Rocket LabがIridium買収に必要な現金を株式発行と手元流動性で確保

Rocket Labは2026年9月15日、衛星通信会社Iridium Communicationsの買収に充てる現金を、株式の発行と手元流動性で用意し終えたと発表しました。
市場で自社株を売り出す方式で総額約19億4,400万ドルを集め、あわせてIridiumが抱える借入について貸し手の同意を取り付けています。

これにより、いざというときのために確保していた36億ドルの融資枠を解約しました。
買収そのものの完了は2027年半ばを見込んでいます。

3行で分かるポイント

  • Rocket Labは2,930万株を新たに発行し、総額約19億4,400万ドルを調達した
  • Iridiumの17億7,500万ドルの借入は、経営権が移っても一括返済を求められない形に変更された
  • 予備として用意していた36億ドルの融資枠は解約。買収の完了予定は2027年半ば
目次

まず押さえたい背景

Rocket Labは、カリフォルニア州ロングビーチに本社を置く宇宙企業です。
小型ロケット「エレクトロン」の打ち上げサービスに加え、人工衛星の設計・製造や衛星部品の供給まで手がけています。
エレクトロンは2025年12月31日までに75回のミッションを成功させ、200機を超える宇宙機を軌道に送り出しました。
射場はニュージーランドのマヒア半島とアメリカ・バージニア州のワロップス島にあり、より大きな衛星を運べる中型ロケット「ニュートロン」も開発中です(出典: Rocket Lab「Form 10-K(2025年12月期)」)。

買収される側のIridium Communicationsは、バージニア州マクリーンに本社を置く衛星通信会社です。
低い高度を回る66機の運用衛星と軌道上の予備機で地球全体を覆い、音声通話、機器どうしの通信、船舶や航空機向けの通信、そして測位・航法・時刻の配信を提供しています。
特徴は、衛星どうしを電波で直接つないでデータを中継する構成にあります。
地上に基地局を置けない外洋や極地でも、上空の衛星が隣の衛星へ順に信号を渡していくため、通信が途切れません。
契約数は255万件を超えます。

両社は2026年6月29日、Rocket LabがIridiumを買収することで合意したと発表していました。
Iridium株1株につき現金27.00ドルとRocket Lab株を組み合わせて計54ドルを支払う内容で、Iridiumの企業価値は約80億ドルと算定されています。

何が発表されたか

今回の発表の中心は、その支払いに必要な現金をどこから持ってくるかです。
Rocket Labが使ったのは、あらかじめ届け出た枠の範囲で自社の新株を証券市場に少しずつ売っていく方式でした。
一度に大量の株を売り出すのではなく、市場の値動きを見ながら売る点が特徴です。
この方式で2,930万株を発行し、手数料と費用を差し引く前で約19億4,400万ドルの収入を得たとしています(出典: Rocket Lab「Rocket Lab Fully Funds Iridium Acquisition, Including Completion of $1.94 Billion ATM」。以下、今回の条件は同発表によります)。

もうひとつが、Iridiumの借入の扱いです。
企業向けの融資契約には、借り手の経営権が別の会社に移ったときに貸し手が一括返済を求められる条項が入っていることがあります。
Iridiumの17億7,500万ドルの借入にもその条項があり、放置すれば買収と同時に巨額の返済が発生しかねません。

そこでIridiumは9月15日付で契約を修正し、今回の買収は返済のきっかけに当たらないという貸し手の同意を得ました。
買収が完了した時点で、Rocket Lab USA, Inc.がこの借入に担保なしの保証を付けます。
Rocket Labは、Iridiumが生み出すフリーキャッシュフローに支えられた長期の資金調達手段として、この借入をそのまま残す形を選んだと説明しています。

その結果、2026年6月28日に結んでいた36億ドルの担保付きつなぎ融資枠が不要になり、解約されました。
これは買収資金の手当てが間に合わなかった場合に備える保険のような枠で、維持するだけでも費用がかかります。

宇宙業界にとっての意味

ロケットを打ち上げる会社が、衛星を運用して通信サービスを売る会社をまるごと買う——この組み合わせが実現すれば、打ち上げから衛星の製造、通信サービスの提供までを一社で担う体制になります。
Rocket Labは6月の発表で、他社に支払っていた打ち上げ費用をなくして打ち上げの利益を自社に取り込めること、衛星を軌道へ運ぶ手段を自前で確保できることを、この買収の狙いとして挙げていました。

もうひとつの論点が収益の性質です。
ロケットの打ち上げや衛星の製造は、受注の有無で売上が上下します。一方、通信サービスは契約者から継続して料金が入ります。
Iridiumの2025年の売上高は8億7,170万ドルでした。

この規模の継続収入が加われば、Rocket Labの事業の振れ幅は変わります。
ただし、それが同社の業績にどう表れるかは買収完了後の実績を待つ段階です。

今後の注目点

買収の完了には、Iridium株主の承認と各国の規制当局の審査が必要です。
通信事業と周波数の免許が関わるため、審査の対象は独占禁止法だけにとどまりません。
予定どおりなら完了は2027年半ばで、発表から1年近く先になります。

もうひとつの軸が中型ロケット「ニュートロン」です。
Rocket Labは2025年12月期の年次報告書で、低軌道への再使用構成で約13,000kgの打ち上げ能力を持つ機体として、2026年中の就役を見込むとしていました。
衛星の打ち上げを自社でまかなう構想は、この機体が実際に飛ぶかどうかと直結します。

ほしまる

資金の準備が整うことと、会社がひとつになることは別なんだ。ここから先は、審査がどこまで進んだかで見ていくといいよ。

出典

ほしまる
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