隕石とは、宇宙空間にあった岩石や金属のかけらが、地球の大気を通り抜けて地表まで届いたものです。
夜空を横切る流れ星とは別のものではなく、同じ出来事の最後の段階を指す言葉です。
NASAによれば、毎日およそ48.5トン(44,000キログラム)の隕石物質が地球に降り注いでいます。
ただし、大気に入ってきた天体のうち、地表まで届くのは通常5%未満です(出典: NASA Science「Meteors & Meteorites Facts」)。
毎日それだけの量が降っているのに、手に取れる隕石はめったに見つかりません。

隕石とは、宇宙から地表まで届いた石のこと
宇宙から地球へ向かう石は、置かれた場所によって呼び名が変わります。
国立科学博物館によれば、流れ星のうちとくに大きいものは、空気との摩擦熱で燃えつきてしまわずに地上まで落ちてくることがあります。
これが隕石です(出典: 国立科学博物館「宇宙の質問箱 小惑星・彗星・流星・隕石編」)。
つまり隕石という言葉が指しているのは、空で光っている最中のものではありません。
光り終わったあとに地面へ残った、その石そのものです。
同じ館は、隕石のもとをたどると小惑星に行き着くとも説明しています。
小惑星、あるいは小惑星どうしが衝突してできた破片の一部が地球の軌道を横切り、たまたま地球に衝突したものが隕石だという整理です。
「宇宙から降ってきた石」という言い方だけでは分かりにくい部分が、この説明でつながります。
隕石は空から湧いてくるのではなく、太陽系のなかを回っていた天体のかけらが、地球とぶつかった結果として地面に届いたものです。
流れ星と隕石は、同じものの違う段階
ひとつの石が宇宙から地面まで来るあいだに、呼び名は3回変わります。
NASAの解説では、宇宙空間にある岩片は meteoroid(流星物質)と呼ばれます。
大きさは塵の粒ほどのものから、小さな小惑星ほどのものまで幅があります。
それが地球などの大気に高速で突入して燃えると、その現象が meteor(流星)です。

日本語で流れ星と呼んでいるのは、この段階にあたります。
そして大気を通り抜けて生き残り、地面に到達したものが meteorite(隕石)です。
言葉が3つに分かれているのは、それぞれ観察できる対象が違うからです。
流星物質は宇宙にあるので、地上から直接手を触れられません。
流星は数秒で消えてしまう光の現象で、あとには何も残りません。
隕石だけが、持ち帰って重さを量ったり、切って中を調べたりできる実物として手元に残ります。
流れ星を見たときに「あれが落ちたら隕石だ」と考えるのは、方向としては合っています。
ただし、光った流星物質のほとんどは地面まで届きません。
地表まで残るのは、入ってきた量のごく一部
毎日大量に降っているという話と、隕石がめったに見つからないという話は、どちらも本当です。
NASAの数値をもう一度並べると、1日あたりおよそ48.5トンの隕石物質が地球に降り注ぎ、もとの天体のうち地表まで届くのは通常5%未満です。
大気圏に突入した石は、空気との激しい摩擦で表面から削られ、燃えて失われていきます。
入ってきたときの大きさのまま地面に着くわけではありません。

さらに、地球の表面の大部分は海です。
陸に落ちたとしても、森林や砂漠や氷の上であれば、人の目に触れないまま風化していきます。
黒い石が黒い土の上にあれば、そもそも気づかれません。
毎日48.5トンという数字が示しているのは、降ってくる量そのものです。
人が拾い上げ、隕石だと確かめられて記録に残る数は、そこからさらに絞り込まれます。
この2つを同じ話として扱うと、「毎日何十トンも降っているのに、なぜ自分は見つけられないのか」という食い違いが生まれます。
なお、降下量の見積もりは、どの大きさの粒までを数えるかによって変わります。
ここで挙げた48.5トンは、NASAの解説ページに書かれている値です。
隕石のふるさとは、ほとんどが小惑星
地面に届いた石のほとんどは、火星と木星のあいだにあるような小惑星の破片です。
NASAは、隕石の99.8%が小惑星に由来し、残る0.2%が火星と月からのものでほぼ半分ずつに分かれると説明しています。
火星や月の岩石が地球に落ちてくるのは、大きな天体衝突で表面の岩がはじき飛ばされ、長い時間をかけて地球の軌道と交わったためだと考えられています。
数としてはごくわずかですが、実物として手に取れる火星や月の岩石という点で、研究上の価値は大きくなります。

流星群は、これとは事情が違います。
毎年決まった時期に見られる流星群は、彗星が残していった細かいちりが地球の大気に飛び込んで光るものです。
ちりは小さいので、ほとんどが上空で燃え尽きます。
流星群の夜に空をたくさんの流れ星が横切っても、その多くは地面に石として残りません。
拾った石が隕石かどうか、どこを見れば分かる?
前の節で見たとおり、地表に残る隕石は多くありません。
その希少さが、見分けを難しくしています。
隕石の特徴としてよく挙がるのは、黒いこと、ずっしり重いこと、磁石がつくことの3つです。
たしかに、多くの隕石に当てはまります。
ただし、この3つがそろう石は地球にもたくさんあります。
特徴が当てはまることは、隕石である証拠にはなりません。
ほしまる黒くて重くて磁石がつく石なら、隕石でいいんじゃないの? ぼくもそう思っていたけど、そこから先があるみたいだよ。
黒い溶融被殻と、重さ、磁石という手がかり
アリゾナ州立大学の隕石研究センターによれば、落ちたばかりの隕石は黒くて光沢があります。
これは、大気圏を通るあいだの摩擦熱で表面が溶けてできた「溶融被殻」によるものです(出典: Buseck Center for Meteorite Studies「Meteorite Characteristics」。以下、外見の特徴は同センターの記載によります)。
石の内部までは熱が届かず、表面の薄い層だけが溶けて固まるため、皮をかぶったような見た目になります。


ただし、この皮は永続しません。
地球にある期間が長くなるほど溶融被殻はすり減っていき、錆びた茶色へと変わっていきます。
何年も雨風にさらされた隕石は、真っ黒ではなくなります。
手がかりは次のとおりです。
- 表面が黒く、薄い皮で覆われている。落下から時間がたつと錆色に変わる
- 表面が指で押したようにくぼんでいるものがある
- 表面はおおむね滑らかで、穴が開いていない
- ニッケルと鉄を多く含むため、同じ大きさの地球の石より重い
- 石質のものも含め、多くの隕石に磁石がつく
日本語の資料では、国立科学博物館が「石の隕石にもかなりの鉄がふくまれており、普通の岩石に比べて重く(比重3.5くらい)、強い磁石がつきます」と説明しています。
比重3.5は、同じ体積の水と比べて3.5倍ほど重いという意味です。
持ち上げたときに「見た目より重い」と感じる理由が、この数値にあたります。
穴が開いていないという点は、見落としやすい手がかりです。
表面や断面に気泡のような穴がたくさん開いている石は、隕石の特徴から外れます。
隕石とまちがえやすいのは、鉄のかたまりと鉱石
黒い、重い、磁石がつくという3つがそろう石は、身のまわりにもあります。
アリゾナ州立大学の隕石研究センターは、隕石とまちがえられやすいものとして次の3つを挙げています。
- 赤鉄鉱(せきてっこう)。鉄の酸化物でできた鉱物
- 磁鉄鉱(じてっこう)。同じく鉄の酸化物で、名前のとおり磁性が強い
- スラグ(鉱滓)。製鉄などの工程で出る人工の副産物
スラグがやっかいなのは、どこにでもある点です。
同センターは、スラグが道路や鉄道の路盤材として使われてきたため、人里離れた場所でも見つかりうると説明しています。
何もない野原で黒い金属質のかたまりを拾ったとしても、それだけでは宇宙から来た証拠になりません。
この3つを区別する方法として、同センターは条痕(じょうこん)テストを挙げています。
釉薬のかかっていない素焼きの陶器の面に石をこすりつけると、多くの鉱物はその鉱物に特有の色の粉の筋を残します。
コーヒーカップの底の、釉薬が塗られていないざらついた部分でも試せます。


| 試した対象 | 素焼きの面に残る筋の色 |
|---|---|
| 赤鉄鉱 | 赤褐色 |
| 磁鉄鉱 | 灰黒色 |
| スラグ | 筋を残さない |
条痕テストで赤褐色や灰黒色の筋が出れば、それは赤鉄鉱や磁鉄鉱で、隕石ではないと判断できます。
一方で、筋が出なかった場合に隕石が確定するわけではありません。
スラグも筋を残さないからです。
見分けが難しいのは、観察する人の注意深さの問題ではありません。
隕石の特徴として挙がる性質が、鉄を含む地球の石や人工物とそのまま重なっているためです。
自分で確かめられるところと、専門機関に見てもらうところ
外側から見て分かることには、はっきりした限界があります。
隕石かどうかを最終的に決めるのは、内部に何が入っているかです。


アリゾナ州立大学の隕石研究センターは、石質隕石の破断面には金属の細かい粒と、小さな丸い粒であるコンドリュールが見えると説明しています。
鉄隕石は、切断面を薬品で処理すると独特の結晶模様が現れます。
コンドリュールが決め手になるのは、その成り立ちに理由があります。
国立極地研究所は、コンドリュールの成り立ちを次のように説明しています。
約46億年前、太陽系はまだ原始太陽とそれを取り巻く円盤でした。
その円盤内に浮かぶ塵が何らかの熱で溶けたあと、急激に冷えて固まったものだと考えられています(出典: 国立極地研究所 極「普通コンドライト(H3)| Yamato-82038」)。
液滴は宇宙空間では表面張力で球状になるため、コンドリュールは宇宙から飛来した隕石であることを判別する目印になっています。
地球の岩石のなかで、同じ成り立ちの丸い粒ができることはありません。
ここまでを整理すると、線引きは次のようになります。
- 自分で確かめられること。表面の状態、重さの感じ、磁石がつくかどうか、条痕テストで筋の色を見ること
- 分析が要ること。鉱物の組み合わせ、金属の組成、コンドリュールの有無
前者でできるのは、候補から明らかに違うものを外していく作業までです。
隕石だと確定させる段階には届きません。



ぼくの機体も、地球へ帰ってきたあと金属の中身まで調べられたんだ。外から見ただけでは決まらない、というのは同じなんだね。
隕石は大きく3つのグループに分けられる
ここまで、隕石には金属の鉄が含まれているという話が何度か出てきました。
その鉄の量の違いが、隕石を3つに分ける基準になっています。
国立科学博物館は、隕石の大部分(90%以上)は石でできていると説明しています。
そのほかに、鉄でできているもの(隕鉄)と、石と鉄が半分くらいずつ混ざり合ったもの(石鉄隕石)があります。
この3つが、石質隕石・石鉄隕石・鉄隕石という大きな区分にあたります。


石質隕石 — 見つかる隕石の大半を占める
石質隕石は、見つかる隕石の90%以上を占めるグループです。
石質隕石は、さらに2つに分かれます。
ひとつはコンドライトで、国立極地研究所は、大きさ1ミリ以下の多数のコンドリュールから構成される隕石だと説明しています(出典: 国立極地研究所 南極隕石ラボラトリー「南極隕石と探査」)。
普通コンドライト、炭素質コンドライト、エンスタタイトコンドライトなどに分類されます。
もうひとつはエコンドライトで、コンドライトではない岩石質の隕石がこう呼ばれます。
同研究所は、エコンドライトを小惑星ベスタ、月、火星など分化した天体のかけらだと説明しています。
分化した天体とは、内部が熱で溶けたことで、重い金属が中心へ沈み、軽い岩石が外側に分かれた天体のことです。
一度溶けているため、コンドリュールのような丸い粒は残っていません。


コンドライトが研究で重視されるのは、太陽系ができたときの物質が、そのあと大きな変化を受けないまま残っているからです。
46億年前に固まった液滴が、そのままの形で今の実験室に届いている、という状態です。
コンドライトには「H5」「L6」のような記号が付きます。
アルファベットは鉄などの含有量にもとづく化学的な分類で、H・L・LLなどがあります。
数字は隕石の中の球粒(コンドリュール)の明瞭さによる岩石学的な分類で、熱変成の度合いを表します。
コンドリュールが明瞭に残っているものがタイプ3で、熱による変成を受けると3より大きい数字になるよう定められています(出典: 国立極地研究所「南極隕石ラボラトリーで普通コンドライトの新たな分類決定手法を開発」)。
このあと出てくる日本の隕石の分類記号も、この組み合わせで表されています。



46億年前にできた小さな水滴みたいな粒が、溶けもせずに今も石のなかに入っているなんて、ぼくの40年の旅がずいぶん短く思えてくるよ。
石鉄隕石 — 石と金属が入り混じった珍しいもの
石鉄隕石は、石と鉄がおよそ半分ずつ混ざった隕石です。
国立極地研究所は、石鉄隕石を、小惑星の表面ではなく内部のかけらが飛んできたものと考えられると説明しています。
鉄を主成分とする金属と、かんらん石という鉱物が混ざった状態になっています(出典: 国立極地研究所「極地研探検2021 地圏研究グループ」)。
かんらん石は緑がかった色をした鉱物です。
金属のなかに、その粒が埋め込まれたような断面になります。


このグループが数として少ないことは、日本の記録からも分かります。
国立科学博物館の日本の隕石リストでは、2023年3月23日現在で球粒隕石が44件、鉄隕石が9件、石鉄隕石が1件です(出典: 国立科学博物館「日本の隕石リスト」)。
日本国内で記録されている隕石のうち、石鉄隕石はこの1件だけということになります。
石と金属が混ざった状態が生まれるには、金属が中心へ沈んでいく途中の領域から、そのままかけらが飛び出してくる必要があります。
そうした条件がそろう場面が限られていることが、数の少なさに表れています。
鉄隕石(隕鉄) — 天体の中心部だったかけら
鉄隕石は、ほぼ金属でできた隕石です。
国立科学博物館は、これを隕鉄と呼んでいます。
主成分は鉄とニッケルで、石質隕石のように岩石の部分が主役になることはありません。
持ったときの重さは石質隕石よりもさらに際立ちます。
外見だけを見ると、製鉄で出た金属のかたまりとの区別が難しいグループでもあります。
決め手になるのは切断面で、薬品で処理すると、金属が長い時間をかけてゆっくり冷えたことで生まれた独特の結晶模様が現れます。
地球上で短時間に冷やして作った金属には、この模様は出ません。


日本の記録では、鉄隕石は2023年3月23日現在で9件です。
石質隕石にくらべれば少数ですが、石鉄隕石よりは多く見つかっています。
日本に落ちた隕石と、南極で見つかる隕石
隕石は遠い外国の話ではありません。
日本にも、千年以上さかのぼる記録があります。
記録に残るいちばん古い隕石は、861年の直方隕石
国立科学博物館の日本の隕石リストで最も古いのは、福岡県直方市に落ちた直方(のおがた)隕石です。
同リストによれば、落下は861年5月19日、和暦では貞観3年にあたります。
分類はL6、総重量は0.472kg、個数は1です。
平安時代前期に落ちた石が、どこに落ちたかの記録とともに現在まで伝えられてきたことになります。
岩手県陸前高田市気仙町に落ちた気仙(けせん)隕石は、1850年6月13日、和暦では嘉永3年の落下で、分類はH4、総重量は135kgです。
直方の0.472kgと気仙の135kgでは、およそ290倍の開きがあります。
隕石として記録されるものの大きさには、手のひらに載る程度から、ひとりでは持ち上げられない大きさまでの幅があります。
なお、日本の隕石の件数は、参照する資料と時点によって数が変わります。
先ほどのリストは2023年3月23日現在で合計54件ですが、同じ館の「宇宙の質問箱」は日本で51個と説明しています。
どの資料のいつ時点の数なのかまで見ないと、別々の数字が並ぶことになります。
2020年の習志野隕石は、火球から回収までが追えた
古い記録だけではありません。
落下から回収、分析、登録までの流れをたどれる例が、2020年にあります。
国立極地研究所の発表によると、2020年7月2日午前2時32分、関東地方の上空に大火球が流れ、千葉県習志野市と船橋市に隕石が落下しました(出典: 国立極地研究所「『習志野隕石』が国際隕石学会に登録されました」。以下、習志野隕石の経緯は同発表によります)。
火球とは、とくに明るい流星のことです。
真夜中を回った時間帯の出来事でしたが、その明るさは多くの人に目撃されました。
最初の破片は、習志野市のマンションで見つかりました。
63gと70gの破片のほか、その後の調査で見つかった小さな破片を合わせて156gが回収されています。
これが習志野隕石1号です。
2つ目は、しばらく間が空いてから現れました。
7月22日になって、約1km離れた船橋市内のアパートで屋根瓦が割れているのが見つかり、瓦の破片と一緒に2つ目の隕石片が発見されます。
95gと73gの破片とその他の小さな破片を合わせて194gが回収されました。
割れた屋根瓦という痕跡が、隕石の発見につながった形です。
回収された試料は、国立科学博物館、国立極地研究所、九州大学で分析され、分類はH5普通コンドライト(球粒隕石)と確定しました。
そして11月1日、国際隕石学会に「習志野隕石(Narashino)」として登録されます。
この登録によって、世界共通の記録に名前が残ることになります。
国内で隕石が発見されたのは小牧隕石以来2年ぶりで、53番目の隕石にあたります。
火球の目撃、建物に残った痕跡、住民による発見、複数の研究機関での分析、そして学会への登録。
この一連の流れが、現代に落ちた隕石がたどる道筋です。


南極の氷は、隕石が集まる場所になっている
隕石が世界でいちばん多く集められている場所は、南極です。
国立極地研究所は、これまでに48,500個以上の隕石が南極氷床上から回収されていると説明しています(出典: 国立極地研究所 南極隕石ラボラトリー「南極隕石について」)。
国際隕石学会に登録されている隕石の約60%は、南極から採集されたものです。
南極に隕石が多く落ちているわけではありません。
氷が隕石を集めてくる仕組みが働いています。
同研究所の説明によれば、氷床は通常、内陸から沿岸へ向けて流動しています。
その流れが山地などでせき止められると、その場所で局所的に上昇流が起こります。
氷の中に取り込まれていた隕石も、氷と一緒に押し上げられてきます。


そして、この地域では「カタバ風」が強く吹きます。
カタバ風は、冷えて重くなった空気が斜面を下っていく風です。
この風によって、上昇してきた氷は継続的に昇華します。
昇華は、氷が液体の水を経ずに直接水蒸気へ変わる現象です。
氷だけが減っていき、結果として氷床の中に取り込まれた隕石のみが取り残されます。
こうして氷がむき出しになった場所に、隕石が地表に置かれた状態で残ります。
白い氷の上に黒い石があれば、遠くからでも目につきます。
日本の南極地域観測隊もこの採集に長く関わってきました。
国立極地研究所が保有する隕石の総数はおよそ17,000個で、世界最大級の地球外物質コレクションになっています(出典: 国立極地研究所 南極隕石ラボラトリー「南極隕石ラボラトリーについて」)。
これらの試料は国内外の研究者に配布され、地球惑星科学の研究に使われています。
隕石に値段はつくのか、見つけたらどうすればいい?
地表に残る量が限られ、日本の記録も数十件という希少さは、値段にも表れます。
オークションに出る隕石と、研究資料としての価値
隕石は市場で売買されており、高額な取引もあります。
2025年7月16日のサザビーズのオークション「Natural History」に、火星由来の隕石NWA 16788が出品されました。
同社のロットページには、重量24.67kg、推定価格(エスティメート)2,000,000〜4,000,000米ドルと記載されています(出典: Sotheby’s「Martian Meteorite — NWA 16788」)。
火星から来た岩石が地球で見つかる例はごく少なく、そのなかでも24.67kgという重さは大きい部類に入ります。
市場で値段を押し上げるのは、大きさ、由来の珍しさ、見た目の美しさといった要素です。
研究資料としての価値は、これとは別の基準で決まります。
分析に必要なのは、数gから数十gの試料と、それがどこでどのように見つかったかの記録です。
習志野隕石の1号が156g、2号が194gという重さでありながら、分類の確定と学会への登録につながったことは、その一例です。
大きくて見栄えのする隕石が、必ずしも研究上の価値が高いわけではありません。
逆に、小さく地味な破片でも、太陽系の初期の物質を保った状態であれば、調べる価値のある試料になります。
それらしい石を見つけたときの扱い方
それらしい石が手元にある場合、できることと、待つべきことがあります。
自分で確かめられるのは、前に挙げた範囲です。
表面に黒い皮のようなものがあるか、穴が開いていないか、同じ大きさの石より重いか、磁石がつくかを見ます。
素焼きの陶器の面にこすりつけて、赤褐色や灰黒色の筋が出れば、赤鉄鉱や磁鉄鉱と分かります。
記録も手がかりになります。
習志野隕石の2号は、割れた屋根瓦という落下の痕跡と一緒に見つかりました。
どこで、いつ、どのような状態で見つけたかは、あとから再現できない情報です。
一方で、表面を削ったり磨いたりすれば、判別の手がかりになる黒い皮は失われます。
確かめてもらう前に見た目を変えてしまうと、残っていた情報がなくなります。
鑑定の受付は、機関によって扱いが異なります。
たとえばアリゾナ州立大学の隕石研究センターは、2010年に一般からの試料の受け入れを停止しました。
そのうえで、州の地質調査所、大学の地質学教室、自然史博物館に問い合わせるよう案内しています(出典: Buseck Center for Meteorite Studies「FAQ – Sample Identification」)。
相談先を探すときは、その機関が現在どのような受付をしているかを、公式の案内で確かめるところから始めます。
よくある質問
まとめ 隕石は、太陽系の歴史を運んできた石
隕石は宇宙から地表まで届いた石で、その正体は見た目ではなく分析で決まります。
日本にも861年から現在まで記録が残っています。
分かっていることは、次のとおりです。
- 隕石とは、大気を通り抜けて地表に到達した石を指す。宇宙空間にある段階では流星物質、大気で光っている段階では流星と呼び分ける
- 地球には1日あたり約48.5トンの隕石物質が降り注ぐが、地表まで届くのは通常5%未満にとどまる(NASA)
- 隕石の99.8%は小惑星に由来する(NASA)
- 黒い皮、重さ、磁石は手がかりになるが、赤鉄鉱・磁鉄鉱・スラグにも当てはまる
- 大きく石質隕石・石鉄隕石・鉄隕石に分かれ、90%以上を石質隕石が占める(国立科学博物館)
- 国際隕石学会に登録されている隕石の約60%は南極で採集されている(国立極地研究所)
数字を見るときに注意したい点は、次のとおりです。
- 日本の隕石の件数は資料と時点で異なる。国立科学博物館の日本の隕石リストは2023年3月23日現在で合計54件、同館の「宇宙の質問箱」は51個としている
- 1日あたりの降下量の見積もりは、どの大きさの粒まで数えるかによって変わる。48.5トンはNASAの解説ページに書かれている
- 条痕テストで筋が出なくても、隕石とは確定しない。スラグも筋を残さない
コンドライトのなかにある1ミリ以下の丸い粒は、約46億年前、太陽系がまだ塵の円盤だったころに溶けて固まった液滴です。
それが大きな変化を受けないまま、今も石のなかに収まっています。
地面に落ちた黒い石のひとつひとつが、地球ができるより前の時間をそのまま運んできています。
出典
- NASA Science「Meteors & Meteorites Facts」
- 国立科学博物館「宇宙の質問箱 小惑星・彗星・流星・隕石編」
- 国立科学博物館「日本の隕石リスト」
- 国立科学博物館「日本館3階展示『習志野隕石』」
- 国立極地研究所「『習志野隕石』が国際隕石学会に登録されました」
- 国立極地研究所 南極隕石ラボラトリー「南極隕石について」
- 国立極地研究所 南極隕石ラボラトリー「南極隕石ラボラトリーについて」
- 国立極地研究所 南極隕石ラボラトリー「南極隕石と探査」
- 国立極地研究所「南極隕石ラボラトリーで普通コンドライトの新たな分類決定手法を開発」
- 国立極地研究所 極「普通コンドライト(H3)| Yamato-82038」
- 国立極地研究所「極地研探検2021 地圏研究グループ」
- Buseck Center for Meteorite Studies, Arizona State University「Meteorite Characteristics」
- Buseck Center for Meteorite Studies, Arizona State University「Meteorite ID」
- Buseck Center for Meteorite Studies, Arizona State University「FAQ – Sample Identification」
- Sotheby’s「Martian Meteorite — NWA 16788」