
出典
- 国立天文台「皆既月食(2026年3月)」
- 国立天文台「2026年3月3日 皆既月食 解説資料」(2026年2月16日)
- 国立天文台「月食一覧」
- 国立天文台「月食とは」
- 国立天文台「月食の観察のしかた」
- 国立天文台「皆既月食を観察しよう 2018」皆既食中の色に注目しよう!
- 国立天文台暦計算室「令和8年(2026)暦要項 日食・月食など」
- 国立天文台暦計算室「こよみの計算」
- 国立天文台暦計算室「月食各地予報」
- 国立天文台「【国立天文台ライブ配信】ひなまつりに皆既月食天文学者と楽しもう」
- 国立天文台 Flickr 皆既月食アルバム
- 日本公開天文台協会「2026年3月3日皆既月食:観望会&中継まとめ」
- NASA Science「The Moon & Eclipses」
- NASA「Visual Appearance of Lunar Eclipses」(Five Millennium Canon of Lunar Eclipses, Espenak and Meeus に基づく)
- NOIRLab「Lunar Eclipse from Start to Finish」(Credit: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA/P. Horálek (Institute of Physics in Opava))