BULLのデブリ化防止装置HORNが76日で再突入し軌道離脱を実証

宇宙デブリ対策に取り組む株式会社BULLは2026年9月11日、宇宙デブリ化防止装置「HORN」の実証機「HORN-L」が地球大気圏へ再突入したことを確認したと発表しました。
再突入は2026年8月27日(協定世界時)で、打ち上げからの日数は76日でした。

高度約560kmの軌道に投入された実証機が、扇状に広げた膜で大気の抵抗を受けながら高度を下げ、自力で軌道を離れたことになります(出典: 株式会社BULL「株式会社BULL、宇宙デブリ化防止装置「HORN」実証機「HORN-L」の大気圏再突入を確認」。以下、HORNに関する数値は同リリースの表記によります)。

3行で分かるポイント

  • 6月12日に打ち上げられたHORN-Lが、膜を広げて高度を下げ続け、76日後の8月27日(協定世界時)に大気圏へ再突入しました。
  • HORNは、役目を終えた人工衛星やロケットの一部を早く軌道から落とすための装置で、軌道上で設計どおりに働いた実績が得られました。
  • 今回落ちたのは装置を積んだ実証機そのものです。膜の面積が半分の姉妹機HORN-Rは降下を続けており、結果は後日報告される予定です。
目次

まず押さえたい背景

株式会社BULLは、栃木県宇都宮市に本社を置く2022年11月設立の企業です。
宇宙デブリ対策事業と軌道利活用関連事業を手がけ、代表者は宇藤恭士氏です。

宇宙デブリは、軌道上に残った不要な人工物体を指します。
使い終わった人工衛星や、衛星を切り離したあとのロケットの上段が代表例です。
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の2026年版の宇宙環境レポートによると、2025年には300回を超える打ち上げが行われ、4,000を超える新しい機体が軌道に入りました。
軌道に上がる機体が増えるほど、役目を終えた機体の後始末が問題になります。

この後始末を、宇宙開発の分野ではPMD(ポスト・ミッション・ディスポーザル)と呼びます。
運用を終えた機体を、軌道上に放置せずに処分することです。
低軌道では、運用終了後25年以内に軌道寿命を迎えさせることが対策として挙げられています(出典: JAXA研究開発部門「宇宙活動の安全確保」)。
ESAのレポートは、低軌道の処分目標が25年から5年へ移行しつつあることに触れており、求められる期間は短くなる方向です。

高度数百kmの軌道にもごくわずかに大気が残っていて、機体は少しずつ減速して高度を下げます。
ただし、その速さは機体の形や重さ、高度によって変わります。

HORNは、扇状に広げた膜で機体が受ける大気の抵抗を増やし、軌道から離れるまでの時間を縮める装置です。
BULLは、50㎡相当の膜を展開できる設計だと説明しています。

何が発表されたか

HORNの実証機2機は、2026年6月12日に種子島宇宙センターから打ち上げられたH3ロケット6号機(30形態試験機)に搭載されました。
面積と軌道の降下速度の関係も調べるため、膜面積はHORN-Lが約20㎡、HORN-Rが約10㎡と変えてあります。
投入された初期の高度は約560kmでした。

再突入の4日前にあたる8月23日(協定世界時)、軌道上からの撮像サービスを提供するHEOの衛星が、HORN-Lの姿を捉えました。
HEOは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州に本社を置き、英国と米国にも拠点を持つ企業です。
軌道上のカメラで人工衛星やデブリなど地球以外の対象を撮影する「non-Earth imaging」のサービスと、その専用カメラを提供しています。

この画像で、扇状に展開した膜面が破断や大きな変形を起こさず、設計どおりの形を保っていることが確認されました。
撮像した時点の軌道は遠地点高度が約406km、近地点高度が約384kmまで下がっていました。
26日には軌道長半径高度が約316km、近地点高度が約288kmとなり、翌27日に再突入しています。

比較の材料もあります。
HORN-L、HORN-Rと同じH3ロケット6号機で打ち上げられた超小型天文衛星VERTECSは、初期の高度をほぼ維持していました。
VERTECSは、九州工業大学を代表機関として関西学院大学、東京都市大学、金沢大学、東京大学が共同で開発した衛星で、宇宙可視光背景放射の観測を目的としています。
同じ日に同じような高度へ送り込まれた機体が高度を保つ一方で、膜を広げたHORN-Lだけが降下を続けたことになります。

宇宙業界にとっての意味

膜を広げて抵抗を増やすという発想自体は単純ですが、確かめにくいのは軌道上での耐久性です。
薄い膜を広げたまま真空と激しい温度変化にさらし、2か月半にわたって形を保てるかどうかは、地上の試験だけでは確認しきれません。

今回は再突入の4日前まで、破断も大きな変形もない状態が画像で確認されました。
軌道離脱の最終段階まで膜が機能していたという実績は、製品としてのHORNを顧客へ提案するときの根拠になります。

降下の記録が残った点も重要です。
膜の展開直後から高度が下がり続け、高度400km付近からは降下が急に加速して再突入に至りました。

BULLは、取得した軌道上のデータを使って姿勢軌道シミュレーションモデルの精緻化と軌道離脱性能の評価を進め、商業展開を加速する方針を示しています。
どのくらいの大きさの膜を、どの高度で、どれだけの期間使えば軌道を離れられるのか。
この見積もりの精度は、装置を載せる衛星の設計や、処分計画を審査する側の判断にも関わってきます。

今後の注目点

膜面積が約10㎡のHORN-Rは降下を続けており、BULLは成果が確定した段階で改めて報告するとしています。
膜の面積を半分にすると軌道離脱にどれだけの時間が必要になるのか、同じ日に同じ高度から出発した2機の比較データが揃うことになります。

今回軌道を離れたのは、装置を積んだ実証機そのものです。
実際の人工衛星やロケットの上段に取り付ける場合、落ちる速さは対象の重さや面積、高度によって変わります。
顧客の機体に搭載した運用でどのような性能が出るのかが、次に確かめられる段階です。

ほしまる

HORN-Rの膜は、HORN-Lの半分の広さなんだよね。落ちてくるまでの時間は、どれくらい変わるんだろう?

出典

ほしまる
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