オリオン座は、冬の夜に南の空を見上げると見つかります。
目印は、同じくらいの明るさの星が3つ、短い間隔で一直線に並んだ「三つ星」です。
その三つ星を上下から4つの明るい星が囲み、砂時計のような形をつくっています。
四隅の星のうち、左上の赤い星がベテルギウス、右下の青白い星がリゲルです。
色が違うのは星の表面の温度が違うためで、2つはまったく性格の異なる星です。
三つ星の下には、新しい星が生まれている「オリオン大星雲」もあります。
オリオン座は冬の夜の南の空に見える
オリオン座がいちばん見やすいのは冬です。
国立天文台の星空情報では、2月は日の入りから1時間半ほどたって空が暗くなるころ、オリオン座が南の空の高いところに見えると紹介されています(出典:国立天文台「オリオン大星雲を観察する好機(2023年2月)」)。
オリオン座のベテルギウスを含む「冬の大三角」は、2月末ごろの20時ごろに南中します(出典:日本天文学会 天文学辞典「冬の大三角」)。
南中とは、星が真南に来て、その日のうちでいちばん高く昇ることです。
冬の宵に外へ出て南の方角を向き、少し見上げてみてください。
街の中でも、次に説明する三つ星がすぐに見つかるはずです。
まず一直線に並ぶ三つの星を探す
最初に探すのは、オリオン座のまん中にある三つ星です。
ほぼ同じ明るさの星が3つ、指で押さえられるほどの間隔で、斜めに一直線に並んでいます。
国立天文台はこの3つを「2等星」と紹介しています。
等級とは星の見かけの明るさを表す数字で、数字が小さいほど明るく見えます。
夜空には明るい星がたくさんありますが、同じ明るさの星がきれいに3つ並ぶ場所はほとんどありません。
この並びそのものが、オリオン座を見分ける手がかりになります。
三つ星にはそれぞれ名前があります。
南の空を向いて見たとき、左からアルニタク、アルニラム、ミンタカです。
物語の中では、狩人オリオンが腰に巻いたベルトにあたります。
三つ星を囲む四つの星で砂時計の形をつくる
三つ星が見つかったら、その上と下に目を移します。
三つ星をはさむように、上に2つ、下に2つ、明るい星があります。
国立天文台はこの4つを「2つの1等星と2つの2等星が形作るややひしゃげた長方形」と説明しています。
南の空を向いたときの見え方で、形をたどる手順を整理すると次のとおりです。
- 三つ星の左上にある、赤っぽい明るい星を見つける
- 三つ星の右下にある、青白い明るい星を見つける
- 残りの右上と左下の星を加え、4つの星を線で結ぶ
- 4つの星の線と三つ星をつなぎ、くびれた砂時計の形にする
左上の赤い星がベテルギウス、右下の青白い星がリゲルです。
2つの1等星の色ははっきり違うので、見つけた星が合っているかを色で確かめられます。
方角を向く向きが変わると、形の傾きも変わって見えます。
ここでの「左上」「右下」は、南の空を向いたときの見え方です。

街明かりの中でも見つけやすい理由
オリオン座は、街明かりのある空でも形を追いやすい星座です。
明るい1等星が2つあり、そのあいだに三つ星という目立つ並びがあるためです。
暗い星が見えにくい都市の空でも、これらの明るい星は残ります。
ただし、ベテルギウスの明るさは一定ではありません。
日本天文学会の天文学辞典によると、ベテルギウスは普段、目で見た明るさに近い波長の光(Vバンド)で0.4等程度です。
明るさが変わる理由は、このあとベテルギウスの節で説明します。
観察するときは、外に出てしばらく暗さに目を慣らすと、見える星が少しずつ増えていきます。
街灯が直接目に入らない場所を選ぶだけでも、三つ星のまわりの星が見つけやすくなります。
赤いベテルギウスと青白いリゲルは何が違う?
ベテルギウスとリゲルの色の違いは、星の表面の温度の違いです。
ガスコンロの炎が、温度の低いところでは赤く、高いところでは青く見えるのと同じように、星も表面が熱いほど青白く、冷たいほど赤く光ります。
NASA(アメリカ航空宇宙局)の解説によると、リゲルの表面はベテルギウスより数千度も高温で、そのために赤ではなく青白く輝いています(出典:NASA Science “Discovering the Universe Through the Constellation Orion”)。
見た目は同じ「明るい点」でも、2つは大きさも年齢もまったく違う星です。
ベテルギウスは明るさが変わる赤色超巨星
ベテルギウスは、太陽の約20倍の質量をもつ赤色超巨星です(出典:日本天文学会 天文学辞典「ベテルギウス」)。
赤色超巨星とは、年老いて大きくふくらみ、表面の温度が下がって赤く見える、非常に大きな星のことです。
天文学辞典は、ベテルギウスを恒星の進化の最終段階にある星と説明しています。
その大きさは、太陽系に置きかえると実感できます。
NASAの解説によると、ベテルギウスを太陽の位置に置くと、火星と木星のあいだにある小惑星帯を越えるところまで広がります。
地球の軌道はもちろん、火星の軌道もすっぽり星の中に入ってしまう大きさです。

ベテルギウスは、明るさが変わる「変光星」でもあります。
天文学辞典は、星が膨らんだり縮んだりすることで明るさが変わる脈動変光星のうち、周期が完全には一定でない「半規則型」に分類しています。
この星が大きな話題になったのは、2019年の秋からです。
ベテルギウスは急に暗くなりはじめ、2020年2月10日ごろには約1.6等まで下がりました。
普段の0.4等程度と比べると、はっきり暗くなったことが肉眼でも分かるほどの変化です。
減光は2月13日ごろに止まり、そこから明るさが戻りはじめています。
この出来事は「大減光」と呼ばれています。
NASAは、ベテルギウスが見えている表面の大部分を吹き飛ばし、そのあとに暗くなったと説明しています。
NASAの別の解説では、宇宙に放り出された物質が冷えてちりの雲になり、一時的に星の光をさえぎったとしています(出典:NASA Science “What Is Betelgeuse? Inside the Strange, Volatile Star”)。
同じ解説は、この噴出がなぜ起きたのか、正確な原因とメカニズムはまだ分かっていないとも述べています。
地球からの距離について、NASAの解説には約550光年とするものと約700光年とするものがあり、値に幅があります。
1光年は、光が1年かけて進む距離です。
つまり、いま見ているベテルギウスの光は、数百年前に星を出発した光です。
ベテルギウスは、いずれ超新星爆発を起こすと予想されています。
超新星爆発とは、重い星が一生の最後に起こす大爆発のことです。
その時期については、よくある質問の中で説明します。
ほしまるそんなに大きな星が暗くなったり明るくなったりするなら、遠くにあるリゲルのほうはどうして負けないくらい明るいんだろう?
リゲルは遠くにあっても明るく輝く青白い星
リゲルは、表面温度の高い青色超巨星です。
NASAの解説によると、地球からの距離は約860光年で、ベテルギウスよりも遠くにあります。
それでもNASAはリゲルを、オリオン座でいちばん明るい星と紹介しています。
遠いのに明るく見えるのは、星そのものが放つ光が強いからです。
星の明るさには、2つの見方があります。
ひとつは地球から見たときの「見かけの明るさ」で、もうひとつは星が実際に出している光の量である「本来の明るさ」です。
同じ明るさの懐中電灯でも、近くにあればまぶしく、遠くにあれば暗く見えます。
遠くにあってもまぶしく見える懐中電灯は、それだけ強い光を出していることになります。
リゲルは、ベテルギウスより遠くにありながら同じくらい明るく見える、本来の明るさが大きい星です。
年齢にも違いがあります。
NASAはベテルギウスを約1000万歳、リゲルを約800万歳と推定しています。
太陽の年齢と比べると、どちらもずっと若い星です。
並んで見える三つ星は地球からの距離がばらばら
三つ星は、夜空できれいに一直線に並んでいます。
そのため、3つが同じ距離に仲よく並んでいるように思えるかもしれません。
ところが、地球からの距離は3つともばらばらです。
NASAの解説によると、それぞれの距離は次のとおりです。
- アルニタクは約800光年
- アルニラムは約1300光年
- ミンタカは約900光年
いちばん近いアルニタクといちばん遠いアルニラムでは、500光年ほども離れています。
それでも一直線に見えるのは、地球から見たときの方向がたまたまそろっているからです。


夜の街で、手前の街灯と奥のビルの窓明かりが、ちょうど一列に並んで見えることがあります。
横から見れば、それぞれの距離はまったく違います。
星座も同じで、奥行きのある宇宙の星の配置を、地球から見た方向だけで平面に写したものです。
さらに、ミンタカはひとつの星ではありません。
NASAは、ミンタカを5つの星からなる複雑な星の集まりだと説明しています。
肉眼ではひとつの点に見える星が、実際にはいくつもの星の集まりなのです。
三つ星の下のぼんやりした光はオリオン大星雲
三つ星の下には、小さな星が縦に3つ並んだ「小三つ星」があります。
物語の中では、狩人オリオンが腰に下げた剣にあたる部分です。
その小三つ星のまん中あたりに、星とは違う、にじんだような光が見えます。
これがオリオン大星雲です。
星雲とは、宇宙に漂うガスやちりの雲のことです。
オリオン大星雲はメシエカタログの42番目にあたり、M42とも呼ばれます。
日本天文学会の天文学辞典によると、北側にはM43という星雲が隣り合っています。
2つのあいだは、光をさえぎる暗い帯で隔てられています。


地球からの距離は、国立天文台が約1500光年、NASAが約1300光年としており、資料によって値が違います。
見かけの大きさは35分角程度で、満月の見かけの大きさより少し大きいくらいです。
1分角は、角度の1度を60に分けた小さな単位です。
実際の大きさは、差し渡し15光年程度あります(出典:日本天文学会 天文学辞典「オリオン星雲」)。
肉眼でも見える星のゆりかご
オリオン大星雲は、新しい星が生まれている場所です。
NASAはオリオン大星雲を、地球に最も近い大規模な星形成領域と紹介しています。
国立天文台によると、周辺には星の材料となる水素ガスが豊富にあり、太陽の8倍以上の質量をもつ重い星が数多く生まれています(出典:国立天文台「オリオン大星雲で星が生まれる」)。
星雲の中には、生まれたばかりの星の集団もあります。
天文学辞典によると、オリオン大星雲には年齢100万年以下という非常に若い散開星団があります。
散開星団とは、同じガスの雲から生まれた星たちが、ゆるやかにまとまっている集団のことです。
太陽の年齢が数十億年であることを考えると、宇宙の時間では生まれたての星です。
星づくりは、いまも続いています。
星雲の背後には、冷たいガスが濃く集まった「分子雲」が広がっています。
天文学辞典は、この分子雲の中で星の誕生が活発に進んでいると説明しています。
分子雲の中は目に見える光では見通せないため、赤外線で観測されています。
オリオン大星雲は、肉眼でもぼんやりとした光として見えます。
国立天文台によると、肉眼では小さな雲のように見えるだけですが、双眼鏡や望遠鏡で拡大すると、蝶や鳥が羽を広げたような複雑な形が見えてきます。
双眼鏡があれば、三つ星の下に向けてみてください。



暗いガスの雲なのに、どうしてこんなふうに光って見えるんだろう?その答えは、星雲のまん中にいる星たちにあるんだ。
星雲を光らせるトラペジウムの若い星たち
オリオン大星雲の中心には、「オリオン座θ1(シータ・ワン)」と呼ばれる5等星があります。
望遠鏡で見ると、この星はA〜Dの4つの星に分かれます。
4つの星はいびつな四角形を描いて並び、この形から「トラペジウム」と呼ばれています。
トラペジウムは、不等辺四辺形という意味の言葉です。
トラペジウムの4つの星は、生まれて間もない、表面温度の高い星です。
天文学辞典によると、これらの若い高温の星が、まわりのガスを電離して光らせています。
電離とは、強い光を受けた原子から電子がはぎ取られることです。
はぎ取られた電子がふたたび原子に戻るとき、ガスは特定の色の光を出します。
このように、熱い星の光を受けて水素のガスが光っている場所を「電離水素領域」と呼びます。
また、ガス自身が特定の色の光を出して輝く星雲は「輝線星雲」と呼ばれます。
天文学辞典は、オリオン大星雲をこの両方にあたる天体と説明しています。
生まれたばかりの星が、自分を生んだガスの雲を内側から照らしているわけです。


オリオン座を起点に冬の星空をたどる
オリオン座が見つかれば、まわりの冬の星も探しやすくなります。
最初のつなぎ先は「冬の大三角」です。
冬の大三角は、次の3つの1等星を結んだ三角形です(出典:日本天文学会 天文学辞典「冬の大三角」)。
- オリオン座のベテルギウス
- おおいぬ座のシリウス
- こいぬ座のプロキオン
ベテルギウスから左下に目を移すと、ひときわ明るく白く輝く星があります。
これがおおいぬ座のシリウスです。


ベテルギウスから左に目を移すと、こいぬ座のプロキオンが見つかります。
3つの星を結ぶと、ほぼ正三角形に近い大きな三角形ができます。
天文学辞典によると、この三角形の中を天の川が通っています。
冬の天の川は夏に比べて淡いため、街中では見えにくいかもしれません。
明かりの少ない場所で見上げると、三角形の中を流れる淡い光の帯が見つかることがあります。
狩人オリオンの神話と日本での呼び名
オリオン座が狩人の姿で描かれるのは、ギリシャ神話に登場する狩人オリオンに由来します。
オリオンの物語には、伝わる話がいくつもあります。
さそりに追われる狩人の物語
よく知られているのは、さそりに刺された狩人の物語です。
国立天文台VERAプロジェクトのページによると、巨人オリオンは優れた狩人でした。
しかし、自分に倒せない獲物はいないとおごったため神の反感を買い、さそりの毒針で刺し殺されたと語られています(出典:国立天文台 VERA「南極生活の思い出」)。
同じページは、オリオン座とさそり座が空の中で正反対の位置にあることにも触れています。
その理由として、さそりを恐れるオリオンが、さそりが沈んでから姿を現すのだと言い伝えられています。
実際の空でも、オリオン座は冬の星座、さそり座は夏の星座として知られ、2つは空の反対側にあります。
空の星の動きが、神話の筋と重ねられてきたということです。
一方で、さそりが登場しない版もあります。
平塚市博物館の解説では、オリオンは月と狩りの女神アルテミスに仕える狩人として描かれます(出典:平塚市博物館「冬の星座 オリオン座」)。
2人の仲に反対したアルテミスの兄、太陽神アポロンの企みにより、オリオンはアルテミスの放った矢で命を落とします。
そのあとアルテミスは、毎晩自分が通る月の道のそばに、オリオンを星座として置いたと語られています。
鼓星と平家星と源氏星という和名
日本でも、オリオン座には古くから呼び名がありました。
そのひとつが「鼓星(つづみぼし)」です。
ブリタニカ国際大百科事典は、オリオン座の4つの星を中央の三つ星と結んで、鼓の形に見立てた和名と説明しています。
鼓は、胴のまん中がくびれた日本の打楽器です。
先ほど描いた砂時計の形が、鼓の形に重ねられたわけです。
ベテルギウスとリゲルにも、それぞれ和名があります。
赤いベテルギウスは「平家星(へいけぼし)」、青白いリゲルは「源氏星(げんじぼし)」です。
ブリタニカ国際大百科事典によると、三つ星をはさんで向かい合う2つの星の色を、平家の赤旗と源氏の白旗に見立てたものとされています(出典:コトバンク「平家星」「源氏星」)。
前の章で見た2つの星の色の違いは、表面温度の違いから生まれています。
同じ色の違いが、日本では源平合戦の旗の色として呼び名に残りました。
よくある質問
まとめ
冬の夜にオリオン座を探すときは、まず南の空を向き、同じ明るさの星が3つ並んだ三つ星を見つけます。
次に、三つ星をはさむ上下4つの星を結び、砂時計の形をつくります。
左上の星が赤く、右下の星が青白く見えれば、それがベテルギウスとリゲルです。
色の違いは、星の表面温度の違いを表しています。
余裕があれば、三つ星の下の小三つ星に目を移し、まん中のにじんだ光を探してみてください。
それが、いまも新しい星が生まれているオリオン大星雲です。
最後に、ベテルギウスからシリウスとプロキオンへ線を延ばせば、冬の大三角が完成します。
一直線に並ぶ三つ星も、実際には500光年ほども奥行きの違う場所にあります。
次に晴れた冬の夜は、平らに見える星座の向こうに広がる、その奥行きを思い浮かべながら見上げてみてください。
出典
- NASA Science「Discovering the Universe Through the Constellation Orion」https://science.nasa.gov/universe/stories/quick-reads/discovering-the-universe-through-the-constellation-orion/
- NASA Science「What Is Betelgeuse? Inside the Strange, Volatile Star」https://science.nasa.gov/universe/what-is-betelgeuse-inside-the-strange-volatile-star
- 日本天文学会 天文学辞典「ベテルギウス」https://astro-dic.jp/betelgeuse/
- 日本天文学会 天文学辞典「オリオン星雲」https://astro-dic.jp/orion-nebula/
- 日本天文学会 天文学辞典「冬の大三角」https://astro-dic.jp/winter-triangle/
- 国立天文台「オリオン大星雲を観察する好機(2023年2月)」https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2023/02-topics04.html
- 国立天文台「オリオン大星雲で星が生まれる」https://www.nao.ac.jp/news/blog/2024/20240226-orion-nebula.html
- 国立天文台 VERA「南極生活の思い出」http://www.miz.nao.ac.jp/vera/content/madam/page-9-3
- 平塚市博物館「冬の星座 オリオン座」https://www.hirahaku.jp/hakubutsukan_archive/tenmon/00000022/37.html
- コトバンク「平家星」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ほか)https://kotobank.jp/word/平家星-128867
- コトバンク「源氏星」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ほか)https://kotobank.jp/word/源氏星-60634
- コトバンク「鼓星」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)https://kotobank.jp/word/鼓星