アンタレスが米空軍省から1億6,100万ドルで宇宙原子炉を実証へ

アメリカの原子炉メーカー、アンタレス・ニュークリアは2026年9月11日、アメリカ空軍省で宇宙システムの調達と統合を担当する次官補の部署から、1億6,100万ドルの契約に選ばれたと発表しました。
宇宙で使う小型原子炉を地上で実際に動かして確かめ、そのあと宇宙機に載せて飛行に必要な認証を取るところまでが対象です。

同社はこれを、宇宙用原子力の分野でアメリカの国防当局が出した契約として現時点で最大規模だと説明しています。

3行で分かるポイント

  • アンタレス・ニュークリアが、アメリカ空軍省の宇宙調達部門から1億6,100万ドルの契約に選ばれました。
  • 契約の中身は、宇宙用の小型原子炉R1-Sを地上で動かす実証と、宇宙機への搭載、飛行認証の3段階です。
  • 同社は2026年6月4日に、小型原子炉Mark-0をアイダホ国立研究所で臨界に到達させています。
目次

まず押さえたい背景

アンタレス・ニュークリア(Antares Nuclear, Inc.)は、カリフォルニア州トーランスに拠点を置くアメリカの原子炉メーカーです(出典: SBIR「Award 209088」)。
工場で量産できる小型の核分裂炉を設計・製造しており、用途として防衛上重要な設備、宇宙ミッション、海中での運用などを挙げています。

マイクロリアクターは、発電所に据え付ける大型の原子炉と違い、運んで設置できる規模まで小さくした原子炉を指します。
同社の主力製品R1は、電気出力が100kWから1MW、運転寿命は6年以上です。

炉心には燃料の粒ひとつひとつをセラミックの層で包んだTRISO燃料を使い、炉心の熱はナトリウムを封じたヒートパイプで運び出します。
ヒートパイプは、中の液体が蒸発と凝縮を繰り返すことでポンプなしに熱を移す管です。
運び出した熱は、窒素を作動流体とする閉じたブレイトンサイクル、つまり気体を圧縮・加熱・膨張させてタービンを回す方式で電気に変えます(出典: Antares Nuclear公式サイト)。

宇宙機の電源は太陽電池と電池の組み合わせが標準ですが、太陽から遠ざかるほど太陽光は弱まります。
月の夜のように長く日が当たらない場所や、大きな電力を連続して使う用途では、この方式では足りなくなります。
アメリカ空軍の中小企業向け研究開発支援制度であるSBIRで同社が採択された課題の説明には、原子力電源によって、太陽電池では不可能な連続的な電気推進や指向性エネルギーの利用が可能になると書かれています。

政策の後押しもあります。
2025年12月18日に署名された大統領令14369「Ensuring American Space Superiority」は、月面と軌道上への原子炉の配備を指示し、月面用原子炉を2030年までに打ち上げ可能な状態にする目標を掲げています(出典: アメリカ商務省宇宙商務局)。

何が発表されたか

契約の枠組みはStrategic Breakthrough Award(戦略的ブレークスルー契約)と呼ばれるもので、金額は1億6,100万ドルです。

作業は3つの段階に分かれます。

  • 宇宙用に仕立てた原子炉R1-Sを地上で実際に核分裂させて動かす実証
  • 宇宙機への統合と飛行認証
  • 地上と宇宙をつなぐ運用中の資産へ電力を供給すること

この契約に至るまでに、同社は地上での節目をひとつ通過しています。
2026年6月4日、小型原子炉Mark-0がアイダホ国立研究所で初めて臨界に到達しました。

臨界とは核分裂の連鎖反応がそれ自体で続く状態のことで、原子炉が動いたといえる最初の段階です。
エネルギー省の原子炉パイロットプログラムのもとで民間企業がこれを達成したのは初めてでした。
次の段階のMark-1は、窒素の閉じたブレイトンサイクルによる発電系を備え、2027年に6か月以上の連続運転を行う計画です。

同社のジョーダン・ブランブルCEOは、宇宙軍とのこのパートナーシップが長く抱いてきた構想を正式な宇宙ミッションに変えるものであり、核分裂は今日では不可能な戦略的能力を開くと述べています(出典: Antares Nuclear「Antares Selected for $161M Strategic Breakthrough Award to Demonstrate Space Reactor」)。

宇宙業界にとっての意味

宇宙で原子炉を使う構想そのものは新しくありません。
ただ、紙の上の設計と、実際に軌道へ上げられる装置の間には距離があります。
地上で安全に動かせることを示し、宇宙機に収まる形にまとめ、飛行に耐えることの認証を取る。
今回の契約は、この距離を順番に詰める作業そのものに予算が付いた点が特徴です。

進め方にも特徴があります。
宇宙用の原子炉をゼロから起こすのではなく、地上向けに開発中のR1を宇宙向けに手直しする経路で、これは同じSBIRの課題説明でも同社の方針として示されていました。
その地上側では、Mark-0の臨界に加え、2026年7月に4億7,000万ドルのシリーズC資金調達を実施しています(出典: Antares Nuclear「Updates」)。

電力の上限が上がると、宇宙でできることの前提が変わります。
太陽電池では賄いきれない規模の電力を連続して取り出せれば、推進や観測、通信の設計の考え方に選択肢が増えます。
一方で、いつどの宇宙機に搭載するのかといった具体的な計画は、これから決まる段階です。

今後の注目点

当面の確認点は3つです。
2027年に予定されるMark-1の6か月以上の連続運転が計画どおり進むか、R1-Sの地上実証がいつ始まるか、そして宇宙機への統合と飛行認証がどの機体を相手に進むかです。

加えて、大統領令14369が掲げる月面用原子炉の2030年打ち上げ準備という目標に対し、アメリカ政府がどの企業にどの規模で発注を続けるのかも、この分野の動きを追ううえでの手がかりになります。

ほしまる

ぼくが旅した木星より外側では、太陽は豆電球くらいの明るさだったよ。パネルをいっぱいに広げても、電気はほんの少しずつしか貯まらなかったんだ。

出典

ほしまる
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