SSC Spaceが日本の宇宙新興2社と地上局や再突入で協力へ

スウェーデンの宇宙インフラ企業SSC Spaceは、2026年10月14日、東京のスウェーデン大使公邸で日本の宇宙スタートアップ2社と協力の取り決めを交わしました。
相手はElevationSpaceとアークエッジ・スペースです。
アークエッジ・スペースとは、衛星と通信する地上設備の利用契約と覚書を、ElevationSpaceとは、宇宙実験や地球への回収などの協力を検討する覚書をそれぞれ結んでいます。

3行で分かるポイント

  • スウェーデンのSSC Spaceが、日本の宇宙スタートアップ2社と協力の取り決めを結びました。
  • アークエッジ・スペースは、SSC Spaceが世界各地に持つ衛星通信用のアンテナ網を、自社の小型衛星の運用に使えるようになります。
  • ElevationSpaceとは、宇宙での実験から地球への持ち帰りまで、協力できる分野を今後話し合う段階です。
目次

まず押さえたい背景

SSC Spaceはスウェーデンの企業で、宇宙関連のサービスを世界に提供しています。
衛星と通信する地上局と、ロケットの打ち上げ施設が事業の柱です。
商用の地上局網としては世界最大級の規模を持つと説明しています(出典:SSC Space「SSC Space at a glance」)。
スウェーデン北部のキルナから約40km離れた北極圏に、エスレンジ宇宙センターを構えています(出典:SSC Space「Esrange Ground Station」)。
今回の署名は、SSC Spaceが日本法人を設立したのに合わせて行われました。

ElevationSpaceは宮城県仙台市の企業です。
宇宙空間で実験や試作をし、その成果物を地上へ持ち帰って顧客に返すサービスを開発しています(出典:NEDO「株式会社ElevationSpace」)。
東北大学発のスタートアップで、宇宙実験用の衛星「ELS-R」などを開発しています(出典:sorae「ElevationSpaceとスウェーデンのSSC Spaceが基本合意」)。

アークエッジ・スペースは東京都江東区の企業です。
超小型衛星のコンステレーションを、計画・設計から量産・運用まで一貫して手がけています。
コンステレーションとは、多数の衛星を連携させて、同じ場所を短い間隔で観測したり、通信を途切れにくくしたりする仕組みです。
用途には地球観測、衛星通信、月面インフラを挙げています。

ここで要になるのが地上局です。
地上局は、宇宙の衛星と電波でやり取りする地上のアンテナ設備のことです。
高度の低い軌道を回る衛星は短時間で上空を通り過ぎるため、1か所のアンテナでは通信できる時間が限られます。
そのため、世界各地に地上局を持つ事業者の設備を借りるやり方があります。

何が発表されたか

アークエッジ・スペースとSSC Spaceは、地上局サービスの利用契約と覚書の2つを交わしました(出典:アークエッジ・スペース「SSC Spaceとグローバル地上局サービス利用契約およびMoUを通じて協力」)。
利用契約では、アークエッジ・スペースは小型衛星向けの地上局サービス「SSC Space Go」を使えるようになります。
SSC Space Goは、SSC Spaceの地上局を自動化された手順で予約し利用できるプラットフォームです(出典:SSC Space「SSC Space and ArkEdge Space sign SSC Space Go and ground segment contract」)。
用途は、テレメトリ(衛星の状態を知らせるデータ)の受信、コマンド(衛星への指令)の送信、ペイロードデータ(衛星が撮った画像など、ミッションで得たデータ)の転送です。

覚書は、正式な契約の前に協力の方向性を確認する取り決めです。
今回の覚書は次の3分野を対象にしています。

  • SSC Spaceの世界の地上局網(光通信用の設備を含む)の利用
  • アークエッジ・スペースが海外に地上局を整備する際の支援
  • SSC Spaceの顧客が日本に地上局を設ける際の支援

ElevationSpaceとの覚書は、長期的な協力の可能性を探る枠組みです(出典:SSC Space「SSC Space and ElevationSpace sign MoU to explore cooperation」)。
対象は、微小重力(重力の影響がほぼ無い状態)を使う実験、宇宙実験用機器の開発、サブオービタル飛行(宇宙空間に達したあと、軌道を回らずに戻ってくる飛行)や軌道への打ち上げ、大気圏再突入と回収、地上局サービスです。
エスレンジ宇宙センターの活用も検討に含まれています。

宇宙業界にとっての意味

アークエッジ・スペースの福代孝良CEOは、衛星コンステレーションを安定して運用し、宇宙からのデータやサービスを世界へ届けるには、信頼できる世界規模の地上局インフラが欠かせないと述べています。
衛星の数が増えるほど、通信の機会を確保する地上側の設備が必要になります。
今回の契約は、その設備を自社ですべて建てるのではなく、海外事業者のネットワークを使う形です。

エスレンジは北極圏にあるため、北極と南極の上空を通る極軌道の衛星と通信しやすい立地だとSSC Spaceは説明しています。

覚書には、SSC Spaceの顧客が日本に地上局を設ける際の支援も入っています。
日本の企業が海外の設備を使うだけでなく、海外の企業が日本に拠点を置く際にも協力する内容です。

ElevationSpaceについては、SSC Spaceの観測ロケットや打ち上げ、地上局の能力と、ElevationSpaceの軌道上実証、再突入、回収の能力を組み合わせることを両社が狙いとしています。

今後の注目点

ElevationSpaceとの覚書は協力の可能性を探る段階で、具体的な案件や契約条件はこれから決まります。
どの分野から実際の共同プロジェクトに進むのか、エスレンジ宇宙センターをどのように使うのかが確認すべき点です。

ElevationSpaceは宇宙実験用衛星ELS-Rの2号機を、2027年にH3ロケットで打ち上げる予定です(出典:sorae「ElevationSpaceとスウェーデンのSSC Spaceが基本合意」)。
こうした自社のミッションと今回の協力がどう結びつくかも注目点です。

アークエッジ・スペースについては、SSC Space Goを使った運用の開始時期と、覚書にある海外での地上局整備や日本での地上局設置が具体化するかを見ていく必要があります。

出典

ほしまる
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