オーロラは、太陽から届いた電気を帯びた粒子が地球の磁場に導かれ、北極や南極の上空で大気とぶつかって光る現象です。
光っているのは上空の酸素や窒素で、どの気体がどの高さで光るかによって、緑や赤、青紫といった色が決まります。
ふだんオーロラが見られるのは、北極や南極を囲む帯の下にあたる地域です。
ただ、太陽で大きな爆発が起きて地球の磁場が大きく乱れると、光る場所が赤道側へ広がり、日本からも見えることがあります。
実際に2023年12月には北海道で、2024年5月には日本の広い範囲で、オーロラが撮影されました。
この記事では、光る仕組み、色の違い、形の変化、見える場所、日本で見えた理由、太陽活動の周期との関係の順に説明します。
オーロラはなぜ光る?太陽からの粒子が大気を光らせる
オーロラが光るまでには、太陽から地球の上空まで、粒子がいくつかの段階を経てたどり着く道のりがあります。
太陽から吹き出す粒子の流れが地球に届く
出発点は太陽です。
太陽からは、電気を帯びた粒子の流れが宇宙へ吹き出しています。
この流れを「太陽風」と呼びます。
太陽風の中身は「プラズマ」です。
プラズマとは、物質がプラスの電気を帯びた粒子(陽子などのイオン)と、マイナスの電気を帯びた電子に分かれた状態をいいます(出典:国立極地研究所 オーロラデータセンター「南極におけるオーロラ研究」)。
地球はそれ自体が大きな磁石のようになっていて、周りを磁場が包んでいます。
磁場の向きを線で描いたものが「磁力線」で、棒磁石の周りに砂鉄をまくと見える模様がその形です。
地球の磁場は太陽風に押され、太陽に向いた側は押しつぶされ、反対側は長く引き伸ばされた形をしています。
この、地球の磁場が及ぶ領域を「磁気圏」と呼びます。

名古屋大学宇宙地球環境研究所の塩川和夫教授の解説によると、磁気圏は太陽の方向には地球半径の10倍くらいまで広がっています(出典:名古屋大学宇宙地球環境研究所 塩川研究室「オーロラと低緯度オーロラの解説」)。
反対側には、地球半径の数百倍以上まで、彗星のように尾がのびています。
地球の周りには、太陽風を受け止める巨大な磁場の空間が広がっているわけです。
磁力線に導かれて北極と南極の上空へ降りてくる
磁気圏の中に入り込んだ太陽風のプラズマは、太陽と反対側にのびた尾の中央にたまります。
このプラズマがたまった場所を「プラズマシート」と呼び、ここがオーロラを光らせる粒子の源になっています。
国立極地研究所の解説は、オーロラ粒子はもともと太陽からやってきたものだと説明しています。
プラズマシートにたまった粒子は、そのまま地球に落ちてくるわけではありません。
塩川研究室の解説によると、太陽風の粒子のエネルギーは、プラズマシートに入ると大きく加速されます。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)の宇宙天気予報センターも、電子は磁気圏の夜側の尾で加速されると説明しています(出典:NOAA Space Weather Prediction Center「Aurora」)。
加速された粒子の行き先を決めるのが磁力線です。
電気を帯びた粒子には、磁力線を横切っては動きにくく、磁力線に沿って動くという性質があります。
地球の磁力線は北極側と南極側の上空に集まって地面へ入り込んでいるため、粒子は磁力線をたどって極に近い空へ降りてきます。

赤道付近ではなく、極に近い場所でオーロラが光るのはこのためです。
国立極地研究所の解説によると、粒子は南極域と北極域に同時に降り込みます。
北半球の「オーロラ・ボレアリス」と南半球の「オーロラ・オーストラリス」は、同じ仕組みで同時に光っていることになります。
上空100kmより高い大気とぶつかって光を出す
極の上空に降りてきた電子は、大気中の酸素や窒素とぶつかります。
このとき電子はエネルギーを大気に渡し、酸素や窒素はエネルギーの高い、不安定な状態になります。
この状態を「励起(れいき)」と呼びます。
励起した酸素や窒素は、時間がたつと元の安定した状態へ戻ります。
戻るときに、2つの状態のエネルギーの差の分を光として出します。
これがオーロラの光です。
NOAAは、この光り方をネオンサインの光り方に似ていると説明しています。
ネオン管の中でも、電気の力で動かされた電子がガスにぶつかり、ガスが光を出しています。
オーロラでは、ネオン管のガスの代わりに地球の上空の大気が光っていると考えると分かりやすいでしょう。
光る高さについて、国立極地研究所は上空100kmから500kmと説明しています。
NOAAの説明では、地上80〜500kmです。
世界でいちばん高い山のエベレストが約8km、旅客機が飛ぶのが約10kmなので、オーロラはそれよりはるかに高い場所で光っています(出典:名古屋大学宇宙地球環境研究所 塩川研究室「オーロラと低緯度オーロラの解説」)。
ほしまる大気が光っているなら、同じオーロラなのに色がちがうのはどうしてなんだろう?
緑や赤に分かれるのはなぜ?色を決める大気の種類と高さ
オーロラの色は、光っている気体の種類と、光る高さの組み合わせで決まります。
励起した気体が元に戻るときのエネルギーの差は、光の強さではなく色に対応します。
差が大きいと青、中くらいだと緑、小さいと赤になります(出典:名古屋大学宇宙地球環境研究所 塩川研究室「オーロラと低緯度オーロラの解説」。以下、色と高さの対応は同ページによります)。
気体がとれる状態のエネルギーは決まっているため、オーロラは虹のようにすべての色で光るわけではありません。
決まった色(輝線)がいくつか組み合わさって光っています。
代表的な3つの色は次のとおりです。


「nm(ナノメートル)」は光の波長の単位で、1nmは100万分の1mmです。
| 色 | 波長 | 光っている気体 | 光る高さ |
|---|---|---|---|
| 赤 | 630.0nm | 酸素原子 | 高さ150km以上 |
| 緑 | 557.7nm | 酸素原子 | 高さ100〜200kmくらい |
| 青 | 427.8nm | 窒素分子のイオン | 高さ90〜120kmくらい |
いちばんよく見える緑は酸素原子の光
緑の光(波長557.7nm)は、高さ100〜200kmくらいで酸素原子が光っているものです。
塩川研究室の解説によると、降りてくる電子のエネルギーが高いときに、緑のオーロラがよく光ります。
この高さでは、低いところほど酸素原子の密度が高いため、緑のオーロラは明るくなります。
国立極地研究所も、明るい緑や赤の光は酸素原子からのものだと説明しています。
同研究所によると、緑のオーロラのいちばん明るい部分は110km付近にあります(出典:国立極地研究所 オーロラデータセンター「南極におけるオーロラ研究」)。
より高い空の赤も同じ酸素原子から生まれる
赤い光(波長630.0nm)も、緑と同じ酸素原子の光です。
違うのは光る高さで、赤は高さ150km以上で光ります。
この高さでは、大気の成分はほとんどが酸素原子です。
同じ酸素原子なのに色が変わるのは、酸素原子の中の「どの状態からどの状態へ戻るか」が違うためです。
赤を出す状態は、少ないエネルギーでなりやすいという特徴があります。
そのため、エネルギーの低い電子が降りてきたときでも、赤いオーロラが光ります。
赤を出す状態には、もうひとつ特徴があります。
励起してから光を出すまでに、約100秒という長い時間がかかるのです。
大気の濃い低い高さでは、光を出す前にほかの気体とぶつかってエネルギーを失ってしまうため、赤はほとんど光りません。
一方、緑を出す状態は、励起してから約1秒で光を出します。
そのため、大気が濃い低めの高さでも光ります。
赤は大気の薄い高い空で、緑はそれより低い空で光るという分担は、この時間の違いから生まれています。
写真で見るオーロラのカーテンが、上の部分では赤、下の部分では緑になっていることがあるのもこのためです。
この「高い空で光る赤」は、日本で見えるオーロラを考えるときの手がかりになります。


低い空の青紫やピンクは窒素の光
さらに低い高さ90〜120kmくらいでは、酸素原子が減り、地上と同じように窒素分子が大気の主成分になります。
ここでは、窒素分子のイオン(電子を失ってプラスの電気を帯びた窒素分子)が青い光(波長427.8nm)を出します。
この光が出るのは、降りてくる電子のエネルギーがさらに高いときです。
窒素分子は、励起してから光を出すまでの時間が0.000001秒以下と非常に短いのが特徴です。
そのため、大気の濃い低い高さでも光を出せます。
窒素分子の光は、青だけでなくピンクに近い色など、少しずつ違う色が並んだ光になります。
国立極地研究所は、紫や青は窒素分子イオンから、ピンク色は窒素分子からの光だと説明しています。
塩川研究室の解説によると、激しいオーロラが出たときには、カーテンの下の端が青やピンク色に輝きます。
オーロラの色を詳しく調べれば、目では見えない宇宙から降りてくる電子のおおよそのエネルギーが分かります。
カーテンやコロナの形は一晩のうちにも変わる
オーロラがカーテンのような形に見えるのは、粒子が磁力線に沿って降りてきて、途中で少しずつエネルギーを失いながら大気を光らせるためです(出典:国立極地研究所 オーロラデータセンター「南極におけるオーロラ研究」。以下、形の分類は同ページによります)。
国立極地研究所の解説は、オーロラのカーテンを「夜空に浮び出た地球の磁力線」と表現しています。
カーテンは東西方向に1,000km以上も長くのびている一方、南北方向には非常に薄い形をしています。
そのため、同じカーテンでも見上げる角度によって形が変わって見えます。


- 遠くにあるときは、東西にのびる帯(バンド状)や弧(アーク状)に見える
- 頭上近くに来ると、一点から放射状に広がる形(コロナ状)に見える
はっきりした輪郭をもつオーロラのほかに、空にぼんやりと広がる「拡散型オーロラ」もあります。
拡散型は複雑な斑点のようにきれぎれに分布することが多く、10秒程度の周期で明るくなったり暗くなったりを繰り返します。
このようなオーロラは「脈動オーロラ」と呼ばれます。
形は一晩のうちにも移り変わります。
NOAAの説明では、夕方には光の筋が集まって、地平線から地平線までのびる弧をつくります。
真夜中が近づくと、弧は風に吹かれたカーテンのようにねじれ、揺れ始めます。
やがて弧が空全体に広がり、速く動きながら非常に明るくなることがあります。
NOAAは、これを「オーロラ・サブストーム」と呼ばれる現象のピークだと説明しています。
サブストームとは、太陽風から磁気圏へ流れ込んだエネルギーが一気に解き放たれ、オーロラが爆発的に広がる現象です(出典:国立極地研究所「北海道から目撃された異常に明るいオーロラの成因」)。
明け方になると、オーロラは雲のようなぼんやりした形に変わります。
このぼんやりした光は何時間も点滅を繰り返し、東から日が昇るころに消えていきます。
国立極地研究所も、拡散型オーロラや脈動オーロラはオーロラ嵐の後半、特に朝方に現れやすいと説明しています。
オーロラが動いて見えても、光っている酸素や窒素そのものが空を移動しているわけではありません。
国立極地研究所によると、粒子が降りてくる場所が次々に変わっているためです。
つまりオーロラの動きは、地球の周りの宇宙空間の状態が刻々と変わっていることを映し出しています。
オーロラがよく見えるのは北極と南極を囲む帯の下
オーロラを光らせる粒子は磁力線に沿って極の上空へ降りてくるため、オーロラが現れる場所は極を囲む輪のような形になります。
NOAAによると、オーロラは地球の磁極をおおよそ中心とする2つの楕円形をつくります。
この、その瞬間にオーロラが現れている領域を「オーロラオーバル」と呼びます。


オーロラを見るのに最もよい場所について、NOAAは北緯・南緯およそ60〜75度の楕円形の領域の下だと説明しています。
国立極地研究所は、オーロラが特に現れやすい地域を「オーロラ帯」と呼び、地磁気緯度60〜70度の範囲としています(出典:国立極地研究所 オーロラデータセンター「南極におけるオーロラ研究」)。
地磁気緯度とは、地図の緯度とは別に、地球の磁石の極(地磁気の極)を基準に測った緯度です。
地球の磁石の軸は、自転の軸から少しずれています。
粒子は磁力線に沿って降りてくるので、オーロラが現れる場所は地図の緯度よりも地磁気緯度と深く関係しています。
北半球のオーロラ帯は、カナダからアラスカ、シベリアの北の北極海、スカンジナビア半島の北、アイスランド、グリーンランドの南端を通って地球を一周しています。
南半球では、南極大陸の沿岸部をぐるりと通って南極海へと続いています。



宇宙から北極を見下ろすと、オーロラは極をぐるりと囲む光の輪に見えたんだ。
帯の真下なら1年の半分以上の夜に現れる
NOAAによると、北緯・南緯60〜75度付近の極域では、1年の半分を超える夜にオーロラを観測できます。
国立極地研究所によると、日本の南極観測の拠点である昭和基地は、オーロラ帯のちょうど真ん中に位置しています。
昭和基地では、1957年の建設の年からオーロラ観測が続けられています。
ただし、オーロラ帯の真下にいても、いつでも見えるわけではありません。
オーロラは夜空の中で光る淡い光なので、見るには空が暗いことが前提になります。
国立極地研究所によると、昭和基地では昼間の時間帯はオーロラオーバルの外側にあたるため、たとえ空が暗くてもオーロラは見えません。
夏の白夜の時期は空が明るく見えにくい
オーロラ帯の地域では、夏になると太陽が沈まない、あるいは沈んでも空が暗くならない白夜の季節があります。
NOAAは、オーロラ帯の緯度では夏の白夜がオーロラの観測を妨げると説明しています。
上空でオーロラが光っていても、空が明るいと見えないのです。
NOAAは、オーロラを見るための条件として、次の2点を挙げています。
- 空が晴れていて、雲がないこと
- 空が暗いこと
オーロラ帯の地域へ見に行くなら、白夜の季節を避け、夜が長く暗い時期を選ぶことになります。
そのうえで、天気が晴れるかどうかも見られるかどうかを左右します。
日本でもオーロラは見える?北海道や本州で見えた理由
日本は、ふだんオーロラが現れる帯からは遠く離れています。
それでも条件がそろえば、日本からもオーロラが見えます。
磁気嵐が強いとオーロラの帯が南へ広がる
オーロラの帯を赤道側へ広げるのが「磁気嵐」です。
磁気嵐は、太陽風中の磁力線の向きが長時間地球の磁場と反対になるなどして、地球の磁場が世界規模で数日間弱くなる現象です(出典:国立極地研究所「北海道から目撃された異常に明るいオーロラの成因」)。
太陽の爆発には、太陽の表面で起きる「太陽フレア」と、太陽の外側の大気(コロナ)から大量のプラズマが噴き出す「コロナ質量放出(CME)」があります。
塩川研究室の解説によると、このような爆発の「爆風」が強い太陽風となって地球にぶつかったときに、磁気嵐が起きます(出典:名古屋大学宇宙地球環境研究所 塩川研究室「オーロラと低緯度オーロラの解説」)。
このとき太陽風の中の磁力線が地球の磁力線と反対向きになっていると、太陽風から磁気圏へエネルギーが流れ込みやすくなります。
プラズマシートにより多くのプラズマがたまると、その地球側の端が地球に近づきます。
粒子が降りてくる磁力線の根元も赤道側へずれるため、オーロラはより低い緯度で光るようになります。
NOAAも、大きな磁気嵐のときにはオーロラの楕円が極から外側へ広がると説明しています。
大規模な現象のときには、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでもオーロラが見られることがあります。
日本のような低い緯度で見えるオーロラを「低緯度オーロラ」と呼びます。
塩川研究室によると、日本で見られるオーロラは、そのほとんどが赤い色をしています。
日本の古い記録では「赤気(せっき)」と呼ばれ、日本書紀の時代から江戸時代まで、北の空が赤く光る現象が報告されてきました。
赤く見える理由は、先ほどの「色と高さ」の関係で説明できます。
日本から遠く北の空を見ると、低い高さで光る緑や青は地平線の下に隠れて見えません。
高い高さで光る赤だけが、北の地平線近くに見えるのです。


2023年12月に北海道で見えた明るい赤いオーロラ
2023年12月1日、北海道の北部や東部の広い地域から、肉眼でも分かるほど明るい赤いオーロラが目撃されました(出典:国立極地研究所「北海道から目撃された異常に明るいオーロラの成因」)。
不思議だったのは、この日の磁気嵐の規模が決して大きくなかったことです。
国立極地研究所の片岡龍峰准教授を中心とする研究グループは、この謎を調べました。
手がかりになったのは、SNSを通じて集められた、多くの地点から市民が撮影したオーロラ写真です。
写真から、赤いオーロラが光っていた高さは400〜600kmと分かりました。
同研究所によると、通常の赤いオーロラが光る高さは200kmです。
それよりはるかに高い場所で光っていたことが、北海道の広い地域から見えた理由のひとつでした。
光る位置が高いほど、遠く離れた場所からも地平線の上に見えるからです。
もうひとつの手がかりは、太陽風の密度でした。
この日の太陽風は密度が極めて濃く、地球の磁気圏は押し縮められて小さくなっていました。
ふだんは磁気圏の中にある静止衛星の軌道(赤道上空約3万6,000km)が、磁気圏の外に出てしまうほどでした。
研究グループは、磁気圏が小さくなったことで、通常より地球に近い位置でサブストームが起きたことも突き止めました。
明るいオーロラが生まれたこと、光る高さが高かったこと、それが北海道から見やすい時間帯に起きたことが重なり、大きくない磁気嵐でも明るいオーロラが見えたのです。
この研究の論文は、2024年6月20日に学術誌「Geophysical Research Letters」で公開されました。
2024年5月のオーロラが赤ではなくマゼンタに見えた理由
2024年5月には、さらに規模の大きな現象が起きました。
NASAによると、この月には大きな太陽フレアとコロナ質量放出が続けて起き、地球ではこの20年で最も強い磁気嵐が発生しました(出典:NASA「NASA, NOAA: Sun Reaches Maximum Phase in 11-Year Solar Cycle」)。
2024年5月11日の磁気嵐を受けて、片岡准教授がX(旧Twitter)で撮影を呼びかけると、沖縄を含む日本全国からオーロラの写真が寄せられました(出典:国立極地研究所「2024年5月に日本に現れたオーロラの色の謎を解明」)。
研究グループは、このうち179点の写真を分析しました。
集まった写真には、2つの不思議な特徴がありました。
ひとつ目は、兵庫県のように緯度の低い地域からもオーロラが見えたことです。
研究グループは、各地点で写真に写ったオーロラの上端の見上げる角度をもとに、オーロラが光っていた位置を推定しました。
その結果、オーロラの上端の高さは1,000km以上だった可能性が高いと分かりました。
通常のオーロラは、光る高さが高くても600kmです。
2つ目は、色が低緯度オーロラでよく見られる赤ではなく、マゼンタ(赤紫)だったことです。
5月は夜が短く、地上が夜でも、上空の高いところにはまだ太陽の光が当たっていました。
その太陽の光を窒素分子イオンが受け止めて同じ色の光を出し直す現象(共鳴散乱)によって、青い光が加わっていたのです。


窒素分子イオンの光が青いことは、先ほどの色の節で説明したとおりです。
赤いオーロラに青い光が重なって、マゼンタに見えたことになります。
研究グループは、磁気嵐による大気の加熱などで、ふだんは窒素分子イオンがない1,000km以上の高さまで、窒素分子イオンが大量に舞い上がっていたと考えています。
この研究の論文は、2024年10月28日に学術誌「Scientific Reports」で公開されました。
国立極地研究所は、市民の写真によるオーロラ観測が初めて実現した例だとしています。
各地で空を見上げた人たちの写真が、オーロラの高さと色の謎を解く手がかりになりました。
オーロラの当たり年はある?太陽活動の周期との関係
オーロラが見えやすい時期には、太陽の活動の周期が関わっています。
ただし周期はあくまで目安で、特定の年に必ず見えるわけではありません。
太陽の活動は約11年ごとに強まったり弱まったりする
太陽は、活動の穏やかな時期と活発な時期を行き来しています。
NASAによると、太陽の磁石の極はおよそ11年ごとに入れ替わり、そのころに太陽は穏やかな状態から活発で荒れた状態へ移ります(出典:NASA「NASA, NOAA: Sun Reaches Maximum Phase in 11-Year Solar Cycle」)。
この周期を「太陽活動周期」と呼び、最も活発な時期を「極大期」、最も穏やかな時期を「極小期」と呼びます。
活動の目安になるのが黒点です。
黒点は、磁力線が集中しているために周りより温度が低くなっている太陽表面の領域です。
NASAの宇宙天気プログラムのディレクターは、極大期には黒点の数が増え、それに伴って太陽活動も増えると説明しています。
オーロラの活動にも、太陽の約11年周期に対応した変動があることが知られています(出典:国立極地研究所 オーロラデータセンター「南極におけるオーロラ研究」)。
塩川研究室の解説によると、大きな磁気嵐は太陽活動の極大期の前後数年間に起きやすくなります。
しかも極大の年そのものより、その1〜2年前と1〜2年後に大きな磁気嵐が起きることが知られています。
季節による差もあります。
塩川研究室によると、磁気嵐は統計的に3月と10月(春と秋)によく起きます。
地球の自転の軸と磁石の軸の傾きの関係で、春と秋には地球と太陽風の磁力線が反対向きになりやすいためと説明されています。
2024年10月にNASAとNOAAが極大期入りを発表した
2024年10月15日、NASA、NOAA、国際的な専門家による太陽活動周期予測パネルは、太陽が極大期に入ったと発表しました(出典:NOAA Space Weather Prediction Center「Joint Solar Maximum Announcement from NASA and NOAA」)。
いまの周期は、観測が続けられてきた周期の中で「第25太陽活動周期」と呼ばれています。
発表時点の見通しでは、極大期はさらに1年ほど続き、その後に活動が弱まっていく下降期に入るとされていました。
NOAAの担当者は、太陽活動がピークに達した月は、数か月から数年たたないと特定できないとも述べています。
ピークは、その後に活動が下がり続けたことを確かめてはじめて分かるからです。
この周期の活発さを示す出来事も、発表の中で挙げられています。
2024年5月3日から9日までの1週間に、NASAの太陽観測衛星は82回の顕著な太陽フレアを観測しました。
そのうち9回は、最も強い区分である「X級」のフレアでした。
2024年10月3日には、この周期でそれまでに最も強いX9.0のフレアが起きています。


NASAの発表によると、NOAAは極大期のあいだ、太陽嵐や磁気嵐がさらに起き、その後の数か月はオーロラを見る機会があると見込んでいました。
また、頻度は下がるものの、周期の下降期にもかなり大きな嵐がしばしば見られるとしています。
極大期を過ぎたからといって、大きな磁気嵐が起きなくなるわけではありません。
見られるかどうかは、その夜の磁気嵐しだい
太陽活動の周期は、大きな磁気嵐が起きやすい時期の目安にはなります。
一方で、実際にオーロラが見えるかどうかは、その夜に起きる磁気嵐の強さで決まります。
2023年12月の北海道の例のように、磁気嵐の規模が大きくなくても、いくつもの条件が重なって明るいオーロラが見えることもあります。
さらに、オーロラ帯の下と同じく、空が晴れていて暗いことも必要です。
磁気嵐が起きた時間帯が日本の昼間なら、日本からは見えません。
磁気嵐の情報は、宇宙天気予報で確かめられます。
日本では、情報通信研究機構(NICT)が宇宙天気予報のウェブサイトで、地球の周りの宇宙環境の情報を発信しています(出典:情報通信研究機構「宇宙天気予報」)。
NOAAの宇宙天気予報センターは、オーロラの位置と強さを30〜90分先まで予測する地図を公開しています(出典:NOAA Space Weather Prediction Center「Aurora – 30 Minute Forecast」)。
NICTのサイトには、宇宙天気予報はまだ発展途上の分野で、予報と実際の状況に差が出る場合があると明記されています。
大きな磁気嵐の知らせがあった夜は、北の空が開けた暗い場所で、低い空に赤い光がないか探してみてください。



日本からだと、オーロラは真上じゃなくて、北の地平線の近くにぼんやり赤く見えるはずなんだ。
FAQ
まとめ
オーロラは、太陽から吹き出した粒子が、地球の磁場と大気に受け止められて光る現象です。
その色や見える場所には、気体の種類と光る高さ、そして太陽の活動が関わっています。
分かっていること
- 太陽風の粒子が磁気圏で加速され、磁力線に沿って極の上空へ降り、酸素や窒素を光らせる
- 緑と赤は酸素原子、青やピンクは窒素の光で、赤は高い空、緑はその下、青はさらに低い空で光る
- 強い磁気嵐のときはオーロラの帯が赤道側へ広がり、高い空で光る赤い光が日本からも見える
数字を見るときの注意
- 光る高さや緯度の値は、説明する機関によって表記が異なる(地図の緯度と地磁気緯度も別のもの)
- 極大期の見通しは、2024年10月の発表時点のもの
北の空の赤い光は、はるか上空で起きている、太陽と地球のやりとりの結果でもあります。
国立極地研究所の解説は、オーロラのカーテンを「夜空に浮び出た地球の磁力線」と表現しています。
ふだんは目に見えない磁場の形を、この星は夜空に描き出して見せてくれているのかもしれません。
ASTRONOTEは「人類が地球の寿命を超え、宇宙のどこかで存在し続ける未来へ」という言葉を出発点にしています(発起人の想い)。
ただ、星々へ漕ぎ出す日が来るとしても、その前に知るべきことはまだこの星のまわりにたくさんあります。
太陽の風が吹きつける。
磁場がそれを受け止める。
大気がその一部を光に変える。
南極の基地で半世紀以上続く観測も、各地で夜空に向けられた市民のカメラも、その境目の姿を少しずつ明らかにしてきました。
出航の前に、自分たちの星を包む見えない帆の形を知ること。
オーロラの光は、その地図を夜空に描き続けています。
出典
- 国立極地研究所 オーロラデータセンター「南極におけるオーロラ研究」 https://polaris.nipr.ac.jp/~aurora/aboutAurora/aboutAurora_main.html
- 名古屋大学宇宙地球環境研究所 塩川研究室「オーロラと低緯度オーロラの解説」 https://stdb2.isee.nagoya-u.ac.jp/member/shiokawa/aurora_kaisetu.htm
- NOAA Space Weather Prediction Center「Aurora」 https://www.spaceweather.gov/phenomena/aurora
- NOAA Space Weather Prediction Center「Aurora – 30 Minute Forecast」 https://www.spaceweather.gov/products/aurora-30-minute-forecast
- 国立極地研究所「北海道から目撃された異常に明るいオーロラの成因」(2024年6月24日) https://www.nipr.ac.jp/info2024/20240624.html
- 論文:Magnetic Storm-Time Red Aurora as Seen From Hokkaido, Japan on 1 December 2023 Associated With High-Density Solar Wind, Geophysical Research Letters(2024年6月20日公開), DOI: 10.1029/2024GL108778
- 国立極地研究所「2024年5月に日本に現れたオーロラの色の謎を解明 ~日本全国から寄せられた写真を解析~」(2024年10月31日) https://www.nipr.ac.jp/info2024/20241031.html
- 論文:Extended magenta aurora as revealed by citizen science, Scientific Reports(2024年10月28日公開), DOI: 10.1038/s41598-024-75184-9 https://www.nature.com/articles/s41598-024-75184-9
- NASA「NASA, NOAA: Sun Reaches Maximum Phase in 11-Year Solar Cycle」 https://science.nasa.gov/science-research/heliophysics/nasa-noaa-sun-reaches-maximum-phase-in-11-year-solar-cycle/
- NOAA Space Weather Prediction Center「Joint Solar Maximum Announcement from NASA and NOAA」 https://www.spaceweather.gov/news/joint-solar-maximum-announcement-nasa-and-noaa
- 情報通信研究機構「宇宙天気予報」 https://swc.nict.go.jp/