宇宙エレベーターは実現するのか?残る技術の壁と日本企業の構想

宇宙エレベーターは実現するのか?残る技術の壁と日本企業の構想

宇宙エレベーターは、地上と静止軌道をケーブルで結び、そのケーブルを昇り降りする乗り物で人や物を運ぶ輸送の構想です。
日本では大林組が2012年に、全長96,000kmのケーブルを25年かけて建設し、2050年の完成をめざす構想を公表しています。

ただし、いま進んでいるのは材料・構造・クライマーなどの技術研究の段階です。
ケーブルに使える強さと軽さを兼ね備えた材料が、まだ存在していません。

一方で、材料を宇宙環境に置く実験や、超小型衛星でケーブルを伸ばす実験は、実際に軌道上で行われています。

※記事の要点は、以下のスライドでもサッと確認できます。

目次

宇宙エレベーターは、いまどこまで来ているのか

2012年に公表された、2050年完成をめざす構想

大林組が2012年に公表した、2050年完成をめざす構想

2012(平成24)年2月、大林組のプロジェクトチームが広報誌『季刊大林』誌上で「宇宙エレベーター建設構想」を発表しました(出典:大林組「OBAYASHI CHRONICLE 130 宇宙エレベーター」)。
ケーブルの総延長は96,000kmです。
上空36,000kmの静止軌道上にターミナルを置き、そこから地上側と宇宙側の両方へケーブルを伸ばす形をとります。

地上のアース・ポートから静止軌道上のターミナルを経て、外側のおもりまで伸びる全長96,000kmのケーブルとクライマーを示した断面図
大林組が2012年に公表した構想の全体像。高度36,000kmの静止軌道上にターミナルを置き、そこから地上側と宇宙側の両方へケーブルを伸ばして総延長96,000kmとする。外側の端はおもり(カウンターウェイト)の役割を果たす。着工していない構想段階の姿である。(図解はイメージです)

地上側の発着点はアース・ポートと呼ばれ、赤道上の陸上と海上に建設される想定です。
直径約400mの海上施設は、最下部につくられた中空のコンクリートの浮力で海に浮かびます(出典:大林組「宇宙エレベーター建設構想」季刊大林No.53。以下、構想の諸元は同資料の表記によります)。

2050年という完成年には、前提条件が付いています。
2025年にアース・ポートを着工し、25年の工期をかけた場合に2050年に完成する、という組み立てです。
この2025年の着工は、完成年を示すために構想が置いた仮定にあたります。

構想の発表から10年以上が経ちましたが、大林組がいま静岡大学などと進めているのは、国際宇宙ステーション(ISS)を使ったケーブル材料の耐久性実験です(出典:大林組「OBAYASHI CHRONICLE 130 宇宙エレベーター」)。

着工に進めない理由は、ケーブルの材料がまだ無いこと

宇宙エレベーター協会は、実現していない理由を「ケーブルに使うことのできる強さと軽さを兼ね備えた材料がまだ存在しないからです」と説明しています(出典:宇宙エレベーター協会「なぜ、すぐに実現しないのでしょうか」)。
96,000kmのケーブルは、自分自身の重さを支えながら、その上をクライマーが行き来することに耐える必要があります。
軽さと強さの両方が同時に求められるのは、このためです。

材料が生まれる時期も見通せていません。
協会は、必要なのが連続的な向上ではなく、不連続な向上であるブレイクスルーだとしています。
そのうえで「ブレイクスルーは、連続的な向上とは異なり、いつ起きるかの予測が困難です」と述べています。

材料が決まらなければ、ケーブルの製造も、それを前提にした建設も始められません。
構想の図面と数字がどれだけ細かくても、着工の手前で止まっている主な理由の一つはこの点です。

なぜケーブル1本で宇宙まで行けるのか

1本のケーブルが成り立つ仕組み

高度約36,000kmでは、重力と遠心力が釣り合っている

静止軌道とは、赤道の上空、高度約36,000kmの軌道です。
ここを回る人工衛星は、1周にかかる時間が地球の自転と同じになります。
地上から見ると空の同じ場所に止まって見えるため、静止衛星と呼ばれます。

この高さでは、地球の重力によって内側へ引かれる力と、回ることで外側へ向かう遠心力が釣り合っています(出典:宇宙エレベーター協会「初めての方へ──宇宙エレベーター早わかり」)。
釣り合っているので、衛星は落ちることも、遠ざかることもありません。
宇宙エレベーターは、この釣り合いの場所を起点にします。

赤道上空約36,000kmの静止軌道で、衛星にはたらく重力と遠心力が釣り合っていることを示した図
赤道上空の高度約36,000kmでは、内側へ引かれる重力と、回ることで外側へ向かう遠心力が釣り合っている。この釣り合いの場所を宇宙エレベーターは起点にする。(図解はイメージです)
ほしまる

釣り合っている場所があるのは分かったよ。でも、そこから地面まで、どうやって紐を届かせるんだろう?

上下にケーブルを伸ばし、96,000kmの1本の紐にする

静止軌道の衛星から地上へ向けてケーブルを垂らすと、下側が重くなります。
そのままでは釣り合いが崩れ、落ちてしまいます。
そこで反対側、つまり地球から遠ざかる向きにもケーブルを伸ばして、釣り合いを取り直します(出典:宇宙エレベーター協会「初めての方へ──宇宙エレベーター早わかり」)。

下へ伸ばした分だけ、上へも伸ばします。
これを繰り返していくと、地上と宇宙を結ぶ1本の紐ができあがります。
大林組の構想では、この全長が96,000kmになります。

外側の端には、おもりの役割を果たすものが要ります。
これをカウンターウェイトと呼びます。
大林組の構想では、ケーブルを繰り出しながら高度96,000kmまで上昇した宇宙船が、そのままカウンターウェイトになるとしています。

電力で昇るクライマーが、輸送コストを下げる

ケーブルが1本通れば、その上を昇り降りする乗り物で人や物を運べます。
この乗り物をクライマーと呼びます。
ロケットのように推進剤を燃やして飛ぶのではなく、ケーブルを伝って移動する点が違いです。

動力は、機体の外から送ります。
宇宙エレベーター協会はアース・ポートの設備について、「クライマーへの無線電力伝送のための設備は、マイクロ波やレーザーといった電磁波でクライマーに電力を送ります」と説明しています(出典:宇宙エレベーター協会「Q16 アースポートはどんな施設になりそうでしょうか。」)。
狙いが外れると損失が大きくなるため、天体望遠鏡やアンテナの技術が使われるかもしれない、とも書かれています。

地上のアンテナから電磁波で送られた電力を受けながら、ケーブルを昇るクライマーを示した図
クライマーは推進剤を燃やさず、ケーブルを伝って昇り降りする。宇宙エレベーター協会の説明では、アース・ポートの設備がマイクロ波やレーザーといった電磁波で電力を送る。輸送コストは従来の方法に比べて約二桁(おおよそ100分の1の水準)低減されるという試算があるが、構想段階の試算であって確定した運賃ではない。(図解はイメージです)

輸送コストについて、大林組の石川洋二氏は日本機械学会誌で「従来の方法に比べて宇宙への輸送コストが約二桁低減されるという試算があり、実現すれば輸送コストが課題である宇宙開発に大いにはずみがつく」と書いています(出典:日本機械学会誌「大林組の宇宙エレベーター建設構想」2026年4月号 Vol.129 No.1289)。
約二桁は、おおよそ100分の1の水準を指します。
構想段階の試算であり、確定した運賃ではありません。

クライマーは、ケーブルが完成する前の工事にも使われます。
構想では、工事用のクライマーが補強ケーブルを貼りつけながら上昇し、約500回の補強を重ねてケーブルが仕上がります。
そこまで進むと、重さ100tのクライマーが使えるようになります。

実現を止めているのは、素材と宇宙環境

65cmと10万km、埋まっていない開き

最長のカーボンナノチューブは約65cm、必要なのは10万km級

ケーブルの材料として想定されているのは、カーボンナノチューブです。
炭素の原子が筒状に並んだ細い繊維で、1991年に日本で発見されました。
軽さと強さという条件に応えられる素材として、ここから名前が挙がるようになりました(出典:宇宙エレベーター協会「初めての方へ──宇宙エレベーター早わかり」)。

課題は長さです。
1本のカーボンナノチューブとして報告されている最長の記録は、650mm(約65cm)です。
清華大学の研究チームが2019年にNature Communicationsで報告したもので、それ以前の最長記録は550mmでした(出典:Zhu, Z. et al., “Rate-selected growth of ultrapure semiconducting carbon nanotube arrays”, Nature Communications 10, 4467, 2019)。

必要なのは10万km級のケーブルです。
65cmと10万kmの開きは、おおよそ1億5000万倍にあたります。

ほしまる

10万kmは、ぼくが40年の旅で何度も通り過ぎてきた距離なんだ。でも、それを途切れない1本の糸でつなぐとなると、まったく別の話になるんだね。

実際の実験で使われているのは、細いカーボンナノチューブを撚り合わせた糸です。
大林組などがISSで曝露した試験体も、CNTより糸と呼ばれる形をしていました(出典:大林組「『きぼう』日本実験棟における宇宙実験の試験体を回収」)。

炭素原子が筒状に並んだカーボンナノチューブ1本と、細い繊維を撚り合わせたCNTより糸を並べた図
左は炭素の原子が筒状に並んだカーボンナノチューブ1本。報告されている最長記録は650mm(約65cm)で、必要なケーブルは10万km級である。右は実験で実際に使われている、細いカーボンナノチューブを撚り合わせたCNTより糸。(図解はイメージです)

強さは、原子の並び方にも左右されます。
京都大学の宮内雄平氏、名古屋大学の伊丹健一郎氏、愛知工業大学の生津資大氏らは2019年、引っ張りに強いカーボンナノチューブの構造を特定したと発表しました。
直径が小さい「近アームチェア型」と呼ばれる構造が高い引張強度を持つという内容で、Nature Communicationsのオンライン版に2019年7月10日に掲載されています(出典:京都大学「引っ張りに強いカーボンナノチューブの構造を特定」)。

原子状酸素やデブリが、ケーブルを削っていく

材料ができたとして、次は宇宙に置いて持つかどうかです。
宇宙エレベーター協会は、建設のための課題として次を挙げています(出典:宇宙エレベーター協会「2.宇宙エレベーター建設のための課題」)。

  • 太陽からの電磁波や放射線、熱による影響
  • 隕石やスペースデブリによるテザーの損傷
  • 高空に存在する原子状酸素のテザーへの影響
  • 落雷、ハリケーンや雹、ジェット気流
  • 振動
  • 地磁気による誘導起電流
  • 航空機による事故やテロ対策

テザーは、宇宙機をつなぐ細長いケーブルやひもを指します。
スペースデブリは、運用を終えた衛星やロケットの破片など、軌道上を回っている人工の物体です。
原子状酸素は、酸素の分子が分かれて原子1個の状態になったもので、高い高度に存在します。

並んだ課題は、効いてくる場所がそれぞれ違います。
落雷やハリケーン、雹、ジェット気流は大気の中の話です。
原子状酸素は高い高度で、隕石やスペースデブリの衝突はさらに外側でも関わってきます。
1本のケーブルが地上から静止軌道の先まで連続している以上、区間ごとに条件の異なる環境を通り抜けることになります。

地上から軌道上まで伸びるケーブルに対し、落雷やジェット気流、原子状酸素、デブリ、放射線が高度ごとに異なる場所で影響することを示した図
宇宙エレベーター協会が挙げる課題は、効いてくる場所がそれぞれ違う。落雷やジェット気流は大気の中、原子状酸素は高い高度、隕石やスペースデブリの衝突はさらに外側でも関わる。1本のケーブルは、区間ごとに条件の異なる環境を通り抜けることになる。(図解はイメージです)

素材のブレイクスルーは、いつ起きるか予測できない

宇宙エレベーター協会は、材料に必要なのがブレイクスルーであり、その発生時期の予測は困難だとしています(出典:宇宙エレベーター協会「なぜ、すぐに実現しないのでしょうか」)。

材料が手に入ってからも、時間がかかります。
同協会は、ケーブルの補強にかかると見込まれている期間を「構想によって様々ですが、だいたい数年から数十年の間です」と説明しています。

耐久性を確かめる作業も、それ自体に年単位の時間を要します。
ISSでの曝露実験は、1回目が2015年の開始から2017年の回収まで、2回目が前面と背面でそれぞれ1年間と2年間の曝露という日程で組まれました。

つまり完成の時期は、材料が現れる時期に左右されます。
2050年という数字も、2025年の着工を前提に置いた計算でした。
その前提が動いた分だけ、完成の時期も動くことになります。

日本では、どんな実験が実際に動いているのか

国際宇宙ステーションで続くカーボンナノチューブの曝露実験

大林組、静岡大学、有人宇宙システムの3者は、ISS「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームで、ケーブル向け材料の曝露実験を共同で実施しています。
1回目は2015年4月に開始しました。
ISS進行方向の前面で1年間、背面で1年間、背面で2年間という3種類の試験体を設定し、2017年7月にすべての回収を終えています(出典:大林組「『きぼう』日本実験棟における宇宙実験の試験体を回収」)。

国際宇宙ステーションに取り付けられた「きぼう」日本実験棟と船外実験プラットフォームの外観
国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟。船外実験プラットフォームで、ケーブル向け材料の曝露実験が行われている。 Credit: NASA

1回目では、原子状の酸素が衝突したと考えられる損傷が見られました。
前面で曝露したものは、背面で曝露したものよりも大きく損傷していました。
前面・背面ともにCNTより糸の引張強度が曝露前より低下し、前面のほうが低下の幅は大きくなっています。

ISSの進行方向の前面と背面に取り付けた試験体のうち、前面側に原子状酸素が正面から当たることを示した図
1回目の曝露実験は、ISS進行方向の前面で1年間、背面で1年間、背面で2年間という3種類の試験体で行われた。原子状の酸素が衝突したと考えられる損傷が見られ、前面で曝露したものは背面より大きく損傷していた。CNTより糸の引張強度は前面・背面とも曝露前より低下し、前面のほうが低下の幅は大きかった。(図解はイメージです)

2回目は、試験体を被覆して行われました。
金属系とケイ素系の2種類の材料で被覆し、2019年夏にドラゴン補給船運用18号機(SpX-18)で打ち上げました。
ISS進行方向の前面と背面で、それぞれ1年間および2年間曝露しています(出典:大林組「宇宙エレベーターのケーブル向け材料の2回目の宇宙実験を実施」)。

金属系は宇宙空間での耐環境性が高く長期の保護ができる材料、ケイ素系は人工衛星用材料の保護のために開発され金属系と比べて軽量な材料、と説明されています。
実験協力先は、金属系が早稲田大学理工学術院とカナデビア(発表当時の社名は日立造船株式会社)、ケイ素系が東亞合成です。

超小型衛星が軌道上で試した、約10mのテザーとクライマー

静岡大学のSTARS-Me(愛称「てんりゅう」)は、2018年10月6日に「きぼう」から放出された超小型衛星です(出典:静岡大学アマチュア無線クラブ「STARS-Me」)。
テザー長は10m程度、クライマーは3×3×6cm程度という規模で、軌道エレベーター技術の第一歩としてCubeSatを用いた宇宙実験に位置づけられました。
CubeSatは、10cm角を基本単位とする超小型衛星の規格です。

テザーの伸ばし方には、比較的剛性のあるテザーをモーターにより徐々に繰り出していく手法が採られています。
STARS-Meは2021年6月26日に大気圏へ再突入しました。

超小型衛星から約10mのテザーを伸ばし、その上を小型のクライマーが昇降する軌道上実験の構成図
静岡大学のSTARS-Me(愛称「てんりゅう」)は、2018年10月に「きぼう」から放出された超小型衛星。テザー長は10m程度、クライマーは3×3×6cm程度という規模で、比較的剛性のあるテザーをモーターで徐々に繰り出す手法が採られた。(図解はイメージです)

10mと96,000kmでは、桁がいくつも違います。
それでも、ケーブルを伸ばしてそこを昇降させる操作を、地上の実験室ではなく軌道上で試す段階には入っています。

クライマー開発が持ち寄られる実験会SPEC

昇降機そのものの開発は、宇宙エレベーター協会が主催するSPEC(Space Elevator Challenge)に持ち寄られています。
協会はSPECを、順位や得点を競う「競技会」ではなく、各チームが自ら開発したクライマーの性能や信頼性、安全性をじっくりと確認するための実験会として位置づけています(出典:宇宙エレベーター協会「SPEC2025F実施報告」)。

SPEC2025Fは2025年11月21日から23日までの3日間に開催され、ドイツのチームWARRを含む11チームが参加しました。
約120kgの重量物を運ぶ大型クライマーによる耐荷重・安定性の確認や、昇降中に姿勢を安定させるための制御方法の検討が行われています。

実験には、気球を使って上空から地上をつないだテザーが使われます。
参加しているのは、東北大学、京都大学、湘南工科大学と大林組の共同チームをはじめとする大学や企業、個人有志です(出典:宇宙エレベーター協会「宇宙エレベータークライマー競技会(SPEC)」)。

ほしまる

出てくるのは建設会社と大学と化学メーカーばかりだね。これって、どの産業の話になるんだろう?

関わっているのは、建設会社と素材メーカーと大学

公式資料で確認できる実験の顔ぶれ

ゼネコン・素材メーカー・大学が並ぶ、実験の顔ぶれ

公式資料で確認できる分担を並べると、顔ぶれの特徴が見えてきます。

  • 大林組:構想の公表と、構造・施工の検討、クライマーの共同研究
  • 静岡大学:ISSでの曝露実験と、超小型衛星による軌道上の実験
  • 有人宇宙システム:宇宙実験の実施
  • 早稲田大学理工学術院とカナデビア:試験体の金属系被覆
  • 東亞合成:試験体のケイ素系被覆
  • 湘南工科大学:大林組との共同チームによるクライマー開発

カナデビアは、2024年6月の第127回定時株主総会での承認を経て、2024年10月1日に日立造船株式会社から商号を変更しています(出典:カナデビア「第127回定時株主総会で商号変更が承認」)。
曝露実験が公表された2020年の資料では、日立造船株式会社の名前で記載されています。

宇宙を専業とする企業が並んでいるわけではありません。
建設、化学、機械・プラント、そして大学という、別々の産業や分野で技術を積み上げてきた組織が、ケーブルという1点で交わっています。

中心のケーブルに、建設・化学・機械・大学という異なる分野が線でつながっていることを示した関係図
公開資料で名前が確認できるのは、大林組、静岡大学、有人宇宙システム、早稲田大学理工学術院、カナデビア、東亞合成、湘南工科大学など。宇宙を専業とする企業が並んでいるのではなく、建設・化学・機械・大学という別々の分野で技術を積み上げてきた組織が、ケーブルという1点で交わっている。(図解はイメージです)

いま動いているのは、材料と構造と衛星運用の既存の領域

構想段階の現在、実際に手が動いているのは、すでにある技術の領域です。
公開資料から確認できるのは、次のような仕事です。

  • カーボンナノチューブの合成と、被覆材の開発、曝露後の強度評価
  • ケーブルと地上施設の構造・施工の検討
  • 超小型衛星の設計と、軌道上での運用
  • クライマーの機構と、昇降中の姿勢を安定させる制御

どれも宇宙エレベーター専用の技術として始まったものではありません。
材料工学、構造設計、衛星運用、制御という既存の分野の仕事が、この構想の中で使われています。
公開資料で名前が確認できるのは、いまのところ研究と開発の領域に限られます。

材料・構造・衛星運用・制御という4つの既存領域の仕事が、宇宙エレベーターの構想の中で使われていることを示した図
公開資料から確認できるのは、カーボンナノチューブの合成と被覆材の開発・曝露後の強度評価、ケーブルと地上施設の構造・施工の検討、超小型衛星の設計と軌道上での運用、クライマーの機構と姿勢安定の制御。いずれも宇宙エレベーター専用に始まった技術ではなく、既存の分野の仕事がこの構想の中で使われている。(図解はイメージです)

自分の経験がどこに重なるかを知りたい場合は、各組織が公開している研究テーマや募集要項を開き、扱う対象と求められる経験を自分の経歴と並べてみることになります。
求められる経験は組織ごとに違います。

よくある質問

宇宙エレベーターはどこに建てる想定なのか

静止軌道の真下にあたる赤道上が前提になります。
大林組の構想では、地上側の発着点となるアース・ポートを赤道上の陸上と海上に置き、直径約400mの海上施設は中空のコンクリートの浮力で海に浮かぶとしています。
公表されている構想では、具体的な地点までは示されていません。

ロケットと比べて輸送コストはどれくらい下がるのか

日本機械学会誌に掲載された大林組の石川洋二氏の記事では、従来の方法に比べて宇宙への輸送コストが約二桁低減されるという試算が紹介されています。
約二桁は、おおよそ100分の1の水準です。
構想段階の試算であり、確定した運賃ではありません。

航空機の事故やテロへの対策は考えられているのか

宇宙エレベーター協会は、建設のための課題のひとつとして「航空機による事故やテロ対策」を挙げています。
同協会のページでは課題として示されている段階で、具体的な対策までは書かれていません。

まとめ 分かっていることと、まだ決まっていないこと

確認できている事実は、次のとおりです。

  • 大林組が2012年2月に公表した構想は、ケーブルの総延長96,000km、静止軌道上のターミナルが高度36,000km、工期25年という規模
  • 仕組みは、静止軌道での重力と遠心力の釣り合いを起点に上下へケーブルを伸ばし、クライマーで人や物を昇降させるもの
  • 実際に行われているのは、ISSでのカーボンナノチューブ曝露実験、超小型衛星STARS-Meのテザー実験、SPECでのクライマー開発

まだ決まっていないことも、同じくらいはっきりしています。

  • ケーブルに使える強さと軽さを兼ね備えた材料が、いつできるか
  • 着工するかどうかと、その時期
  • 建設地の具体的な地点

構想は、数字の上ではすでに細かく描かれています。
それでも先へ進めない主な理由の一つは、材料が存在しないという点です。

65cmのカーボンナノチューブと、10万kmのケーブル。
この開きを埋める作業が、いまは実験室と、軌道上の小さな試験体の中で続いています。

出典

ほしまる
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