宇宙太陽光発電とは?宇宙で発電して地上へ送る仕組みと実用化への課題

宇宙太陽光発電とは?宇宙で発電して地上へ送る仕組みと実用化への課題

宇宙太陽光発電は、宇宙に大きな太陽電池を置いて発電し、その電気をマイクロ波などに変えて地上へ送る構想です。
地上では受電用のアンテナで受け取り、もう一度電気に戻して使います。
1968年に提唱されてから研究が続いていますが、商用の発電はまだ始まっていません。
日本は1980年代から研究を続けており、小型衛星を使って軌道上から地上へ電力を送る実験を計画しています。

※記事の要点は、以下のスライドでもサッと確認できます。

目次

宇宙太陽光発電とは?宇宙で集めた太陽光を地上で使う構想

英語では Space Solar Power Systems と呼ばれ、略して SSPS と書かれます。

構想の始まりは、1968年にアメリカのピーター・グレーザー(Peter Glaser)博士が提唱したものです(出典:JAXA 研究開発部門「宇宙太陽光発電システム(SSPS)について」)。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)によると、アポロ計画の時代には巨大な宇宙構造物を人の手で建設する方法が検討されました。
その数年後に第1次オイルショックが起き、この構想は社会の注目を集めました。

JAXAの説明では、宇宙に置くのは巨大な太陽電池とマイクロ波の送電アンテナです。
地上でマイクロ波を受け取るアンテナは、レクテナと呼ばれます。

半世紀以上前からある構想ですが、いま宇宙から電気を受け取って暮らしに使っている場所は、まだありません。
現在は、要素となる技術を地上や軌道上で確かめている研究開発の段階です。

ほしまる

電線を宇宙までつなぐわけにはいかないよね。じゃあ、電気はどうやって地上まで届くんだろう?

電気はどうやって宇宙から地上へ届くのか

宇宙から地上へ電気を届ける3段階

宇宙で作った電気は、電線を使わずに、電波や光のビームに乗せて地上へ送ります。
流れは大きく3つの段階に分かれます。

太陽光を受けた宇宙の太陽電池から地上のレクテナへビームで電力を送り、電力網につなぐ流れの図
宇宙太陽光発電の流れ。宇宙の太陽電池で発電し、電気をマイクロ波(またはレーザー光)のビームに変えて地上へ送り、レクテナで受け取って電気に戻します。(図解はイメージです)
  1. 宇宙に置いた太陽電池で、太陽光を電気に変える
  2. その電気をマイクロ波(またはレーザー光)に変え、ビームとして地上へ向ける
  3. 地上の受電設備でビームを受け取り、電気に戻す

宇宙に置いた太陽電池で太陽光を電気に変える

最初の段階は、宇宙空間に置いた大きな太陽電池で発電することです。
仕組みは地上の太陽光パネルと同じで、光を受けた太陽電池が直流の電気を生み出します。

宇宙太陽光発電の衛星は、この発電する部分と、電気を送り出す部分を組み合わせて作られます。
JAXAが2000年代に中心となって検討したモデルは、2枚の反射鏡と太陽電池、それにマイクロ波送電装置で構成されていました。
反射鏡で太陽光を集めて太陽電池に当て、できた電気を送電装置へ渡す、という役割分担です。

2枚の反射鏡が太陽光を中央の太陽電池に集め、その電気を送電装置へ渡す衛星の模式図
JAXAが2000年代に中心となって検討したモデルの構成。2枚の反射鏡で太陽光を集めて太陽電池に当て、できた電気をマイクロ波送電装置へ渡します。(図解はイメージです)

ほかにも、太陽電池と送電アンテナを1枚のパネルに一体化する設計など、いくつもの形が検討されてきました。
どの形でも、宇宙で発電する装置と、それを地上へ送る装置が一組になっている点は共通しています。

電気をマイクロ波やレーザーに変えて無線で送る

2つ目の段階は、宇宙でできた電気を、電線なしで地上へ送ることです。
電気をマイクロ波(電子レンジや無線通信にも使われる電波の一種)に変えるか、レーザー光に変えて、ビームとして地上へ向けます。
JAXAは課題の説明の中で、マイクロ波とレーザーの両方に触れています。

この段階で要になるのが、ビームを狙った地点へ正確に向ける技術です。
地上の受電側から送る目印の電波(パイロット信号)を手がかりに、マイクロ波のビームを長い距離で高い精度に制御する方法が研究されています(出典:JAXA宇宙科学研究所 田中孝治「宇宙からの無線送電:OHISAMA Project に向けた取り組み」、宇宙システム開発利用推進機構主催サイドイベント資料、令和7年10月28日)。
同資料では、静止衛星の場合に必要な精度を「1km離れて3cm内に指向する精度」と表しています。

ビームの向きを変えるには、フェーズドアレイアンテナが使われます。
小さなアンテナを多数並べ、それぞれが出す電波のタイミングを少しずつずらすことで、アンテナ本体を動かさずにビームの向きを変える仕組みです。

多数の小さなアンテナ素子からなるパネルが、地上からのパイロット信号を手がかりにビームを斜めに向ける模式図
フェーズドアレイアンテナによるビーム制御の考え方。小さなアンテナを多数並べ、電波を出すタイミングを少しずつずらすことで、アンテナ本体を動かさずにビームの向きを変えます。受電側から送る目印の電波(パイロット信号)を手がかりにする方法が研究されています。(図解はイメージです)

レーザーで送る方式も研究されています。
NTTの宇宙環境エネルギー研究所は、無線でエネルギーを送る方式として長年検討されてきたのはマイクロ波方式で、近年はレーザー方式が新たな選択肢として注目されていると説明しています(出典:NTT R&D「光の技術を駆使した宇宙太陽光発電」)。
マイクロ波方式では宇宙側・地上側ともに数km規模のアンテナが必要とされるのに対し、レーザー方式では送受信装置を数十m規模に抑えられる可能性があります。

数km規模のアンテナを使うマイクロ波方式と、数十m規模の装置で済む可能性があるレーザー方式を並べた比較図
NTTの研究所による比較のイメージ。マイクロ波方式では宇宙側・地上側ともに数km規模のアンテナが必要とされるのに対し、レーザー方式では送受信装置を数十m規模に抑えられる可能性があります。(図解はイメージです)

地上のレクテナで受け取り電気に戻す

3つ目の段階は、地上でビームを受け取り、電気に戻すことです。
受け取る設備はレクテナと呼ばれます。
レクテナは、アンテナ(antenna)と整流器(rectifier。交流を直流に変える部品)を組み合わせた言葉で、受けた電波をそのまま直流の電気に変える受電アンテナです。

JAXAの説明では、地上のレクテナで受けたマイクロ波を電力に再変換し、エネルギー源として使います。
田中氏の資料の図では、レクテナで電気に戻したあと、商用の電力網へ送る流れが描かれています。

マイクロ波をアンテナで受け、整流器で直流に変えて電力網へ送るレクテナの模式図
レクテナは、アンテナと整流器(交流を直流に変える部品)を組み合わせた受電アンテナです。受けたマイクロ波を直流の電気に戻し、電力網へ送る流れが検討されています。(図解はイメージです)

同じ資料の100万kW級の検討例では、地上側のアンテナの大きさが数kmの規模で示されています。

地上の太陽光発電と比べて何が違うのか

地上より強い太陽光を使える

JAXAが挙げる利点は、地上の再生可能エネルギーと比べて昼夜や天候の影響を受けにくいことと、地上より強い太陽光を使えることです。
JAXAは利点として、発電時に温室効果ガスや廃棄物が出ないこと、燃料費が要らないことも挙げています。
ただしこの2点は、地上の太陽光発電にも当てはまります。
地上の太陽光発電との違いになるのは、主に次の3つです。

昼夜や天候の影響を受けにくい

地上の太陽光発電は、夜になると発電できません。
曇りや雨の日にも、発電量が落ちます。

JAXAは宇宙太陽光発電について、昼夜や天候の影響を受けにくく、エネルギー源として安定していると説明しています。
軌道の例として、NTTの研究所によると、高度約3万6,000kmの静止軌道では太陽光がほぼ24時間365日当たり、地上が夜や悪天候でも発電できます。

地上が夜の側でも、静止軌道の衛星には太陽光が当たっている様子を北極側から見た模式図
NTTの研究所によると、高度約3万6,000kmの静止軌道では太陽光がほぼ24時間365日当たり、地上が夜や悪天候でも発電できます。(図解はイメージです)

地上の太陽光発電は発電量が変動して予測が難しいのに対し、宇宙で発電した場合は予測できる、という違いも田中氏の資料で挙げられています。
発電量が前もって分かれば、電力の需要と供給を合わせる計画が立てやすくなります。

地上より強い太陽光を使える

宇宙では、大気に弱められる前の太陽光を使えます。
この強さの違いは、出典によって比べ方が異なる数字で示されています。

まず光そのものの強さについて、JAXAは宇宙で使える太陽光を「地上の約1.4倍」の強度としています。
JAXAのページには比べた条件までは書かれていません。
NTTの研究所の試算では、静止軌道の衛星が受ける太陽光は1平方メートルあたり1.4kW、晴れた日の正午の地上は1.0kWで、比べると約1.4倍になります。

一方、昼夜や天候まで含めて比べると、差はさらに大きくなります。
同じ試算では、晴れた日の正午の値に、夜・悪天候・斜めからの入射の影響として16%を掛けたものを地上の値としています。
そのうえで、静止軌道では単位面積あたり最大で約10倍の太陽エネルギーを受け取れるとしています。
宇宙システム開発利用推進機構も、宇宙での太陽光発電は昼夜や天候に左右されず安定して発電でき、地上の太陽光発電に比べて「約10倍の太陽エネルギーを得ることが可能」としています(出典:宇宙システム開発利用推進機構「SSPS 宇宙太陽光発電システム」)。

整理すると、次のようになります。

比べているもの示されている値出典
宇宙で使える太陽光の強度(比較条件の記載なし)地上の約1.4倍JAXA
静止衛星(1.4kW/m²)と晴れた日の正午の地上(1.0kW/m²)約1.4倍NTT
静止軌道と、夜・悪天候・斜めの入射を含めた地上(単位面積あたり)最大で約10倍(試算)NTT
地上の太陽光発電との比較(算出条件の記載なし)約10倍宇宙システム開発利用推進機構

約1.4倍の2つは、光そのものの強さを比べた値です。
NTTの約10倍は、静止軌道と、夜・悪天候・斜めの入射を含めた地上とを比べた試算で、最大値として示されています。
宇宙システム開発利用推進機構の約10倍は、比較の条件が示されていません。

電力が必要な地域へ送り先を切り替えられる

3つ目の違いは、送り先を変えられることです。
JAXAは利点として、電力を必要としている地域へ柔軟に送電できることを挙げています。

地上の発電所は、送電線でつながった地域にしか電気を送れません。
宇宙太陽光発電では、先ほど説明したビーム制御の技術でビームの向きを変えれば、レクテナを置いた別の地点へ送り先を切り替えられます。

衛星からのビームを、レクテナを置いた3つの地点のうち1か所へ向けている模式図
ビームの向きを変えれば、レクテナを置いた別の地点へ送り先を切り替えられます。どこへでも直接届けられるわけではなく、受電設備を用意した地点の中から送り先を選ぶ仕組みです。(図解はイメージです)

ただし、受け取る側には必ずレクテナが要ります。
どこへでも直接届けられるわけではなく、受電設備を用意した地点の中から送り先を選ぶ、という仕組みです。

ここまでの違いを、地上の太陽光発電と並べると次のとおりです。

項目地上の太陽光発電宇宙太陽光発電
昼夜の影響夜は発電できない静止軌道ではほぼ24時間太陽光が当たる(NTT)
天候の影響曇りや雨で発電量が落ちる受けにくい
太陽光の強さ大気で弱められる地上の約1.4倍(JAXA)
送り先送電線でつながった地域レクテナを置いた地点から選べる
現状実用化されている研究開発の段階

実用化を阻んでいる課題は何か

実用化を阻む3つの課題

利点がある一方で、実用化にはまだ大きな課題が残っています。
JAXAは課題を、技術、安全性と環境、経済性の3つの面から挙げています。

巨大な設備を宇宙へ運び組み立てて保つ技術

技術面の課題は、運ぶ、組み立てる、保つ、の3つに分けて考えると分かりやすくなります。

1つ目は運ぶことです。
JAXAは、宇宙空間への大量輸送技術が必要だとしています。
先ほどの100万kW級の検討例では、衛星全体の質量が数万トン、大きさが数kmの規模です。

2つ目は組み立てることです。
JAXAは、大規模な宇宙構造物を作り上げる技術も課題に挙げています。

3つ目は保つことです。
JAXAは、軌道上で長い期間にわたって運用し、補修しながら維持する技術が必要だとしています。
加えて、発電、送電、受電のそれぞれを高い効率で、安全に行う技術も挙げています。

宇宙空間に広がる国際宇宙ステーションの大きな太陽電池パドル
国際宇宙ステーションの太陽電池パドル。軌道上で組み立て、長期間運用されてきた大型構造物の例です。 Credit: NASA

マイクロ波を地上へ送ることの安全性

エネルギーを乗せたビームを地上へ向けることには、安全面の課題もあります。
JAXAは、マイクロ波やレーザーが、人の健康、大気、電離層、航空機、電子機器などに悪影響を及ぼさないよう配慮が必要だとしています。

電離層は、大気の一部が電気を帯びた層です。
後で説明する日本の小型衛星OHISAMAの実験項目には、強いマイクロ波を出したときの電離層の環境計測が含まれています。

他の発電方法と競えるまでコストを下げる

経済性の課題は、ほかの発電方法と同じくらいの費用で電気を作れるかどうかです。
JAXAは、宇宙への輸送費をはじめ、建設、運用・維持、廃棄にかかる費用を、ほかのエネルギー源と競えるところまで下げる必要があるとしています。

費用の大きさについては、NTTの研究所がNASAの試算を紹介しています。
それによると、2050年には地上の太陽光発電の費用が1kWhあたり2.6円程度まで下がります。
これに対して宇宙太陽光発電は、打ち上げ・衛星建設・地上設備を含めて1kWhあたり90円程度で、地上の太陽光発電の35倍になります。
比較の目安として、天然ガスによる火力発電の平均的な費用は1kWhあたり約10円程度とされています。

一方で、宇宙へ運ぶ費用は下がりつつあります。
1kgあたりの宇宙輸送費は2000年代までは1万米ドルの水準でしたが、スペースXのFalcon 9では1kgあたり約3,000米ドルになっています。
NTTの研究所は、このような費用の低下が続けば、宇宙太陽光発電の建設から廃棄までの費用も大きく下がる可能性があるとしています。

射場から打ち上げられるFalcon 9ロケット
スペースXのFalcon 9ロケットの打ち上げ。1kgあたりの宇宙輸送費は、2000年代までの1万米ドルの水準から、Falcon 9では約3,000米ドルになっています。 Credit: NASA

日本と海外の開発はどこまで進んでいるのか

日本の研究の歩み

現在の到達点は、宇宙から地上へ電力を送る技術を、小さな規模で確かめる段階です。
日本は長く研究を続け、軌道上での実証を計画しています。
海外では、大学が宇宙空間での無線送電を実証しました。

1980年代から続く日本の研究と検討されてきた規模

JAXAによると、日本では1980年代からSSPSの組織的な研究が始まりました。
その後の流れは次のとおりです。

  • 1990年代:宇宙科学研究所(現在のJAXA宇宙科学研究所)を中心に、大学と国立研究所の研究者が1万kW級の「SPS2000」を設計
  • 2000年代:JAXAと経済産業省が100万kW級のSSPSを検討
  • 2009〜2014年:JAXAと宇宙システム開発利用推進機構が地上での無線送電の実証装置を開発し、2015年と2019年に実験(田中氏資料)

国の計画にも、宇宙太陽光発電の研究は書き込まれてきました。
2016年4月に閣議決定された宇宙基本計画には、エネルギー、気候変動、環境といった地球規模の課題を解決する可能性を秘めた宇宙太陽光発電の研究を推進すると書かれていました(宇宙システム開発利用推進機構のページによる)。

一方、カリフォルニア工科大学の実証は、国の計画ではなく大学の研究プロジェクトとして行われたものです。

小型衛星OHISAMAで低い軌道からの送電を確かめる計画

日本で進んでいる計画が、小型衛星を使ったOHISAMAプロジェクトです。
田中氏の資料によると、経済産業省は2015年から将来の実用化に向けた研究開発を進め、2022年に小型衛星による宇宙実験プロジェクトを始めました。
プロジェクトは経済産業省の委託と監督のもとで行われ、宇宙システム開発利用推進機構が、JAXA宇宙科学研究所や大学の研究者と協力して進めています。

衛星の計画は次のとおりです。

  • 高度450km程度の低い軌道を回る小型衛星
  • 太陽電池とアンテナを一体にしたパネルで発電し、5.8GHz帯のマイクロ波をビーム制御して送る
  • 地上では受信機群と大型のパラボラアンテナで、ビームの形と受け取った電力を測る

実験の目的は、月を回る軌道から月面へ遠距離で電力を送ることを見据えた技術の検証です。
そのための一歩として、地球の低い軌道を回る衛星と地上のあいだで送電を確かめます。

低軌道の小型衛星から地上のパラボラアンテナと受信機群へマイクロ波を送る実験計画の模式図
OHISAMAプロジェクトの計画の概要。高度450km程度の小型衛星から5.8GHz帯のマイクロ波をビーム制御して送り、地上の受信機群と大型のパラボラアンテナでビームの形と受け取った電力を測ります。衛星から放出する観測用の小型機との無線送電も実験項目に含まれます。令和7年10月時点の計画です。(図解はイメージです)

実験項目には、次の内容が並んでいます。

  • 発電と送電の機能をもつパネル構造が、宇宙環境で働くかの検証
  • 遠距離でのビーム制御技術の検証
  • 遠距離で送ったエネルギーの量の評価
  • 衛星から放出する観測用の小型機との、宇宙機どうしの無線送電
  • 強いマイクロ波を出したときの電離層の環境計測

令和7年10月時点の計画では、2022年に概念設計を始め、2024〜2025年に実際に打ち上げる機体の製造と試験を進め、2026年に打ち上げと運用を行う予定とされています。

海外ではカリフォルニア工科大学が宇宙での無線送電を実証

海外では、アメリカのカリフォルニア工科大学(Caltech)が、宇宙空間での無線送電を実証しています(出典:Caltech「In a First, Caltech’s Space Solar Power Demonstrator Wirelessly Transmits Power in Space」)。

同大学の実証機は2023年1月3日に打ち上げられました。
搭載された3つの実験のひとつが、MAPLE(Microwave Array for Power-transfer Low-orbit Experiment)です。
MAPLEは、軽くて曲げられるマイクロ波送電装置を並べたものです。
2023年3月3日には宇宙空間で無線送電を行い、離れた位置にある受信機のLEDをひとつずつ点灯させて、送り先を切り替えることを示しました。

さらに2023年5月22日には、パサデナにある同大学の研究棟の屋上に置いた受信機で、宇宙から送られたエネルギーが検出されました。
大学の発表では、信号は予想どおりの時刻と周波数で現れ、軌道から届いたことによる周波数のずれも予測どおりでした。

実証機内の送電装置が受信機のLEDを点灯させ、地上の建物屋上の受信機でも信号を検出した実証の模式図
カリフォルニア工科大学の実証のイメージ。実証機に載せたMAPLEが宇宙空間で無線送電を行い、離れた受信機のLEDをひとつずつ点灯させて送り先の切り替えを示しました。さらに同大学の研究棟屋上の受信機で、宇宙から送られたエネルギーが検出されました。地上で家庭や工場が使える量の電力を受け取ったわけではありません。(図解はイメージです)

実証機には、ほかに折りたたんだ構造物を宇宙で広げる実験(DOLCE)と、32種類の太陽電池の性能を比べる実験(ALBA)も載っていました。
この研究プロジェクトは、慈善家ドナルド・ブレン氏の寄付で2011年に始まりました。
寄付は、プロジェクトと寄付講座への支援を合わせて、最終的に1億ドルを超える見込みとされています。
また、Northrop Grummanも2014〜2017年の3年間に1,250万ドルを研究資金として提供しています。

この実証で確かめられたのは、宇宙で電力を無線で送ることと、地上で信号を検出することです。
地上で家庭や工場が使える量の電力を受け取ったわけではありません。

宇宙太陽光発電にはどんな組織が関わっているのか

日本では、国の研究機関、省庁、研究の実施機関、大学、民間企業の研究所が関わっています。
ここまでに紹介した計画に登場する担い手と役割を整理すると、次のとおりです。

  • JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、SSPSの研究を進め、JAXA宇宙科学研究所の研究者がOHISAMAプロジェクトに参加しています。
  • 経済産業省は、実用化に向けた研究開発を進め、OHISAMAプロジェクトを委託し監督しています。
  • 宇宙システム開発利用推進機構は、OHISAMAプロジェクトを実施し、JAXAと地上での無線送電実験も行ってきました。
  • 大学の研究者は、OHISAMAプロジェクトに協力しています。
  • NTTの宇宙環境エネルギー研究所は、レーザー方式を研究している通信企業の研究所です。

NTTの研究所が取り組んでいるのは、太陽光で直接レーザー光を作る技術、長い距離でエネルギーを送る技術、強いレーザー光を電気に変える技術の3つです。

経済産業省、宇宙システム開発利用推進機構、JAXA、大学がOHISAMAに関わり、NTTがレーザー方式を研究している関係図
本文で紹介した日本の主な担い手の関係。経済産業省がOHISAMAプロジェクトを委託・監督し、宇宙システム開発利用推進機構が実施、JAXA宇宙科学研究所や大学の研究者が協力しています。NTTの宇宙環境エネルギー研究所はレーザー方式を研究しています。(図解はイメージです)

FAQ

宇宙太陽光発電はいつ実用化されるのですか?

JAXAの説明には、実用化の目標年は示されていません。
現在は、日本のOHISAMAプロジェクトのように、小型衛星で低い軌道から地上へ電力を送る技術を確かめる段階です。
実際に発電所として電気を届けるまでには、輸送、組み立て、安全性、費用の課題をひとつずつ解決していく必要があります。

まとめ

宇宙太陽光発電について、確かめられていることと、まだ決まっていないことを分けると次のとおりです。

分かっていること

  • 宇宙で発電し、マイクロ波やレーザーで地上へ送り、レクテナで電気に戻す仕組み
  • 昼夜や天候の影響を受けにくく、地上より強い太陽光を使えるという利点
  • 日本は1980年代から研究を続け、小型衛星OHISAMAによる実証を計画していること
  • カリフォルニア工科大学が、宇宙空間での無線送電と地上での信号検出を実証したこと

まだ決まっていないこと

  • 実用化の時期
  • 他の発電方法と競える費用まで下げられるか
  • 強いマイクロ波が電離層などに与える影響の確認

太陽の光を宇宙で受け止め、目に見えないビームに乗せて地上へ届ける。
半世紀以上前に描かれたこの構想は、いま小さな衛星の実験で、ひとつずつ確かめられようとしています。
OHISAMAが見据えているのは、地球だけでなく、月の軌道から月面へ電力を送る未来でもあります。
人類はいつか、届けた電気を灯りにして、月やその先で暮らしを営むようになるのかもしれません。

ASTROWORKSは「人類が地球の寿命を超え、宇宙のどこかで存在し続ける未来へ」という言葉を出発点にしています(発起人の想い)。
その遠い旅の電源を試す場所は、いまはまだ地球とそのすぐ上の空です。

運ぶ、組み立てる、送る、受け取る。
この星の上で積み重ねたひとつひとつの実験が、いつか宇宙の暮らしを照らす最初の灯りになっていくのかもしれません。

出典

ほしまる
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