晴れた夜、外に出て、明るい星をどれかひとつ選んでみてください。
その星は、必ずどこかの星座に属しています。例外はありません。
「どの星座にも入らない星」というものは、いまの空には存在しないのです。
結論から書きます。
現代の天文学でいう星座は、星をつないだ形ではありません。天球(地球から見た空全体を仮想的な球面に見立てたもの)を隙間なく分けた「領域」です。
国際天文学連合(IAU)が88の星座を定め、その境界は赤経・赤緯(天体の経度・緯度にあたる座標)に沿った直線で引かれています。
この定義を先に押さえると、占いの十二星座との関係も、夜空での探し方も、一本の筋で理解できます。
この記事は、宇宙の科学と宇宙産業の情報を一次情報と整合させて発信するASTROWORKS編集部がまとめています。
この記事で分かることは、次の4点です。
- 星座が「形」ではなく「領域」である理由と、その使われ方
- メソポタミアから1930年の境界確定までの積み上がり
- 黄道十二宮と天文学の星座がずれている理由
- 春夏秋冬それぞれの目印から星座をたどる手順
読み終える頃には、次に晴れた夜、空のどこを最初に見ればよいかが決まっているはずです。
ほしまるぼくは40年かけて太陽系を旅してきたけれど、位置を伝えるときはいつも星座の名前を使っていたんだ。形の話じゃなくて、区画の話。ここが分かると、夜空が急に整理されるよ。
星座は「形」ではなく、空の「区画」だった
星座と聞いて思い浮かぶのは、星をつないだ形かもしれません。けれど、天文学が採用したのは領域のほうでした。


国立天文台の暦計算室は「国際天文学連合では88の星座が定められています。星座は単に形を表わすだけはなく、星の位置を示す天空の領域区分としても使われます」と記しています(国立天文台 暦計算室・こよみ用語解説「星座の名前」)。
形が先にあったのは事実です。ただ、順序を取り違えると、この先の話がすべて噛み合わなくなります。
空の「住所」として使われている
境界が決まっているからこそ、星座は位置を伝える道具になります。「この天体はおうし座にあります」といえば、それだけで天球上のおおよその方向が伝わるからです。
厳密には異なりますが、イメージとしては都道府県のような区画に近いものです。「静岡県にある」といえば場所が絞り込めるのと同じ理屈。
違うのは、空の区画には高さも奥行きもないことです。指しているのは、視線の方向だけ。
領域である何よりの証拠は、面積が数値で出せることです。国立天文台の一覧は、最も広いうみへび座が1302.844平方度、最も狭いみなみじゅうじ座が68.447平方度と示しています(国立天文台 星座名・星座略符一覧(面積順))。
平方度とは、天球上で1辺が1度の正方形が占める広さにあたる単位です。広さの差は約19倍にもなります。
星をつないだ形しか決まっていなければ、「広さ」という概念そのものが成り立ちません。
北斗七星は、実は星座ではない
星をつないだ形と、公式の星座は、天文学でははっきり区別されています。
国立天文台は「現在の『星座』は、名称、略号、星座の境界が、国際天文学連合(IAU)によって決められていて(constellation)、その数は88あります。星どうしを結んでできる形、北斗七星や夏の大三角等のアステリズム(asterism)とは区別されます」と説明しています(国立天文台「88星座と国際天文学連合」)。
アステリズムとは、星をつないでできる目立つ並びのことで、日本語では「星群」と呼ばれます。
あの有名な北斗七星も、88星座には数えられていません。「より大きな領域に広がる星座、おおぐま座の一部に含まれています」(国立天文台「北斗が建す深宇宙への航路」)。
一方の境界は、機械的に決まっています。「星座の境界は赤経・赤緯の線に沿う直線で区切られ、恒星は必ずどれか一つの星座に重複なく属することになりました」。
IAUの決定事項として国立天文台が挙げているのは名称・略号・境界の3つで、星を結ぶ線の引き方はそのなかに挙げられていません(出典: 国立天文台「88星座と国際天文学連合」)。NASAの解説ページも、時代や文化によって星座の名前も数も違っていたと説明しています(NASA Space Place “What Are Constellations?”)。
確定しているのは、境界のほうなのです。
同じ星座の星は、隣同士ではない
星座の星は、宇宙空間で寄り集まっている仲間ではありません。NASAの解説ページは、星座を作る星々は互いにまったくつながっておらず、近いものもあれば非常に遠いものもあると説明しています(NASA Space Place “What Are Constellations?”)。
同じ星座に入るのは、地球から見た方向がたまたま近い。ただそれだけの理由です。
距離の数字を見ると実感しやすくなります。オリオン座の一等星ベテルギウスについて、国立天文台は2018年のギャラリー記事で「地球から約500光年と比較的近い位置にある」と紹介しました(国立天文台 ギャラリー「アルマ望遠鏡がとらえたベテルギウス」)。
ただし、この距離には研究による幅があります。2020年に発表されたJoyceらの研究は、恒星進化・星震学・流体力学のモデルを組み合わせ、168パーセク(誤差は上に27、下に15)という独立した推定値を示しました。
光年に直すと、およそ550光年です(出典: Joyce, M. et al., “Standing on the shoulders of giants: New mass and distance estimates for Betelgeuse through combined evolutionary, asteroseismic, and hydrodynamical simulations with MESA”, The Astrophysical Journal 902巻, arXiv:2006.09837)。数百光年という桁は共通していても、ひとつの確定値があるわけではありません。
しかも、星座の領域は視線の方向に沿ってどこまでも続いています。からす座の領域には、相互作用銀河NGC 4038とNGC 4039という、恒星よりはるかに遠い天体も含まれます(国立天文台「北斗が建す深宇宙への航路」)。
つまり星座の形は、地球という一点から見たときにだけ成り立つ見かけの配置です。別の恒星系から同じ星々を眺めれば、見慣れた形はどこにも見当たりません。
88という数は、どうやって決まったのか
星座は誰かが一度に作ったものではありません。
名前が決まった段階と、境界が決まった段階も別です。


骨格はこの4段階です。
- 古代メソポタミアからギリシャにかけて、星の並びに名前と見立てが与えられた
- 2世紀のプトレマイオスが48星座として書物にまとめた
- 大航海時代以降に南天の星座が加わり、数も境界も乱れた
- 1922年から1930年にかけて、国際天文学連合が名称・略号・境界を統一した
天文学が本当に必要としていた境界の確定は、最後の20世紀まで待つことになります。
見立ての始まりと、48星座という原型
日本天文学会の天文学辞典は、星座を「天球上の星の並びを人、動物、物などに見立てて呼び名をつけたもの」と定義したうえで、「古代メソポタミア文明が起源とされるが、さまざまな文明がさまざまな時代にそれぞれの星座を作り上げた」と説明しています(日本天文学会 天文学辞典「星座」)。
「起源とされる」という書き方には含みがあり、確定した年代を示す表現ではありません。
同じ辞典は「北天の多くの星座のルーツは古代ギリシャ文明にあるが、南天の星座は、16世紀の大航海時代以降に作られたものに由来する」とも整理しています。
北天と南天では、由来する時代がまったく違うのです。
見立ての動機も記録されています。
国立天文台は、穀物の収穫時期や雨期を知り、星を頼りに船をこぎ出すという営みから「思い思いに星々を結んでは、さまざまな動物や器物に見立て名前をつけていました」と説明しています(国立天文台「88星座と国際天文学連合」)。
日本にも独自の見立てがあり、おうし座のプレアデス星団は「すばる」、オリオン座の三つ星は「みつぼし」、うしかい座のアークトゥルスは「麦星」「麦刈り星」と呼ばれました(国立天文台 暦Wiki「季節の星座」)。
まとまった記録として残る最初の体系が、いまへ直接つながっています。
「星座についてのまとまった記載は、アレクサンドリアの学者プトレマイオスが紀元150年頃にまとめた『アルマゲスト』に見られます。これには、黄道に沿った12の星座をはじめとする48の星座が記されています」(同記事)。
アルマゲストは、2世紀ごろにまとめられた古代天文学の集大成にあたる書物です(国立天文台 暦Wiki「アルマゲスト」)。
この48星座は、いまの一覧にも印として残っています。
ただし注意書きがあり、「りゅうこつ座、とも座、ほ座はアルゴ座に分類されています」(国立天文台 暦計算室・こよみ用語解説「星座の名前」)。
ひとつの大きな船の星座が、現在は3つに分かれているわけです。
黄道に沿った12の星座が最初から含まれていた点も見逃せません。
太陽の通り道にある星座は、暦を作る実務の道具でもありました。
大航海時代の乱立と、1930年の線引き
北半球から見えなかった空を埋めたのが、大航海時代以降の航海者と天文学者でした。
国立天文台は当時をこう記しています。
「南半球へ進出した航海者や、天文学者たちが、次々と新しい星座を考案するようになったのです。(中略)やがては天文学者の経済的後援者である国王や貴族にちなんだ小さな星座まで加えられるようになりました」。
結果は混乱でした。
「この星座の新設ブームによって、星座の境界線は曲がりくねり、既存の星座と同じ位置に新たな星座が重ねられ、夜空の星はいくつもの星座に属するという大混乱がもたらされ、それが19世紀初め頃まで続きました」(同記事)。
ひとつの星が複数の星座に属する状態では、位置を示す道具として使えません。
このときの名残は、いまも星座名として残っています。
ぼうえんきょう座、けんびきょう座、らしんばん座、とけい座、ポンプ座、コンパス座(国立天文台 暦計算室・こよみ用語解説「星座の名前」)。
神話ではなく、近代の道具から取られた名前です。
整理が必要になった理由も明確でした。
「望遠鏡を使った天体観測が盛んになった18世紀以降には、より暗い恒星や変光星の名称を決めたり位置を表したりするために、標準的な星座の名前と星座の境界を明確にする必要が生じたのです」。
そして1919年にIAUが発足し、乱立した星座の整理が最初の任務のひとつに掲げられます。
確認できた年で並べると、こうなります。
- 1922年の第1回IAU総会で、整理された88の星座名と略号について合意された
- 1925年の第2回総会で、星座の境界線が提案された
- 1928年の第3回総会で、その境界線が採択された
- 1930年に『Délimitation scientifique des constellations(星座の科学的な境界)』(デルポルテ著、仏語)として出版された
以上はすべて国立天文台「88星座と国際天文学連合」の記載によります。
名前の年と境界の年が別であることが分かります。
出版に至る経緯には、実務的な配慮も残っています。
日本天文学会の天文学辞典は、境界の出版費用をIAUが負担したこと、提案者であるベルギー王立天文台のデルポルテが新たな境界を引いたこと、そして「境界変更により、従来から知られている変光星の名称が変わらないことなどをエール天文台が確認した」ことを記しています(日本天文学会 天文学辞典「星座」)。
既存の天体名を壊さないよう検証したうえでの確定でした。
なお、和訳名にも経緯があります。
「88星座の和訳名は、学術研究会議(現在の日本学術会議)によって考案・決定され、同会議が1944年に出版した『天文術語集』の中に記載されています。それがさらに改訂され、ひらがなまたはカタカナで表記することとされました」(国立天文台「88星座と国際天文学連合」)。
誕生日の星座は、なぜ空とずれているのか
誕生日で決まる星座と、空に区切られた星座は、そもそも別の仕組みです。
どちらが正しいかという話ではありません。
黄道の区切り方が違うので、指しているものが違います。



ぼくも最初は同じものだと思っていたんだ。でも調べてみたら、片方は「等分」、もう片方は「実際の領域」だったよ。
等分された宮と、実測された領域
国立天文台の暦Wikiは、黄道十二宮を「太陽・月・惑星の通り道である黄道を30°ずつ12個に等分割した領域のこと」と定義し、「十二星座とも対応していますが、星座の大きさにはよらず、等間隔に分けています」「おもに占星術の分野で使われます」と補足しています(国立天文台 暦Wiki「黄道十二宮」)。


並べると違いがはっきりします。
| 観点 | 黄道十二宮(占いの十二星座) | 天文学の星座 |
|---|---|---|
| 区切り方 | 黄道を30度ずつ等分割 | 赤経・赤緯に沿う直線で天球を分割 |
| 大きさ | すべて等しい | ばらばら(1302.844〜68.447平方度) |
| 数 | 12 | 88 |
| 主な使いみち | おもに占星術 | 天体の位置表示と命名 |
出典は国立天文台 暦Wiki「黄道十二宮」および国立天文台 星座名・星座略符一覧(面積順)です。
等分割と実測の領域は、そもそも一致しようがありません。
同じ名前が使われているために混同されているだけです。
2000年かけて、空がずれた
もうひとつのずれは、時間が生み出しました。
地球の自転軸は、公転面に対する傾きを保ったまま、約26000年の周期で自転とは逆向きに回転しています(国立天文台 暦Wiki「歳差」)。
これが歳差です。
同じページは「この現象はこまが首を振りながら回転する現象によく似ています」と説明しています。
回っているこまの軸が、ゆっくり円を描く動き。このイメージがいちばん近いでしょう。
自転軸が動けば、それを基準に決めた春分点も動きます。
春分点とは、天球上で太陽が南から北へ天の赤道を横切る点で、座標の原点として使われるものです。
ずれの大きさも記録されています。「歳差により春分点は1年で約50″ずつ前進しますから、星座の黄道座標は72年ほどで1°、2150年ほどで30°ずれることになります」(国立天文台 暦Wiki「黄道十二宮」)。
30度は、十二宮ひとつ分の幅です。
その結果がこれです。「春分点は現在ではうお座のあたりにありますが、黄道十二宮が成立したころはおひつじ座にありました。このため、今でも春分点にはおひつじ座の星座記号が用いられています」(同ページ)。
NASA/JPLの解説資料も、地球の歳差によって、占星術の「サイン」が星座およそ1つ分だけ西へずれていると説明しています(NASA/JPL Night Sky Network “Exploring Our Solar System” toolkit)。
誕生星座そのものが間違いというわけではありません。
成立した時代の空を、いまもそのまま使い続けているだけ。
ずれているのは、その後に経った時間のほうです。
黄道には、13番目の星座がある
領域として境界を引いた結果、黄道が横切る星座は12では収まらなくなりました。
NASA/JPLの解説資料には、こうあります。
It is acknowledged that Ophiuchus is the “13th constellation” along the ecliptic: the apparent path of the Sun across the sky.
NASA/JPL Night Sky Network, “Exploring the Solar System ToolKit”
へびつかい座は黄道、すなわち空を横切る太陽の見かけの通り道に沿った「13番目の星座」として認められている、という内容です。
占いの区分を変えたという意味ではありません。
天文学の境界線に照らすと、太陽の通り道がへびつかい座の領域も通る、という事実の確認です。
国立天文台の面積順一覧では、黄道十二宮と関係がある星座に印が付きますが、へびつかい座(948.340平方度)にその印はありません(国立天文台 星座名・星座略符一覧(面積順))。
ただし、へびつかい座自体はプトレマイオスの48星座に含まれています(国立天文台 暦計算室・こよみ用語解説「星座の名前」)。
古くから知られていながら、十二宮の枠には入っていない星座なのです。
同じNASA/JPLの資料は、占星術のサインが1つ30度と決まっているのに対し、天文学の星座は境界の大きさがばらばらなので、太陽が各星座の前を通過する期間も星座ごとに違うと指摘しています。
13という数字は、煽るための話ではありません。
等分をやめて実際の領域で線を引いた、その当然の帰結です。
次に晴れた夜、どこから見ればいいのか
星座はひとつずつ覚えるものではなく、明るい目印から広げるものです。
まず前提を。国立天文台の暦Wikiは「多くの星座は、時間を選べば、太陽に近づく1−2か月を除いてほぼ1年中見ることができます。したがって、ただ星を眺めているだけでは季節はわからず、いつ・どこに見えるかも必要です」と説明しています(国立天文台 暦Wiki「季節の星座」)。
「春の星座」は、その季節にしか存在しないという意味ではなく、その季節の夜に見やすい位置へ来るという意味です。
以下の「位置の目安」は、東京において20時(中央標準時)に、その星座のおよその中心が子午線を通過する時期です(国立天文台 星座名・星座略符一覧(面積順))。
そのとき、星座は真南で最も高くなります。



星をひとつずつ覚えようとすると挫折するよ。明るい目印を1個決めて、そこから線を伸ばすのがいちばん早いんだ。
春は北斗七星、夏は大三角
春の出発点は、北の空の柄杓です。国立天文台はこう説明しています。「柄杓の”升”の先端を伸ばすと北極星を見つけられる(中略)そして柄の緩やかなカーブを延長した線は、うしかい座のアルクトゥルス、おとめ座のスピカという二つの1等星を結びます。北天に発して空を渡り南の空まで伸びる『春の大曲線』は、小さな四辺形にたどり着きます。からす座です」(国立天文台「北斗が建す深宇宙への航路」)。
手順に直すと、こうです。
- 北斗七星の升の先端を伸ばして北極星(こぐま座α星、2.0等)を確認する
- 柄のカーブをそのまま南へ延長してアークトゥルス(うしかい座α星、マイナス0.0等)に届く
- さらに延長してスピカ(おとめ座α星、1.0等)、その先の小さな四辺形がからす座
星の名前と等級は国立天文台 暦計算室・こよみ用語解説「おもな恒星」によります。アークトゥルス、スピカ、しし座β星のデネボラ(2.1等)を結ぶと春の大三角です。
20時ごろ南で最も高くなるのは、おおぐま座が5月上旬、おとめ座が6月上旬、うしかい座が6月下旬。空を大きく横切る曲線なので、視界の広い場所を選ぶと追いやすくなります。


夏は、頭上近くに大きな三角形が現れます。夏の大三角を作るのは、こと座α星のベガ(0.0等)、わし座α星のアルタイル(0.8等)、はくちょう座α星のデネブ(1.2等)(同ページ)。
ベガが七夕伝説の織姫星、アルタイルが彦星(牽牛星)とも呼ばれるとも記されています。七夕の話を知っていれば、2つはすでに知っている星です。
国立天文台は8月の空をこう案内しています。「8月の日没後、空がすっかり暗くなる宵の時間帯には、空の高い場所に夏の大三角が見えます。(中略)空が十分に暗い場所ならば、夏の大三角のあたりから南の空へと続く天の川の淡い光も見えることでしょう」(国立天文台 東京の星空・カレンダー・惑星(2025年8月))。
天の川が見えるかどうかは、空の暗さの目安にもなります。
20時ごろ南で最も高くなるのは、こと座が8月下旬、わし座が9月上旬、はくちょう座が9月下旬。
真上に近い高さなので、寝転がって見上げるほうが首は楽です。


秋は四角形、冬は三つ星
秋は、正直にいうと難易度が上がります。国立天文台は「11月の宵の南の空には秋の星座が見えています。秋の星座には明るい星が少ないのですが、東の空からは明るい星の多い冬の星座たちが昇ってきつつあります」と書いています(国立天文台 東京の星空・カレンダー・惑星(2025年11月))。
目印になる一等星が乏しく、春や夏と同じやり方は通用しません。
手がかりは明るさではなく形です。暦Wikiは秋の星座として「秋の四辺形、ペガスス座」を挙げています(国立天文台 暦Wiki「季節の星座」)。ペガスス座は1120.794平方度と広く、20時ごろ南で最も高くなるのは10月下旬。
四角形を見つけたら、隣のアンドロメダ座(722.278平方度、11月下旬)へ視線を伸ばします(面積と時期は国立天文台 星座名・星座略符一覧(面積順))。
秋にうまくいかなくても、腕のせいではありません。空の側の事情です。


初めての1回で成功させたいなら、冬から始めるほうが確実でしょう。国立天文台は1月の空を「宵の空は、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、オリオン座のリゲルと結ぶ『冬のダイヤモンド』にオリオン座のベテルギウスと木星が加わって、明るい星でにぎやかです」と紹介しています(国立天文台 東京の星空・カレンダー・惑星(2026年1月))。
起点はオリオン座の三つ星です。ほぼ等間隔に3つ並ぶ星は、他に見間違えるものがありません。日本でも古くから「みつぼし」と呼ばれてきました(国立天文台 暦Wiki「季節の星座」)。
- 三つ星の左上に赤いベテルギウス(オリオン座α星、極大0.0等)、右下に青白いリゲル(オリオン座β星、0.1等)
- ベテルギウスから左下へシリウス(おおいぬ座α星、マイナス1.5等)
- ベテルギウスとシリウスからプロキオン(こいぬ座α星、0.4等)を結んで冬の大三角
等級は国立天文台 暦計算室・こよみ用語解説「おもな恒星」によります。シリウスは同ページに挙げられたおもな恒星のなかで最も明るく、迷いようがありません。
20時ごろ南で最も高くなるのは、オリオン座が2月上旬、おおいぬ座が2月下旬、こいぬ座が3月中旬。色の違いまで肉眼で分かるので、最初の成功体験としては最適です。


見える星の数は、条件で変わる
同じ空でも、条件を整えるかどうかで見える星の数が変わります。


まず、日時の指定が観察の前提です。理由は2つ。ひとつは日周運動で、暦Wikiは「すべての天体は地球の自転に伴って日周運動しますので、地球の自転軸を基準にした座標系を定義すると便利です」と記しています(国立天文台 暦Wiki「赤道座標系」)。
もうひとつが公転による年周運動で、同じ時刻に見える星空が季節とともに移り変わります。
先ほどの「位置の目安」が20時という時刻で固定されているのは、この事情のためです。
時刻を固定して初めて、時期という情報が意味を持ちます。
道具としては、国立天文台の暦計算室が公開している「今日のほしぞら」が使えます(国立天文台 暦計算室「今日のほしぞら」)。日時と場所を指定すると、その条件での星空が表示されます。
市販の星座早見盤やアプリも考え方は同じ。日付と時刻を合わせてから空に向けます。
次に、空を明るくする要因を月と人工の光に分けて考えます。月について、国立天文台ははっきり書いています。「月は他の天体に比べて桁違いに明るいので、空に月が出ているときは暗い天体を見るのにあまり適していません。(中略)月明かりを避けるようにしたほうがよいでしょう」(国立天文台 よくある質問「天体を見るのに適した場所はどこ?」)。
新月前後を選ぶ判断は公的な事業でも採られており、環境省の星空観察は夏8月と冬1月の年2回、デジタルカメラによる観察を「それぞれ新月前後2週間の期間で観察します」としています(環境省「星空を見よう」夜空の明るさを測ってみよう)。
人工の光は、環境省が光害という言葉で整理しています。光害とは「照明の設置方法や配光が不適切で、景観や周辺環境への配慮が不十分なために起こるさまざまな影響」を指し、「人工照明から出る光が上方向に漏れることで、夜空の明るさが増加し、星が見えにくくなっています」(環境省「星空を見よう」光害について)。
行動としては2段階です。まず大きな都市から離れ、次にすぐ近くに街灯などの人工灯火がない場所を選ぶ(国立天文台 よくある質問)。
同ページは自動車のヘッドライトも観察を妨げると指摘しています。
そして最後の条件は、道具ではなく自分の目です。国立天文台は流星群の観察方法のなかで「明るい屋内から屋外に出てすぐには、目が暗さに慣れていません。(中略)目が慣れるまでしばらく(15分ぐらい)待つことも必要です」と説明しています(国立天文台「流星群の観察方法」)。
外へ出た直後の空と、15分待った後の空は、同じ夜の同じ場所でも見え方が違います。
秋の四辺形のように暗めの星で形を作る場合、慣れる前に諦めてしまう人もいるかもしれません。
同じ理屈でいえば、観察中に明るい画面を見るのも避けたほうがよさそうです。明るい室内から出た直後に見えないのであれば、明るい光を目に入れた直後も同じ状態に近づくためです。
星図は出発前に紙へ出しておくか、画面の明るさを最低まで下げておくと安心でしょう。
待ち時間の使い方も工夫できます。最初の15分は、シリウスやベガのような明るい一等星だけを探す時間に充てれば、その間に方角の見当をつけられます。
星座は、いまも探査機の現場で使われている
星座は昔話の道具ではありません。
領域として境界が確定したからこそ、命名にも運用にも使えます。


星の名前の多くは、星座の名前を土台にしています。
「個々の星名は、ギリシャ文字(α、β・・・)などにラテン名の属格(所有格)または略符を付けて表記することがあります(例:オリオン座α星 → α Orionis, α Ori)」(国立天文台 星座名・星座略符一覧(面積順))。
略符とは、星座ごとに割り当てられたアルファベット3文字の記号です。
この方式はバイエル名と呼ばれます。
「1603年、ドイツの天文学者ヨハン・バイエルが星図「ウラノメトリア」で使用したのが始まりです。星座ごとにギリシャ文字をつけ、おおいぬ座α星のように呼びます。ギリシャ文字で足りない場合は小文字のアルファベットを、さらに足りない場合は大文字のアルファベットを使います」(国立天文台 暦計算室・こよみ用語解説「おもな恒星」)。
同じページによれば「R以降の大文字と大文字2つの組み合わせは変光星に用いられています」。
変光星とは、明るさが時間とともに変わる星のことです。
ただし、すべての星名が星座を基準にしているわけではありません。
シリウスやベガのような固有名はギリシャ語・ラテン語・アラビア語などに由来し、HIP番号(ヒッパルコス星表)やHD番号(ヘンリー・ドレイパー星表)は星座と無関係な通し番号です(同ページ)。2つの体系が併存しています。
それでも境界の確定によって「新たに発見された天体にも、不便なく星座に基づく命名ができるようになりました」(国立天文台「88星座と国際天文学連合」)。
一方、装置を動かす単位は座標です。
赤道座標系では、赤経を春分点の方向を基準に時間の単位で0時から24時まで、赤緯を天の赤道を0度として北へ90度または南へ90度まで測ります(国立天文台 暦Wiki「赤道座標系」)。
歳差で基準そのものが動くため、J2000.0の赤道のように、いつの基準かを明確にする必要があります。
実際の探査運用では、両方が同時に使われています。
JAXAの「はやぶさ2」は、小惑星リュウグウの撮影にスタートラッカという装置を用いました。
これは「通常は恒星の位置を計測することで探査機の姿勢を推定することに使われる装置」です(JAXA はやぶさ2「スタートラッカによるリュウグウの撮影に成功!」)。
姿勢とは、探査機がどちらを向いているかという情報のこと。
そして同じページの画像説明には、こうあります。
「探査機から見てうお座の方向にある。Pscとはうお座の略符である」。
姿勢は座標で決め、どの方向を見ているかは星座の略符で人に伝える。
この役割分担が、実際の運用記録のなかにそのまま残っているのです。
夜空で星座を探す行為と、探査機が星の位置から自分の向きを知る仕組みは、根っこの発想が同じ。
基準になる明るい点を見つけて、そこから自分の位置関係を割り出しています。



ぼくも遠くにいるときは、まわりの恒星を測って自分の向きを決めていたんだ。星座を覚える作業は、宇宙で働く準備そのものだよ。
星座に関するよくある質問
まとめ:分かっていること、分かっていないこと
分かっていること。
- 星座は星をつないだ形ではなく、天球を隙間なく分けた領域である
- IAUが88の星座を定め、境界は赤経・赤緯に沿う直線で引かれている
- 名前と略号は1922年に合意、境界は1928年に採択、1930年の出版で確定した
- 占いの十二宮は黄道を30度ずつ等分した別の区分で、実際の星座とは一致しない
- 探し方は、春は北斗七星、夏は大三角、秋は四辺形、冬は三つ星が起点になる
まだ確定していないこと。
- ベテルギウスまでの距離は、約500光年と約550光年の推定が併存し、ひとつの確定値はない
- IAUが星の結び方(線の引き方)を定めているかどうかは、一次情報で逐語確認できていない
夜空に線を引くのは人間の側です。
空はただ、そこにある。
次に晴れた夜、明るい星をひとつ決めて、そこから線を伸ばしてみてください。
出典
- 国立天文台 暦計算室 こよみ用語解説「星座の名前」
- 国立天文台 暦計算室 こよみ用語解説「おもな恒星」
- 国立天文台「88星座と国際天文学連合」
- 国立天文台「北斗が建す深宇宙への航路」
- 国立天文台 星座名・星座略符一覧(面積順)
- 国立天文台 暦Wiki「黄道十二宮」
- 国立天文台 暦Wiki「歳差」
- 国立天文台 暦Wiki「赤道座標系」
- 国立天文台 暦Wiki「アルマゲスト」
- 国立天文台 暦Wiki「季節/季節の星座」
- 国立天文台 暦計算室「今日のほしぞら」
- 国立天文台 よくある質問「天体を見るのに適した場所はどこ?」
- 国立天文台「流星群の観察方法」
- 国立天文台 東京の星空・カレンダー・惑星(2025年8月)
- 国立天文台 東京の星空・カレンダー・惑星(2025年11月)
- 国立天文台 東京の星空・カレンダー・惑星(2026年1月)
- 国立天文台 ギャラリー「アルマ望遠鏡がとらえたベテルギウス」
- 日本天文学会 天文学辞典「星座」
- 日本天文学会 天文学辞典「バイエル符号」
- Joyce, M., Leung, S.-C., Molnár, L., Ireland, M. J., Kobayashi, C., Nomoto, K. (2020) “Standing on the shoulders of giants: New mass and distance estimates for Betelgeuse through combined evolutionary, asteroseismic, and hydrodynamical simulations with MESA”, The Astrophysical Journal 902, arXiv:2006.09837
- 環境省「星空を見よう」光害(ひかりがい)について
- 環境省「星空を見よう」夜空の明るさを測ってみよう
- JAXA はやぶさ2「スタートラッカによるリュウグウの撮影に成功!」
- NASA Space Place “What Are Constellations?”
- NASA/JPL Night Sky Network “Exploring the Solar System ToolKit”