ASTRONOTE 宇宙を知る。世界が変わる。
1 カシオペヤ座とは?北の空にWの形で並ぶ星座 2 いつ、空のどこを見れば見つかるのか 3 Wの形から北極星をたどる 4 Wの向こうには何があるのか 5 カシオペヤ座はどんな物語を背負っているのか 6 よくある質問 7 まとめ カシオペヤ座から広がる秋の夜空 8 出典

カシオペヤ座はどこに見える?Wの形から北極星を見つける秋の夜空の歩き方

カシオペヤ座はどこに見える?Wの形から北極星を見つける秋の夜空の歩き方
  • 北の空でWを探しているのに、どれがカシオペヤ座なのか分からない…
  • 図鑑ではWなのに、実際の空ではMに見えるんだけど?
  • そこから北極星をたどるって、どっちへどれだけ延ばせばいいの?

先に答えを書きます。
北極星は、Wの両端の辺を延ばして交わる点から、真ん中の星を通してその5倍だけ進んだ先にいます。

向きがMに見えるのは、あなたの見方が間違っているからではありません。
この星座は北極星のまわりを回るように見えるため、季節と時刻で傾きが変わります。

この記事は、宇宙の科学と宇宙産業の情報を一次情報と整合させて発信するASTROWORKS編集部がまとめています。

この記事で分かることは次のとおりです。

  • Wをかたちづくる5つの星の名前と明るさ
  • 秋から冬に、北の空のどのあたりを見ればよいか
  • Wから北極星までの向きと距離のたどり方
  • 同じ方向に重なっている星団・銀河・超新星の跡

読み終えるころには、次に晴れた夜、北の空に顔を向けただけで「あれだ」と指させるようになります。

ほしまる

ぼくは40年かけて太陽系を回ってきたけど、方角を見失いそうなときにいつも探したのが北極星だったよ。カシオペヤ座は、その北極星までの道しるべなんだ。

目次

カシオペヤ座とは?北の空にWの形で並ぶ星座

カシオペヤ座は、北の空でアルファベットのWをかたちづくる5つの星の並びです。

日本天文学会の『天文学辞典』は、この星座を「英文字のWの形に5個の星が並ぶ特徴的なパターンを示す星座」と説明しています。
さらに「秋から冬の北天でよく目立つ」「北極星を探す目印となる」とも書かれています(出典: 日本天文学会『天文学辞典』カシオペヤ座)。

つまり、この星座の役割は最初から2つあります。
ひとつは、秋から冬の北の空でいちばん見つけやすい目印であること。
もうひとつは、そこを起点に北極星へたどりつくための出発点であることです。

Wをかたちづくる星には、それぞれ名前がある

Wの5つの頂点には、それぞれギリシャ文字の符号が振られています。
Wの端から順に、β(ベータ)、α(アルファ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)と並びます。

このうち4つには、国際天文学連合(IAU)が正式な固有名を承認しています。
IAUの恒星名ワーキンググループがまとめた公認星名リストには、次の値があります。

  • カフ(Caph、β星)は2.28等
  • シェダル(Schedar、α星)は2.24等
  • ルクバー(Ruchbah、δ星)は2.66等
  • セギン(Segin、ε星)は3.35等

いずれも視等級で、リストにはあわせて承認日と位置も記載されています(出典: IAU Working Group on Star Names「IAU Catalog of Star Names」)。
等級は数字が小さいほど明るく、2等台なら街なかでも見つけやすい部類です。

真ん中のγ星には、IAUが承認した固有名がありません。
それでもこの星は、Wのちょうど中心を占めています。
欧州宇宙機関(ESA)のハッブル宇宙望遠鏡の解説は「The central point of the W is marked by a dramatic star named Gamma Cassiopeiae.」と書いています(出典: ESA/Hubble「The ghost of Cassiopeia」)。
日本語にすると、Wの中心の点は、ガンマ・カシオペヤという印象的な星が占めている、という内容です。

実際に空でたどるときは、まず2等台の3つ(カフ・シェダル・ルクバー)を見つけてください。
この3つがそろえば、残りのγ星とセギンは自然に線がつながります。

カシオペヤ座のWを構成する5つの星の並びと明るさの違いを示した星図
Wの5つの頂点の並びと明るさの差。点の大きさが視等級のイメージで、2等台のカフ・シェダル・ルクバーが先に見つかると、残りのγ星とセギンは線としてつながる。(図解はイメージです)

「星のならび」と「天球の区画」は別のもの

ここで、意外と混同されやすい話を整理します。
「Wの形」と呼ばれているのは星の並び方のことですが、天文学でいう星座は、実は空の「区画」です。

国立天文台の暦計算室は、星座について「星座の位置により星空の領域を区分する」ものだと説明しています(出典: 国立天文台暦計算室「こよみ用語解説 星座の名前」)。
つまりカシオペヤ座とは、5つの星そのものではなく、その5つを含む天球上の一区画を指します。

その区画の大きさも決まっています。
国立天文台の星座名一覧によれば、カシオペヤ座の学名は Cassiopeia、属格は Cassiopeiae、略符は Cas、面積は598.407平方度です。
面積とは「天球上でその星座が占める領域(広さ)を平方度で示した値」だと同じページに書かれています(出典: 国立天文台「星座名・星座略符一覧」)。

この区画分けを決めたのは国際天文学連合です。
同じページは、現在の88星座の名称と略符が1922年のIAU総会で採択されたこと、境界は1928年までの議論をもとにIAU総会で採択され、1930年にIAUが出版した書物 “DELIMITATION SCIENTIFIQUE DES CONSTELLATIONS” によって確定したことを記しています。

100年ほど前に空の住所が整理された、と考えると分かりやすいでしょう。
Wの形は目印、区画は住所。
この2つが重なっているのがカシオペヤ座です。

星の並びとしてのWと、天球上の区画としてのカシオペヤ座を並べて比較した図
左が星の並び、右が天球上の区画。天文学でいう星座は空の領域の区分で、カシオペヤ座の面積は598.407平方度と決められている。(図解はイメージです)

なぜ「カシオペア」ではなく「カシオペヤ」なのか

検索していると「カシオペア座」と「カシオペヤ座」の両方に出会って、どちらが正しいのか迷う方もいるかもしれません。
これは学術用語としての表記が決まっている、という話に落ち着きます。

『天文学辞典』が経緯を記録しています。
1925年(大正14年)の『理科年表』初版では「カシオペイア」でした。
昭和初期になって「カシオペア」または「カシオペヤ」という表記が出てきます。

そして1952年(昭和27年)、日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」と決めた際に、固有名詞はラテン語の発音に準拠するとして、Cassiopeia の日本語名は「カシオペヤ」とされました。
以後、学術用語界ではこれが使われています(出典: 日本天文学会『天文学辞典』カシオペヤ座)。

同じ辞典は、一般社会では現在「カシオペア」のほうが多く用いられているようだ、とも書き添えています。
そのうえで「もともと外国語なので一方だけが正しいということはない」と結んでいます。

学術表記は「カシオペヤ座」。
とはいえ「カシオペア座」と書いている本や記事が誤りというわけではありません。
外来語の日本語表記は、時代とともに変わっていくものです。

ほしまる

呼び名が2つあるって、なんだかこの星座らしいなと思うんだ。Wにも見えるしMにも見える星座だからね。

いつ、空のどこを見れば見つかるのか

方角は北です。
時期は秋から冬。
ここから、実際に外へ出たときに使える形へ落とし込んでいきます。

秋の宵に高く昇り、季節と時刻で向きが変わる

「見やすい季節」は、客観的に測れます。
星座が空のいちばん高いところ(子午線)を通る時刻を基準にする方法です。

国立天文台の星座名一覧には「位置の目安」という欄があり、これは「東京において20時(中央標準時)に、各星座のおよその中心が子午線を通過する時期」を示しています。
カシオペヤ座の欄には12月上旬とあります(出典: 国立天文台「星座名・星座略符一覧」)。
つまり12月上旬の夜8時ごろ、この星座は空でもっとも高い位置に来ます。
秋の宵から高く昇りはじめ、初冬にピークを迎える、というリズムです。

ここで、つまずきやすいポイントに触れておきます。
図鑑ではWなのに、空を見上げるとMに見える。
これは見間違いではありません。

北天の星は、北極星のまわりを回るように見えます。
『天文学辞典』は周極星について、北の空で「北極星の周りを反時計回りに回っているように見える」星のうち、地平線の下に沈まないものだと説明しています(出典: 日本天文学会『天文学辞典』周極星)。
カシオペヤ座もこの回転に乗っているため、時刻が進めば傾き、季節が変われば同じ時刻でも別の向きになります。

NASAのチャンドラX線天文台の星座解説も、この星座を「a zig-zag shape like an “M” or “W”」と表現しています(出典: Chandra X-ray Observatory「Constellation Cassiopeia」)。
MかWか、という書き方をしている時点で、向きが一定でないことが前提になっています。

自分が見る日と場所でどちらの向きになるかは、国立天文台暦計算室の「今日のほしぞら」で日付・時刻・観測地を入力すれば確かめられます。

北極星のまわりを回るカシオペヤ座の向きが、時刻と季節でWからMまで変化する様子を示した図
カシオペヤ座は北極星のまわりを反時計回りに回るように見えるため、季節と時刻で傾きが変わる。位置によってWにもMにも見えるのはこのため。(図解はイメージです)

日本から見ると、一年中沈まないのか

「カシオペヤ座は一年中見える」と書かれているのを目にしたことがあるかもしれません。
これは条件つきで正しく、全国一律に成り立つ話ではありません。

沈むか沈まないかを決めるのは、観測地の緯度と、星が天の北極からどれだけ離れているかの関係です。
国立天文台暦計算室の暦Wikiは「天の北極の高度はその場所の緯度に等しくなります」と書いています(出典: 国立天文台暦計算室「暦Wiki/天文航法/緯度の決定」)。
天の北極が地平線からその高さにあるなら、そこから同じ角度の範囲内にある星は、回っても地平線の下に届きません。

IAUの公認星名リストに載っている座標から、Wの4つの星が天の北極からどれだけ離れているかを計算すると、およそ26度から34度の範囲に収まります(座標の出典はIAU Catalog of Star Names)。

観測地の緯度が34度より高ければ、この4つはどれも沈みません。
逆に、緯度が低い場所ほど、Wの一部が地平線に隠れる時期が出てきます。
南の島へ行くほど条件が厳しくなる、というわけです。

さらに実際には、山や建物で北側の視界がふさがれていれば、理屈のうえで沈んでいなくても見えません。
自分の観測地でいつ昇っていつ沈むのかは、暦計算室の「今日のほしぞら」で場所を指定して確かめるのが確実です。

天の北極の高度と観測地の緯度の関係、周極星の範囲を示した側面図
天の北極の高度は観測地の緯度に等しい。Wの4星は天の北極からおよそ26度から34度の範囲にあるため、緯度が低い場所ほど地平線に隠れる時期が出てくる。(図解はイメージです)

街明かりの下で探すときのコツ

都市部だと星が数えるほどしか見えず、Wの形が浮かんでこないことがあります。
暗い星を探すときの基本は、国立天文台が流星群の観察方法として案内している内容がそのまま使えます。

同ページは次のように書いています(出典: 国立天文台「流星群の観察方法」)。

  • 目が慣れるまでしばらく(15分ぐらい)待つことも必要
  • できるだけ、街灯など人工の明かりが少ない場所を選ぶ
  • できるだけ空が広く見渡せる場所を選ぶことも重要
  • 望遠鏡や双眼鏡などの特別な道具は必要なく、肉眼で観察する

これをカシオペヤ座探しに置き換えると、手順はこうなります。
まず北側の視界が開けた場所に立ち、スマートフォンの画面を見ずに15分ほど待ちます。
街灯を背にして、直接目に光が入らない向きを選んでください。

目が慣れてきたら、いきなり5つ全部を探そうとしないでください。
2等台のカフとシェダルとルクバーだけを先に見つけると、残りは線としてつながります。
明るいものから順にたどるほうが、街なかでは確実です。

いつ、どこを見るかがそろって初めて意味を持つ

暦計算室の暦Wikiに、観察者にとって大事な一文があります。
「多くの星座は、時間を選べば、太陽に近づく1−2か月を除いてほぼ1年中見ることができます」「ただ星を眺めているだけでは季節はわからず、いつ・どこに見えるかも必要です」(出典: 国立天文台暦計算室「暦Wiki/季節/季節の星座」)。

同じページは、季節ごとの代表的な星座を挙げるなかで「北:こぐま座(北極星)、おおぐま座(北斗七星)、カシオペヤ座」というくくりを示しています。
春夏秋冬のどれかではなく、北という別枠。
そこに置かれているところが、この星座の性格をよく表しています。

ほしまる

「いつ・どこ」がそろって初めて星は道具になるんだ。ぼくも、ただ星を眺めていた時期より、位置と時刻を記録しはじめてからのほうが、ずっと遠くまで行けたよ。

Wの形から北極星をたどる

ここからがこの記事の中心です。
カシオペヤ座は「北極星を探す目印となる」と『天文学辞典』が書いているとおり、道しるべとして使えます(出典: 日本天文学会『天文学辞典』カシオペヤ座)。

両端の辺を延ばして交点をつくり、真ん中の星を通して5倍

まず、Wの両端の辺を使います。
Wの左端の2つの星(カフとシェダル)を結んだ線と、右端の2つの星(ルクバーとセギン)を結んだ線を、それぞれWの谷の側へ延ばしていくと、1点で交わります。

次に、その交点と、Wの真ん中のγ星を結びます。
この線を、γ星の側へそのまま延ばします。交点からγ星までの長さの5倍まで進んだところに、北極星があります。

相模原市立博物館は、この手順を「カシオペヤ座の両端の2つずつの星をそれぞれ結んで伸ばします。2本の線が交わった点と真ん中の星を結んでできる線を北へ5倍伸ばすと、北極星が見つかります」と説明しています(出典: 相模原市立博物館「10月星空情報『いろいろな方法で北極星を見つけよう』」)。

向きと距離は、座標でも確かめられます。
IAUの公認星名リストに載っている4つの星の座標から確認すると、天の北極は、シェダルとルクバーを結んだ線に対して、真ん中のγ星がある側にあります。Wの中央から天の北極までの見かけの距離はおよそ28度で、Wの横幅(カフからセギンまで約13度)の2倍あまりにあたります(座標の出典はIAU Catalog of Star Names)。
「交点からγ星までの5倍」と「横幅の2倍あまり」は、同じ場所を別のものさしで測った値です。

手順にまとめると、次の3ステップになります。

  • Wの両端の辺(カフ–シェダル、ルクバー–セギン)を、それぞれ谷の側へ延ばして交点をつくる
  • 交点と真ん中のγ星を結ぶ
  • その線をγ星の先へ、交点からγ星までの長さの5倍だけ延ばす

その先にある明るい星が北極星です。
定規は要りません。
交点からγ星までの短い線を1つの目盛りにして、それを5つ分だけ空にあてる、という感覚です。

カシオペヤ座のWから北極星までの向きと距離のたどり方を示した図
Wの両端の辺(カフ–シェダル、ルクバー–セギン)を谷の側へ延ばすと1点で交わる。その交点と真ん中のγ星を結び、γ星の先へ5倍延ばした先にあるのが北極星。(星の位置はIAU公認星名リストとSIMBADの座標にもとづく作図)

北斗七星とカシオペヤ座は、季節で使い分ける

北極星への道しるべは、実はもうひとつあります。
北斗七星です。

『天文学辞典』は北斗七星を「おおぐま座の腰から尻尾を形作る七つの星がつくる柄杓(ひしゃく)の形をしたパターン」と説明し、春から夏の北極星探しによい目印だと書いています。
そして秋から冬にはW型のカシオペヤ座が目印になる、と続けます。
以下の表の内容は、いずれも同じ辞典の記述にもとづきます(出典: 日本天文学会『天文学辞典』北斗七星、同 カシオペヤ座)。

目印見やすい季節星のならび
北斗七星春から夏おおぐま座の7つの星がつくる柄杓の形
カシオペヤ座秋から冬5つの星がつくるWの形

なぜ季節で分かれるのか。
IAUの公認星名リストの座標から、北斗七星の7星とカシオペヤ座の4星が天の北極のまわりでどの方向にあるかを計算すると、両者は約169度離れていました。
180度で正反対ですから、ほぼ向かい合っている配置です。
天の北極からの距離も、北斗七星が約28度から41度、カシオペヤ座が約26度から34度と近い範囲に収まります(座標の出典はIAU Catalog of Star Names)。

北極星をはさんで反対側にいるので、片方が地平線近くまで下がるとき、もう片方は高く昇っています。
正直なところ、どちらが使いやすいかはその夜の空次第です。
実際に外に立ったら、まず両方を探してみてください。
高いほうを使うのが、いちばん失敗しない選び方です。

天の北極をはさんで向かい合う北斗七星とカシオペヤ座、中央の北極星を実座標で描いた図
北斗七星とカシオペヤ座は天の北極をはさんでおよそ169度離れ、ほぼ向かい合っている。北斗七星の升の外側2星(メラク→ドゥーベ)を延ばした先にも北極星がある。(星の位置はIAU公認星名リストとSIMBADの座標にもとづく作図)

北極星が見つかると、方位と緯度が分かる

北極星を見つけると、道しるべ以上のものが手に入ります。
方位と、自分がいる場所の緯度です。

国立天文台暦計算室の暦Wikiは「現在では、北極星はほぼ真北の方向にあります」と書いています(出典: 国立天文台暦計算室「暦Wiki/地球/北と南」)。
同じページは、方位磁石が示す磁北が日本付近では真北から5度から9度ほど西にずれていることも記しています。
方位磁石よりも、北極星のほうが素直に真北を教えてくれる場面がある、というわけです。

「ほぼ」が付く理由もはっきりしています。
北極星は天の北極そのものではなく、少し離れた位置にあります。
『天文学辞典』は、北極星(こぐま座α星)を天の北極から約0.75度離れた位置に見える明るい星と説明しています(出典: 日本天文学会『天文学辞典』北極星)。
そのため北極星自身も、天の北極を中心に小さな円を描いて回っています。

もうひとつが緯度です。
暦Wikiの天文航法のページは「天の北極の高度はその場所の緯度に等しくなります」と述べ、江戸時代の書物に見られる「北極出地度数」とは天の北極の高度、すなわち緯度のことだと説明しています(出典: 国立天文台暦計算室「暦Wiki/天文航法/緯度の決定」)。
北極星の高度を測り、天の北極とのずれを補正すれば緯度が求まる、という手順です。

センサーや制御に関わる仕事をしている方なら、これが何をしているのか見当がつくかもしれません。
安定した既知の基準点を使って、系の絶対姿勢を校正しているわけです。
同じページは、天の南極には南極星にあたる天体がないため、南半球ではこの方法が使えないとも書いています。
基準点が存在しない側では校正できない、というのは、いまの機器でも変わらない制約です。

ほしまる

ぼくの姿勢制御も、決まった星を基準に「いま自分がどっちを向いているか」を測り直していたよ。空に固定点があるって、それだけでありがたいことなんだ。

Wの向こうには何があるのか

形をたどれるようになったら、次はその方向に何があるのかです。
肉眼では見えないものも含めて、この方向にはよく調べられた天体が並んでいます。

真ん中のガンマ星は、明るさが変わる星

Wの中心にあるγ星は、ただ真ん中にいるだけの星ではありません。

ESAのハッブル宇宙望遠鏡の解説は、この星を「unpredictably variable star」、つまり予測しがたい変化をする変光星だと紹介しています。
さらに「a blue-white subgiant variable star that is surrounded by a gaseous disc」とも書いています(出典: ESA/Hubble「The ghost of Cassiopeia」)。
日本語にすると、ガスの円盤に囲まれた青白い準巨星の変光星、という説明です。

同じ解説によれば、この星は太陽の19倍の質量を持ち、太陽の6万5千倍明るく輝いています。
そして時速160万kmという速度で自転しており、これは太陽の200倍以上にあたります。
この激しい自転が星をつぶれた形にし、星から円盤へ物質が噴き出す現象を引き起こしています。
そして解説は、この質量の放出が、観測される明るさの変化と関係していると述べています。

この種類の星には呼び名があります。
『天文学辞典』は、表面温度が1万度から3万度のB型星のうち、水素の輝線を示す(または以前に示した)ものをBe型星と呼ぶと説明しています。
eは emission line(輝線)の意味です。
高速で自転し、遠心力で放出されたガスが星のまわりに円盤状に分布していると考えられており、ガスの放出は活発な時期と静かな時期が交互に現れます(出典: 日本天文学会『天文学辞典』Be型星)。

厳密には異なりますが、イメージとしては、高速で回るローターから振り切られた物質が周囲に薄い環をつくり、その環の状態が変わるたびに見た目の明るさも動く、という構図です。

同じ方向に、近い星団と遠い銀河が重なっている

夜空を見上げると、すべての星が同じ距離にあるように見えます。
実際は、同じ方向に桁の違う距離のものが重なっています。
カシオペヤ座の方向は、その落差が分かりやすい場所です。

近いほうから見ていきます。
NASAのカルドウェル・カタログによれば、二重星団(Caldwell 14、NGC 869とNGC 884)は約7,500光年の距離にある2つの散開星団で、ペルセウス座とカシオペヤ座の明るい星のちょうど中間あたりに位置します。
見かけの明るさは5.3等と6.1等で、暗い場所なら肉眼で見えると書かれています。
何百もの高温で若い星を含み、北半球では晩秋から初冬にもっとも高く昇ります(出典: NASA Science「Caldwell 14」)。

もう少し遠くには、星が生まれている現場があります。
バブル星雲(Caldwell 11、NGC 7635)はカシオペヤ座にある散光星雲で、距離は約7,000光年、見かけの明るさは8.7等、差し渡しは約6光年です。
中心にある太陽の15倍の質量の星が吹き出す恒星風が、この泡をつくっています。
1787年11月にウィリアム・ハーシェルが見つけました(出典: NASA Science「Caldwell 11」)。

バブル星雲NGC 7635の観測画像
バブル星雲(NGC 7635)。中心にある太陽の15倍の質量の星が吹き出す恒星風が、差し渡し約6光年の泡をつくっている。 Credit: NASA

そして、桁がひとつ変わります。
NGC 147(Caldwell 17)は約250万光年の距離にある矮小銀河で、局所銀河群の一員です。
NASAの解説は、この銀河がカシオペヤ座の南の端、「Wの形」とアンドロメダ銀河のあいだに位置すると書いています。
見かけの明るさは9.5等で、暗い場所で小型望遠鏡を使えばとらえられます(出典: NASA Science「Caldwell 17」)。

7,500光年と250万光年。
同じ方向を見ているのに、300倍以上の距離差があります。
Wを見つけたあと、この奥行きを思い浮かべると、平らだった夜空が急に立体になります。

同じ視線方向に距離の異なる星団・星雲・銀河が重なっていることを示した奥行きの図
同じ方向を見ていても奥行きは大きく違う。約7,500光年の二重星団から約250万光年の矮小銀河NGC 147まで、300倍以上の距離差が重なっている。(図解はイメージです)

カシオペヤ座A、星が爆発した跡が残っている

この方向でもっともよく研究されている天体は、肉眼ではまったく見えません。
超新星残骸カシオペヤ座A(Cas A)です。

NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の解説によれば、カシオペヤ座Aは地球から約11,000光年の距離にあり、差し渡しは約10光年です。
地球から見て340年前の星の爆発によってつくられたもので、天の川銀河のなかで、大質量星の爆発による残骸としては最も若いことが知られています(出典: NASA Science「Webb Reveals Never-Before-Seen Details in Cassiopeia A」)。
この画像は、ウェッブの中間赤外線観測装置MIRIによるものです。

ここで注意したい点があります。
爆発の時期は、残骸の広がり方から逆算した推定値です。
チャンドラX線天文台は、残骸の膨張から求められる年齢が約336年で、西暦1680年ごろに観測されていたはずなのに、信頼できる観測記録が存在しないと記しています(出典: Chandra X-ray Observatory「Historic Supernovas」)。
同観測所の別の解説も「正確な日付は不明」としたうえで、この超新星は約330年前の夜空に現れたはずだと書いています(出典: Chandra X-ray Observatory「Cassiopeia A」)。

つまりカシオペヤ座Aは、歴史上その爆発が記録された超新星ではありません。
跡だけが残り、いつ光ったのかは残骸から読み取るしかない、という天体です。

そのチャンドラの解説によれば、この超新星は太陽の約25倍の質量を持つ星が核燃料を使い果たしたときに起きたと考えられています。
中心核は崩壊して中性子星という超高密度の天体になり、外層は猛烈な速度で吹き飛ばされました。

ウェッブの記事には、こうした爆発が人間の体と無関係ではないことを示す一節があります。
爆発は「the calcium we find in our bones and the iron in our blood」のような元素を星間空間にまき散らし、次の世代の星や惑星の材料になる、という説明です。
骨のカルシウムや血液の鉄が、かつてどこかの星の最期に由来している、ということです。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が中間赤外線でとらえた超新星残骸カシオペヤ座A
超新星残骸カシオペヤ座A。地球から約11,000光年、差し渡し約10光年で、天の川銀河のなかでも大質量星の爆発による残骸としては最も若い。 Credit: NASA/JPL-Caltech/STScI/CXC/SAO<br /> Animation: NASA/JPL-Caltech/Univ. of Ariz./STScI/CXC/SAO

ティコ・ブラーエが記録した、突然あらわれた星

カシオペヤ座には、もうひとつ超新星の跡があります。
そしてこちらには、記録が残っています。

チャンドラX線天文台の解説によれば、この残骸はデンマークの天文学者ティコ・ブラーエにちなんで名づけられました。
ブラーエは1572年に、この超新星を観測したと報告しています。
残骸は白色矮星の爆発によって生じたもので、天の川銀河のなかにあり、地球から約13,000光年の距離です。
差し渡しは約55光年で、カシオペヤ座に位置し、北半球から見えます(出典: Chandra X-ray Observatory「Tycho’s Supernova Remnant」)。

明るさについて、同じ解説はこう書いています。

Because of its proximity and intrinsic brightness, the supernova was so bright that it could be seen during the daytime with the naked eye.

(出典: Chandra X-ray Observatory「Tycho’s Supernova Remnant: Exploding Stars and Stripes」)

この一文は、距離が近く、もともとの明るさも大きかったため、その超新星は昼間でも肉眼で見えるほど明るかった、と述べています。
夜空に見慣れない星が現れ、しかも昼でも見える。
当時の人がどれほど驚いたかは、想像しやすいところです。

チャンドラの観測は、この残骸にX線の「縞模様」が並んでいることを明らかにしました。
解説によれば、この縞は、超新星残骸が地上最強の加速器であるLHCの100倍のエネルギーまで粒子を加速できることを示す、最初の直接的な証拠かもしれないとされています。
乱流と磁場が強まった領域が残骸にあることは予想されていましたが、縞模様として検出されたのは予想外だった、とも書かれています。

400年以上前に肉眼で記録された星が、いまはX線で読み解かれている。
同じひとつの現象を、時代ごとに違う「目」で見てきた記録が、この星座に重なっています。

ほしまる

見えないものが、いちばんよく調べられている。ぼくが宇宙で覚えたことのひとつだよ。

ティコの超新星残骸をX線でとらえた観測画像
ティコの超新星残骸。1572年にティコ・ブラーエが観測した超新星の跡で、白色矮星の爆発によって生じた。地球から約13,000光年、差し渡し約55光年。 Credit: MPIA/NASA/Calar Alto Observatory

カシオペヤ座はどんな物語を背負っているのか

星座の名前には、語り継がれてきた物語がついています。
科学的な事実とは別のものとして、そういう話が残っている、という距離感で読んでください。

チャンドラX線天文台の星座解説によれば、カシオペヤはアフリカ北岸の国、アイティオピア(Aethiopia)の王妃の名前です。
王妃は、自分と娘のアンドロメダはネレイデス(海の女神テティスに仕える50人の海の妖精)よりも美しいと自慢しました。
ネレイデスは海神ポセイドンに罰を求め、ポセイドンは王国を滅ぼすために海の怪物を伴う洪水を送り込みます。

王妃の夫ケフェウス王が神託を求めると、ポセイドンをなだめて怪物を止める唯一の方法は、アンドロメダを生け贄に捧げることだと告げられました。
崖につながれたアンドロメダは、彼女を見て一目で恋に落ちた英雄ペルセウスによって救われます(出典: Chandra X-ray Observatory「Constellation Cassiopeia」)。

この物語のおもしろいところは、登場人物がそろって空に並んでいる点です。
チャンドラの別の記事は、秋に北半球の夜空でこの「王家の一族」が再会すると書いています。
カシオペヤ座(王妃)とケフェウス座(王)は北極星の近くに並び、アンドロメダ座(王女)とペルセウス座、ペガスス座が昇ってきます(出典: Chandra X-ray Observatory「Fall Constellations: A Royal Family Reunion in the Chilly Night Sky」)。
先ほどの二重星団がカシオペヤ座とペルセウス座の中間にあったのも、この配置の産物です。

Wの形が何を表しているかについても、解説があります。
チャンドラの星座解説は、この星座がカシオペヤを玉座に縛りつけた姿、あるいは籠に押し込められた姿を表すとされていると書いています。
そして周極の位置にあるため、カシオペヤは時に逆さ吊りの、きわめて不名誉な姿勢で空に掛かることになる、と続けます。
別のチャンドラの資料では、このWの形をギリシャ・ローマ神話が王妃の玉座と見なした、とも説明されています(出典: Chandra X-ray Observatory「Cassiopeia A」)。

高慢を罰せられた王妃が、一晩じゅう北極星のまわりを回り続け、ときどき逆さになる。
物語の側から見ると、この星座が向きを変えることにも意味が与えられていた、というわけです。

秋の北の夜空に並ぶカシオペヤ座・ケフェウス座・アンドロメダ座などの配置図
10月中旬21時頃の東京の星空(北の空を中心にトリミング)。北極星の近くにカシオペヤ座とケフェウス座、東寄りにペルセウス座・アンドロメダ座・さんかく座、その下に秋の四辺形(ペガスス座)が並ぶ。 Credit: 国立天文台

よくある質問

カシオペヤ座はいつ、どの方角に見えますか。

北の空です。
日本天文学会の『天文学辞典』は「秋から冬の北天でよく目立つ」と書いています。

国立天文台の星座名一覧によれば、東京で20時にこの星座の中心が子午線を通過するのは12月上旬です。
ただし、実際に何時にどの高さに来るかは日付と観測地で変わるため、暦計算室の「今日のほしぞら」で確かめるのが確実です。

Wではなく、Mの形に見えるのはなぜですか。

北天の星は北極星のまわりを回るように見えるためです。
『天文学辞典』は周極星について、北の空で北極星の周りを反時計回りに回っているように見える星のうち、沈まないものだと説明しています。

この回転に乗っているので、時刻が進めば傾き、季節が変われば同じ時刻でも向きが変わります。
NASAのチャンドラX線天文台の解説も、この星座を「MまたはWのようなジグザグの形」と表現しています。
Mに見えたときも、見つけているものは同じです。

カシオペヤ座に1等星はありますか。

IAUが固有名を承認している星に限ると、いちばん明るいのはシェダルの2.24等で、次がカフの2.28等です。
ルクバーは2.66等、セギンは3.35等でした。

いずれも2等台から3等台で、1等星として扱われる明るさの星は含まれていません。
ただし真ん中のγ星は、ESAが「予測しがたい変化をする変光星」と説明している星で、いつも同じ明るさとは限りません。

カシオペヤ座から北極星を探す方法と、北斗七星から探す方法は、どちらが確実ですか。

どちらも同じ北極星にたどりつきます。
IAUの座標から計算すると、両者は天の北極のまわりで約169度離れており、ほぼ向かい合った配置です。

そのため、片方が地平線近くまで下がるとき、もう片方は高く昇っています。
『天文学辞典』は春から夏は北斗七星、秋から冬はカシオペヤ座が目印になると書いています。

実際には、そのとき空で高いほうを使うのがいちばん失敗しません。
手順は本文の「Wの形から北極星をたどる」にまとめています。

まとめ カシオペヤ座から広がる秋の夜空

分かっていることを整理します。

  • カシオペヤ座は北の空でWの形に並ぶ5つの星で、秋から冬によく目立ち、北極星を探す目印になる(日本天文学会)
  • 北極星は、Wの両端の辺を延ばした交点と真ん中のγ星を結び、その5倍だけ延ばした先にある(相模原市立博物館)。距離はWの横幅の2倍あまり(IAUの座標から計算)
  • 北極星はほぼ真北にあり、その高度は観測地の緯度にほぼ等しい(国立天文台)
  • 同じ方向に、約7,500光年の二重星団から約250万光年の矮小銀河まで重なっている(NASA)
  • カシオペヤ座Aの爆発は約340年前と推定されるが、信頼できる観測記録は残っていない(NASA・チャンドラ)

自分の条件で確かめる必要があることも書いておきます。

  • その日その時刻にWがどの向きになるか
  • 自分の観測地の緯度で、Wが沈む時期があるかどうか

どちらも、国立天文台暦計算室の「今日のほしぞら」で日付・時刻・観測地を指定すれば確認できます。

今夜やることは、ひとつだけで足ります。

北側の視界が開けた場所に立って15分待ち、2等台の3つの星を見つけて線をつなぐ。
それができたら、両端の辺を延ばした交点から真ん中の星を通して、5つ分だけ目を動かしてみてください。
そこに座っている静かな星は、40年前も1572年も、同じ場所で回り続けていた星です。

出典

ほしまる ほしまる

月食も流星群も、探査機の最前線も。観測のコツはぼくにおまかせ!

執筆・監修|ASTRONOTE編集部(宇宙物理学専攻)
掲載内容は公開時点の情報です。
CAREER この宇宙を、仕事にする。 観測・解析・衛星運用。宇宙で働くための実践情報は、姉妹サイト ASTROWORKS でお届けしています。 姉妹サイト ASTROWORKS へ ↗