- 「金環日食って、皆既日食と何が違うんだろう?」
- 「あのリング、日本ではいつ見られるの?」
- 「暗くなるなら、そのまま見上げても平気なのかな」
答えを先に書きます。
金環日食は、月が太陽を隠しきれず、太陽の縁がリング状に残る日食です。
リングになるか完全に隠れるかを決めているのは、そのときの月と地球の距離。
日本で次に見られるのは2030年6月1日、北海道の広い範囲です。
そしてリング状に光が残り続けるため、肉眼で直接見るのは皆既日食よりむしろ危険です。
この記事は、宇宙の科学と宇宙産業の情報を一次情報と整合させて発信するASTROWORKS編集部がまとめています。
この記事で分かることは、次の4点です。
- 金環日食と皆既日食・部分日食・金環皆既日食の違い
- リングが生まれる3つの条件
- 2030年6月1日に北海道で見られる金環日食の時刻と範囲
- 目を傷めずに観察する方法と、絶対にやってはいけない方法
読み終える頃には、次のリングをどこでどう待つかを考える材料がそろいます。
ほしまるぼくは40年かけて太陽系をまわってきたけれど、あのリングは地球にいる君たちだけの特等席なんだよ。仕組みが分かると、待つ時間もぐっと楽しくなるんだ。


金環日食は月が太陽を隠しきれず縁がリング状に残る日食
日食は、太陽と月と地球がほぼ一直線に並んだときに起こります。
並び方が同じでも、月の見かけの大きさ次第で結果は変わります。
太陽と月の見かけの大きさがほぼ同じという偶然が日食の姿を決める
日食の見え方を決めているのは、地球から見た太陽と月の「見かけの大きさ」です。
太陽の直径は月よりはるかに大きく、実物どうしを並べれば比較になりません。
それでも空では、ほぼ同じ大きさの円に見えます。
太陽は月のおよそ400倍の大きさを持ちながら、距離もおよそ400倍遠いためです(出典: 国立天文台 暦計算室 暦Wiki「日食/種類」)。
大きさの比と距離の比が、ほぼ同じ数字で打ち消し合っています。
カメラのレンズで考えると感覚がつかみやすくなります。
被写体が2倍大きくても、2倍離れれば画面に写る大きさは変わりません。
太陽と月のあいだでは、これが400倍という規模で起きています。
この偶然がなければ、日食という現象の姿そのものが違っていました。
月が今よりずっと大きく見えていれば、太陽はいつも完全に隠れて皆既日食だけになります。
逆にずっと小さく見えていれば、リングが残る金環日食しか起こりません。
両方が見られるのは、ふたつの円の大きさが競り合うほど近いからです。
国立天文台は、月のほうがわずかに大きいときが皆既日食、わずかに小さいときが金環日食になると説明しています(出典: 国立天文台 ギャラリー「日食とは」)。
この「わずか」という言葉が、そのまま金環日食の正体です。
月が地球から遠いときは金環、近いときは皆既になる
では、その「わずかな差」は何が決めているのでしょうか。
答えは、月と地球の距離です。
月の公転軌道は完全な円ではなく、わずかにつぶれた楕円を描いています。
そのため地球と月の距離は一定ではなく、近づいたり遠ざかったりをくり返します。
見かけの大きさは距離に反比例するので、遠いときの月は小さく、近いときの月は大きく見えます。
太陽と月と地球が一直線に並ぶタイミングで、月がたまたま遠い側にいたとします。
小さく見える月は、太陽の円を覆いきれません。
はみ出した太陽の縁が、細い光の輪として残ります。
これが金環日食です。
逆に月が近い側にいれば、太陽はすっぽり隠れて皆既日食になります。
同じ「一直線」でも、月がどこにいたかで結果が変わります。
制御系の設計でいえば、必要な条件はすべて満たしているのに、パラメータがひとつだけ範囲の外にある状況に近いかもしれません。
厳密には異なりますが、イメージとしてはそのくらいの紙一重です。
だから金環日食と皆既日食は、別種の現象ではありません。
同じ仕組みから生まれた、距離違いのふたつの結果です。
リングが見えるかどうかは、その日の月がどれだけ遠くにいたかで決まります。



月の軌道はきれいな円じゃなくて、ちょっとだけ伸びた輪っかなんだ。その伸びぐあいが、地上のリングを作っているんだよ。
部分日食・皆既日食・金環皆既日食との違いを整理する
国立天文台の日食一覧では、日食を4つの種類に分けて記載しています(出典: 国立天文台「日食一覧(2010年から2035年)」)。
違いを一覧にすると、次のようになります。
| 種類 | 太陽の見え方 | 決め手 |
|---|---|---|
| 皆既日食 | 太陽が完全に隠れ、コロナが現れる | 月の見かけの大きさが太陽より大きい |
| 金環日食 | 太陽の縁がリング状に残る | 月の見かけの大きさが太陽より小さい |
| 部分日食 | 太陽の一部が欠ける | 皆既や金環になる帯の外側から見ている |
| 金環皆既日食 | 場所によって金環食と皆既食が入れ替わる | 両者の境目にあたる条件 |
上の3つは、比べる相手がはっきりしています。
月と太陽、どちらの円が大きいか。
その一点だけで、皆既か金環かが決まります。
分かりにくいのは4つ目です。
国立天文台の用語解説では、金環皆既日食は位置関係により、同じ日食でも金環食と皆既食の両方になる特殊なケースとして説明されています(出典: 国立天文台 暦計算室 こよみ用語解説「日食」)。
つまり、ひとつの日食が進んでいくあいだに、ある地域では太陽が完全に隠れ、別の地域ではリングが残ります。
めったに起こらない種類ですが、記録は残っています。
国立天文台の日食一覧に金環皆既日食として載っているのは、2013年11月3日と2023年4月20日のふたつです。
世界全体を見渡しても、そうそう現れる種類ではありません。
リングと皆既の境目が、それだけ狭いということでもあります。
部分日食は「格下の日食」ではありません。
2030年の金環日食でも、金環帯の外側にいる人は部分日食として同じ現象を見ることになります。
自分がどこに立っているかで、見える姿が変わるだけです。


金環日食が成立する3つの条件
リングが空に現れるまでには、順に満たされるべき条件が3つあります。
ひとつでも欠けると、金環日食にはなりません。
条件1 月が太陽と地球のあいだに来る新月であること
まず、月が太陽と地球のあいだに入り込む必要があります。
日食は、地球から見て太陽と月がほぼ一直線に並んだときに起こる現象です(出典: 国立天文台「日食とは」)。
この並びが成立するのは、暦のうえで新月にあたる日だけです。
月は自ら光を出さず、太陽の光を反射して輝いています。
地球から見て太陽と同じ方向に月があるとき、こちらを向いている面には光が当たりません。
だから新月の夜、月は見えなくなります。
逆にいえば、月が「見えない」ということは、月が太陽の方向にいるということです。
日食が起こるのは、この配置のときに限られます。
満月のときに月は地球をはさんで太陽の反対側にいるので、太陽を隠しようがありません。
満月側で起こるのは月食のほうです。
ただし、ここで話は終わりません。
新月は約1か月に1回めぐってきます。
それなら日食も毎月起こるはずですが、実際にはそうなりません。
国立天文台の日食一覧で、世界のどこかで起こる日食がすべて掲載されている2030年までの並びを追うと、日食が起こるのは年に2回から3回です(出典: 国立天文台「日食一覧(2010年から2035年)」)。
新月の回数と比べれば、4分の1にも届きません。
新月であることは必要ですが、それだけでは足りません。
何が足りないのかは、次の条件が答えになります。
条件2 月の通り道が太陽の通り道と交わる位置にあること
毎回の新月で日食が起こらない理由は、月の通り道が少し傾いているからです。
空のうえで太陽が1年かけて動いていく道すじを黄道、月が動いていく道すじを白道と呼びます。
このふたつは重なっておらず、白道は黄道に対しておよそ5.1度傾いています(出典: 国立天文台 暦計算室 暦Wiki「日食/条件」)。
わずかな角度に思えますが、空に見える太陽や月の円はそれよりずっと小さく、この傾きは両者をすれ違わせるのに十分な差です。
そのため多くの新月では、月は太陽の少し上、あるいは少し下を通り過ぎます。
同じ方向にいるように見えて、実際にはすれ違っているだけ。
影は地球に届かず、何も起こらないまま終わります。
日食が成立するのは、白道と黄道が交わる点、つまり交点の近くで新月になったときです。
国立天文台の暦Wikiでも、白道の交点付近で朔(新月)となるときに日食が起こると説明されています。
交点の近くに太陽が来るのは、およそ半年に1回。
日食が年に2回から3回という頻度に落ち着くのは、この周期が効いているからです。
3次元の軌道を平面の図で考えると、この傾きは見落としやすいところです。
太陽・月・地球の並びは、上から見た図では一直線でも、横から見ると縦にずれていることがあります。
リングを見るには、この縦方向のずれまで小さくなければなりません。
条件3 月の見かけの大きさが太陽より小さいこと
3つ目が、金環日食を金環日食にしている条件です。
条件1と条件2が満たされれば、地球のどこかで日食は起こります。
ただし、それが皆既日食になるか金環日食になるかは、まだ決まっていません。
最後に効いてくるのが、そのときの月が地球からどれだけ離れているかです。
月が遠い側にいて、見かけの大きさが太陽より小さければ、太陽は隠しきれずに縁が残ります。
リングの完成です。
月が近い側にいて太陽より大きく見えれば、同じ配置でも太陽は完全に覆われ、皆既日食になります。
ここが、3つの条件のなかでいちばん誤解されやすい点かもしれません。
金環日食は「日食が中途半端に起きた状態」ではありません。
条件1も条件2も皆既日食とまったく同じように満たされていて、最後の一項目だけが逆に振れた結果です。
3つを並べ直すと、金環日食の輪郭がはっきりします。
月が太陽と地球のあいだに来ること、その位置が白道と黄道の交点の近くであること、そして、そのとき月が遠い側にいること。
この3つがそろった日に、空に光の輪が残ります。



3つ目だけがリングの担当なんだ。1つ目と2つ目は、皆既日食と共通の入場券みたいなものだよ。


金環日食のときに空と地上で何が起きるか
同じ日食でも、金環日食と皆既日食では体験がまるで違います。
当日に何を期待できるのか、先に押さえておきましょう。
リングが残るため皆既日食ほど暗くはならない
金環日食の最中も、太陽の縁は光り続けています。
細い輪であっても、そこから届く光の強さは日常の照明とは桁が違います。
そのため、真昼が夜になるような暗転は起こりません。
皆既日食では事情が変わります。
太陽が完全に隠れると、ふだん見えない太陽の外層大気が姿を現します。
国立天文台は、月の本影(太陽の光が完全にさえぎられる、影の中心部分)が地球に落ちるときに「真珠色に輝く太陽コロナが現れます」と説明しています(出典: 国立天文台 ギャラリー「日食とは」)。
コロナは太陽本体に比べてはるかに淡いため、本体が1点でも見えていれば埋もれてしまいます。
つまり金環日食では、コロナは見られません。
明るい星が昼間に現れる、あの皆既日食特有の光景も期待できません。
リングが残るということは、太陽が光り続けているということだからです。
期待の方向を変えると、金環日食の面白さが見えてきます。
太陽が細い輪になっても、空はまだ明るいままです。
その事実そのものが、太陽の光の強さを体感するきっかけになります。
太陽の大部分が隠れてもなお昼は昼のまま。
ふだん意識することのない太陽のスケールに目を向ける機会になります。
この「明るいまま」という性質は、そのまま危険につながります。
暗いから見上げても平気だろうという判断が通用しません。
安全な観察方法は、この記事の後半でまとめています。
木もれ日がリングの形になるピンホール現象
空を見上げなくても、金環日食は足元で確認できます。
国立天文台の観察方法の解説には、次のような記述があります。
「厚紙などに小さな穴を開けたものや、麦わら帽子や木漏れ日のように、細かい隙間があるものの影の中に映った太陽の光が、欠けた太陽の形になります」(出典: 国立天文台「観察のしかた」)。
これはピンホールカメラと同じ原理です。
小さな穴を通った光は広がらずに直進し、反対側の面に太陽そのものの像を作ります。
穴の形が丸でも四角でも、映るのは太陽の形。
ふだん木もれ日が丸く見えるのは、太陽が丸いからです。
日食が進むと、この像がそのまま欠けていきます。
金環日食の最大の頃には、地面に無数のリングが並びます。
木の葉のすきまの数だけ、太陽の姿がコピーされます。
この方法の利点は、太陽をいっさい直視しない点にあります。
見るのは地面や紙の上に映った像だけ。
子どもと一緒でも、機材を用意していなくても、その場で観察に切り替えられます。
街なかであれば、街路樹の下や公園の木陰を探しておくと確実です。
麦わら帽子や、キッチンで使う穴あきのおたまでも同じ像が作れます。
当日の空が薄曇りでも、太陽の輪郭が分かる程度の明るさがあれば像は現れます。


次に金環日食が見られるのはいつか
金環日食は、地球のどこかでは数年に一度起きています。
問題は、その帯が自分の立てる場所を通るかどうかです。
日本で次に見られるのは2030年6月1日の北海道
国立天文台の日食一覧には、2030年6月1日の日食が「金環日食」として、見られる地域は「日本、ユーラシア大陸北部など」と記載されています(出典: 国立天文台「日食一覧(2010年から2035年)」)。
これが、日本で次に見られる金環日食です。
リング状に見える範囲は北海道に限られます。
なよろ市立天文台きたすばるの解説によれば、「礼文島と網走市を結んだラインと渡島半島を横切るラインの間では金環食となります。そのラインの外側では部分食となります」(出典: なよろ市立天文台きたすばる「2030年北海道金環日食」)。
北海道のかなり広い範囲が金環帯に入る計算です。
同じ資料に載っている主要地点の予報時刻は、次のとおりです。
| 地点 | 金環食開始 | 金環食終了 |
|---|---|---|
| 名寄 | 16時53分 | 16時56分 |
| 旭川 | 16時54分 | 16時57分 |
| 札幌 | 16時54分 | 16時58分 |
名寄では部分食が15時40分に始まり、食の最大(太陽の欠けた割合が最大になる瞬間)が16時55分、部分食の終わりが18時01分と予報されています(出典: なよろ市立天文台きたすばる「2030年北海道金環日食」)。
リングが見えているのは、そのうちの3分ほど。
2時間以上かけて進む現象のなかで、頂点はごく短い時間に集中します。
夕方の時間帯である点にも注意が必要です。
太陽の高度が低いので、西から北西の空が開けた場所を選んでおきたいところです。
自分がいる場所の正確な時刻は、国立天文台 暦計算室の日食各地予報で確認できます(出典: 国立天文台 暦計算室「日食各地予報」)。
日本で前回見られたのは2012年5月21日だった
日本で前回の金環日食が起きたのは2012年5月21日です。
国立天文台の日食一覧には、この日の日食が「金環日食」、見られる地域が「中国、日本、北太平洋、アメリカなど」と記載されています。
朝の通勤時間帯に重なり、各地で観測会が開かれた日食でした。
2012年から2030年まで、18年の間隔があきます。
さらに地域を絞ると、間隔はもっと長くなります。
なよろ市立天文台きたすばるは、名寄で金環日食が見られるのは「1872年(明治5年)6月6日以来、およそ158年ぶり」と説明しています。
これは名寄という地点で数えた間隔です。
その先の予定も分かっています。
同じ資料によれば、次に日本で金環日食が見られるのは2041年10月25日で、場所は本州中部。
皆既日食のほうは2035年9月2日に、北陸から北関東で見られます。
そして名寄で次に金環日食が見られるのは、2118年3月22日です。
数字を並べると、機会の少なさが分かります。
2030年を逃した場合、日本の金環日食は11年後まで待つことになります。
名寄に限れば、次は約88年後。
「次の機会」という言葉が、人の一生とほぼ同じ長さを指す現象です。
世界では数年に一度どこかで金環日食が起きている
日本で見られない年でも、地球のどこかでは金環日食が起きています。
国立天文台の日食一覧から、2030年より前の金環日食を抜き出すと次のようになります。
| 日付 | 見られる地域 |
|---|---|
| 2027年2月7日 | 南太平洋、南米、南大西洋など |
| 2028年1月27日 | 南米北部、大西洋など |
いずれも南米が中心です。
金環帯は幅の狭い帯として地表を走るため、同じ日食でも国が変わればただの部分日食になります。
一覧を眺めると、金環日食が南極や北極付近だけで見られる年もあると分かります。
海外まで足を運ぶなら、時刻と場所の精度が結果を分けます。
日付だけを頼りに現地へ行っても、帯から数十キロ外れればリングは閉じません。
帯の中心線と当日の天候、そのふたつを事前に押さえておくのが前提になります。
こうした一覧が何十年も先まで公開されていること自体、少し不思議に思えるかもしれません。
なぜ遠い未来の日食を、日付どころか分単位で予報できるのか。
その理由は、日食が持っている規則性にあります。
同じような日食が繰り返されるサロス周期という規則性
日食の予報が遠い未来まで出せるのは、日食に繰り返しのパターンがあるからです。
古代から知られてきた、サロス周期と呼ばれる規則性です。
約18年11日で似た日食が戻ってくる仕組み
なよろ市立天文台きたすばるは、サロス周期を次のように説明しています。
「ある日食からおよそ6585.3日(≒18年と約11日)後に太陽と月は交点から同じくらい離れた場所で再び出会い、同じような食を起こします」(出典: なよろ市立天文台きたすばる「2030年北海道金環日食」)。
この日数には根拠があります。
国立天文台の暦Wikiは、サロス周期を朔望月223回と交点月242回がほぼ等しくなる周期として説明しており、その長さはおよそ6585.3日、年数にすると18年と約11日になると記しています(出典: 国立天文台 暦計算室 暦Wiki「日食/周期」)。
朔望月は新月から次の新月までの周期、交点月は月が白道と黄道の交点を通ってから次に同じ交点へ戻るまでの周期です。
つまり、条件1を決める周期と条件2を決める周期が、223回と242回でほぼ同じ日数に着地します。
新月であることと、交点の近くにいること。
このふたつが同時にリセットされるので、似た日食がもう一度起こります。
信号処理で複数の周期が重なるタイミングを探す作業に近いかもしれません。
厳密には異なりますが、周期の最小公倍数に近いところを探している、というイメージです。
ただし、この周期は割り切れません。
6585.3日という端数の0.3日は、時間にしておよそ8時間。
そのあいだに地球は自転を続けるため、同じ日食が同じ場所には戻ってきません。
暦Wikiは、この0.3日の端数があるために1サロスごとに地球上の位置が経度で約120度ずつずれ、3サロス、つまり約54年でほぼ元に戻ると説明しています。
2030年の金環日食が属するサロス系列128番
抽象的な周期の話を、2030年の日食に当てはめてみます。
なよろ市立天文台きたすばるは、2012年5月21日の日食と2030年6月1日の日食が同じサロス系列(128番)で、同じような食を起こすとされていると説明しています(出典: なよろ市立天文台きたすばる「2030年北海道金環日食」)。
サロス系列とは、サロス周期でつながった日食のひとまとまりに番号を振ったものです。
同じ番号の日食は、似た幾何配置から生まれた兄弟のような関係にあります。
ここで、先ほどの18年11日という数字が効いてきます。
2030年6月1日から18年と11日ほどさかのぼると、2012年5月に行き着きます。
日本で前回の金環日食が起きた日と重なる位置です。
経度がずれていく性質のとおり、同じ系列であっても金環帯が通る場所は毎回変わります。
なお、サロス周期で戻ってくるのは「同じ日食」ではありません。
戻ってくるのは、似た配置から生まれた似た日食です。
条件2の交点からの距離もわずかにずれていくため、系列のなかで日食の姿は少しずつ変化していきます。
系列の開始年や終了年、系列内で何回目にあたるかといった詳細は、今回参照した資料では確認できていません。
確認できたのは、2030年の日食が128番に属するという事実までです。



ぼくの旅は40年で一周りだけど、空の時計は18年で一区切りなんだ。どっちもゆっくりだけど、ちゃんと同じところへ帰ってくるんだよ。


金環日食を安全に観察する方法とやってはいけないこと
金環日食は、皆既日食ほど暗くなりません。
太陽の光が残り続けるぶん、油断すると目を傷めます。
日食グラスや遮光板は正しく使えば安全に太陽を見られる
国立天文台は、日食専用のグラスや遮光板を正しく使えば安全に太陽を観察できると説明しています(出典: 国立天文台「観察のしかた」)。
リングを自分の目で見たいなら、これが基本の装備になります。
ポイントは「正しく使う」という但し書きです。
使う前に、必ず明るいほうへかざして傷や穴、破れがないかを確認してください。
太陽をさえぎる層に1か所でも欠けがあれば、そこから強い光がそのまま入ります。
古いものを引き出しから出してきた場合は、経年で劣化していないかも見ておく必要があります。
見続ける時間にも注意します。
安全な器具であっても、長時間続けて太陽を見つめるのは避けてください。
数十秒見たら目を休める、という間隔で使うほうが安心です。
そして、代用品は効きません。
国立天文台は「一般のサングラスなどは、どんなに濃い色のものでも太陽の強い光や熱を通してしまいます」と明記しています。
サングラスが減らしているのは、主にまぶしさとして感じる範囲の光です。
目を傷める成分がそのまま通り抜けるため、色の濃さは安全性の指標になりません。
日食用として売られている製品かどうか。
判断はその一点で行い、迷うなら次に紹介する間接的な方法に切り替えてください。
ピンホールや木もれ日、太陽投影板なら直接見ずに観察できる
太陽をいっさい直視しない方法もあります。
国立天文台の観察方法の解説では、次のような手段が紹介されています。
- 厚紙などに小さな穴を開けたものの影に映る太陽の像
- 麦わら帽子の細かい隙間を通った光が作る像
- 木もれ日の影のなかに現れる、欠けた太陽の形
- 望遠鏡に取り付けた太陽投影板に太陽を投影する方法
いずれも、見るのは映った像だけです。
目に太陽の光が直接入らないため、器具の劣化を心配する必要もありません。
太陽投影板について、国立天文台は、望遠鏡に取り付けた板へ太陽を投影すれば大勢が一度に日食のようすを観察できると説明しています。
観測会や学校行事のように、人数が多い場面で強みが出る方法です。
手軽さで選ぶなら、厚紙に開けた小さな穴が最短ルートです。
穴の大きさは、数ミリ程度から試してみてください。
小さいほど像は鮮明になり、そのぶん暗くなります。
穴と投影面の距離を離すと像は大きくなるので、穴を開けた紙を持つ人と白い紙を持つ人で分担すると調整しやすくなります。
当日いきなり試すのは避けたほうが確実です。
日食でない晴れた日に一度作っておけば、丸い太陽の像が映ることを確かめられます。
本番では、その丸が欠けてリングに変わる過程を追うだけで済みます。
下敷きやすすを付けたガラス、望遠鏡ののぞき込みは危険
やってはいけない方法も、はっきり示されています。
国立天文台の観察方法の解説が挙げているのは、次のようなものです。
- 肉眼で直接見る(数秒でも危険)
- 望遠鏡や双眼鏡で太陽を見る
- 色つきの下敷きやCDを通して見る
- フィルムの切れ端を使う
- すすを付けたガラス板を使う
- サングラスやゴーグルを使う
下敷きやフィルム、すすを付けたガラスは、どれも「まぶしさが減った」という感覚だけを作ります。
まぶしさが減れば、人は長く見つめてしまいます。
そのあいだ、目を傷める光は入り続けます。
国立天文台は、これらの方法について目を痛めるので絶対にやってはいけないと明記しています。
望遠鏡と双眼鏡は、さらに危険度が上がります。
国立天文台は「望遠鏡や双眼鏡は、太陽の光や熱を集めて強くするため、肉眼で太陽を見る以上に危険」と説明しています。
光を集めるための道具なので、太陽に向ければ集光装置として働きます。
もっとも危険なのが、このふたつを組み合わせる使い方です。
日食グラスをかけたまま望遠鏡や双眼鏡をのぞく行為は、絶対に避けてください。
グラスは肉眼で見る前提の減光量しか持っておらず、集められた光には耐えられません。
安全な器具を使っているという安心感がある状態で事故が起きるため、被害が大きくなります。
子どもと一緒に観察するなら、望遠鏡や双眼鏡は最初から手の届かない場所に置いておくのがいちばん確実です。



ぼくのカメラも、太陽を正面から見すぎて何度もヒヤッとしたんだ。目はひとつしかないから、リングは道具ごしに楽しんでね。


金環日食についてよくある質問
まとめ 金環日食は月の距離が決めるリングの現象
金環日食は、月が太陽を隠しきれずに縁がリング状に残る日食です。
成立には3つの条件がそろう必要があります。
- 月が太陽と地球のあいだに来る新月であること
- その位置が白道と黄道の交点付近であること
- そのとき月が地球から遠い側にいること
最後のひとつだけが、皆既日食との分かれ目です。
日本で次に見られるのは2030年6月1日、北海道の広い範囲。
リングが残るのは3分ほどで、時間帯は夕方です。
そして観察には、日食専用のグラスか、太陽を直視しない方法が欠かせません。
まだ数年あります。
その間に、木もれ日で太陽の像を映す練習をしておくのも手です。
晴れた日に一度試しておけば、当日は欠けていく太陽をそのまま追えます。