SpaceXは2026年10月20日の決算説明会で、大型ロケット「スターシップ」の次の飛行(フライト15)で、1段目と2段目の両方を発射塔で受け止めて回収する計画を明らかにしました。
フライト15は翌月の11月に予定されています。
同じ説明会でイーロン・マスクCEOは、2027年前半のどこかで週1回の打ち上げに達し、2027年末には週2回かそれ以上の頻度にする見通しを示しました。
3行で分かるポイント
- SpaceXは、次の飛行でロケットの下の段と上の段の両方を、発射場の塔の腕で受け止めて回収することに挑みます。
- 下の段はこれまでに3回、塔で受け止めた実績があります。上の段を受け止めるのは今回が初めての挑戦です。
- 打ち上げを2027年前半に週1回、年末に週2回以上へ増やす目標も示されましたが、あくまで会社側の見通しです。
まず押さえたい背景
SpaceXは、ロケット「ファルコン9」や衛星インターネットサービス「スターリンク」を手がける宇宙企業です。
2026年からは株式を公開しており、四半期ごとに決算説明会を開いています。
スターシップは、SpaceXが開発中の非常に大きなロケットです(出典:米議会調査局「Commercial Space Launch and the April 2023 Starship Mishap」)。
1段目のブースター「スーパーヘビー」と、その上に載る2段目の「シップ」の2段でできています。
ロケットは、使い終わった段を切り離しながら速度を上げていきます。
多くのロケットでは、切り離した段は海に落ちてそのまま失われます。
使い終わった段を回収して再び飛ばせれば、毎回機体を新しく作る必要がなくなります。
SpaceXの回収方法は、地上に脚で着陸させるのではありません。
発射塔に取り付けた2本の機械の腕(通称「チョップスティック(箸)」)で、降りてきた機体を空中で挟んで受け止めます。
米国のニュースサイトTeslaratiによると、これまでにブースターはフライト5・7・8の3回で塔に受け止められています。
一方、シップはこれまで毎回海へ降ろしており、打ち上げ後のシップを再利用したことはまだありません。
米国で民間企業がロケットを打ち上げるには、米連邦航空局(FAA)の許可(打ち上げライセンス)が必要です。
FAAは、1984年の商業宇宙打ち上げ法にもとづいて米運輸省から権限を委ねられ、安全性などの審査を担っています。
何が発表されたか
マスクCEOは決算説明会で、11月に予定するフライト15ではブースターとシップの両方の回収に挑むと述べました(出典:The Motley Fool「SpaceX (SPCX) Q3 2026 Earnings Call Transcript」)。
成功すれば、地球を回る軌道まで届くロケットを丸ごと回収した初めての例になるとも述べています。
成功の見込みについては、初期の飛行で成功は保証されないとしたうえで「成功する可能性のほうが高い」と表現しました。
説明会では、横倒しの姿勢で大気中を降りてきたシップが垂直に向きを変え、塔の腕に受け止められる約80秒のアニメーションも流されました。
規制当局との調整については、グウィン・ショットウェル社長兼COO(最高執行責任者)が説明しました。
FAAと建設的なやりとりを重ねてきたとし、フライト15の許可には、両段を発射場まで戻して塔で受け止める内容が含まれる見込みだと述べています。
つまり、11月の飛行に必要な許可は、この説明会の時点ではまだ出ていない段階です。
前回のフライト14は、9月末の四半期最終週に打ち上げられ、スターシップとして初めて地球周回軌道に到達しました。
Teslaratiによると、このときは新型のスターリンク衛星26機を軌道に投入し、ブースターとシップはどちらも狙った海域に降ろされています。
マスクCEOは、この1回で軌道に運んだ通信容量が毎秒26テラビットで、ファルコン9の10回分に相当すると説明しました。
宇宙業界にとっての意味
今回の発表には、技術の節目と打ち上げ頻度の2つの論点があります。
技術面では、上の段の回収はまだ一度も試されていません。
シップは軌道から高速で大気に突入して戻ってくるため、ブースターよりも厳しい条件で塔まで戻る必要があります。
両段の回収に成功すれば、機体を作り直さずに次の飛行へ回すための前提条件のひとつが整います。
頻度の面では、マスクCEOが示した週1回、週2回以上という数字は、宇宙企業が衛星を軌道に運ぶ手段の選び方に関わります。
大型ロケットを高い頻度で飛ばせれば、多数の衛星を短い期間で軌道に並べやすくなります。
マスクCEOは説明会で、米ルイジアナ州に、発射塔を20基以上備える発射場を整備する計画にも触れました。
ただし、これらはいずれも会社が示した目標です。
実際に打ち上げ市場の競争条件が変わるかどうかは、回収と再飛行が安定して繰り返せるかにかかっています。
今後の注目点
最初の節目は、FAAがフライト15の許可を、両段の回収を含む内容で出すかどうかです。
次に、11月の飛行でブースターとシップがそれぞれ塔に受け止められるかが焦点になります。
仮に回収できても、そのシップを点検・整備して実際に再び飛ばせるかは、まだ実証されていません。
週1回の打ち上げという目標についても、回収した機体の再飛行までにかかる日数や、発射設備の増設がどこまで進むかを、今後の飛行ごとに見ていく必要があります。
出典
- The Motley Fool「SpaceX (SPCX) Q3 2026 Earnings Call Transcript」 https://www.fool.com/earnings/call-transcripts/2026/10/20/spacex-spcx-q3-2026-earnings-call-transcript/
- 米議会調査局(CRS)「Commercial Space Launch and the April 2023 Starship Mishap」(EveryCRSReport掲載) https://www.everycrsreport.com/reports/IF12403.html
- Teslarati「SpaceX showcases exactly how it plans to catch Starship next month」 https://www.teslarati.com/spacex-starship-tower-catch-flight-15/
- Teslarati「SpaceX confirms Starship 15 launch window with massive ambitions」 https://www.teslarati.com/spacex-confirms-starship-15-launch-window-massive-ambitions/