GoogleがAI半導体搭載衛星で宇宙データセンター技術を実証へ

Googleは2026年9月24日、宇宙空間にAIの計算基盤をつくる研究プロジェクト「Project Suncatcher(プロジェクト・サンキャッチャー)」で、初めて実際の宇宙で試験を行うと発表しました。
自社で開発したAI向け半導体「TPU」を載せた試作衛星を、SpaceXのロケットで宇宙へ送ります。
打ち上げは日本時間2026年10月2日午前3時18分の予定です(出典:SPACE CONNECT「Google、宇宙AIデータセンター技術の実証へ|初のTPU搭載衛星を打ち上げ」)。

3行で分かるポイント

  • GoogleがAIの計算に使う半導体を載せた試作衛星を、日本時間10月2日に打ち上げる予定です。
  • 打ち上げ時の揺れや宇宙の放射線、温度の厳しい環境で、半導体が正常に動くかを確かめます。
  • 宇宙で多数の衛星に計算を分担させる構想の最初の試験で、2027年には衛星2機を使った通信の試験を予定しています。
目次

まず押さえたい背景

データセンターは、多数のコンピューター(サーバー)を1か所に集め、計算やデータの保存を担う施設です。
AIの学習や、学習したAIが答えを出す処理(推論)には大量の計算が必要で、データセンターは大きな電力を使います。

TPU(Tensor Processing Unit)は、Googleが独自に開発した半導体です。
機械学習の処理を速くするための、特定の用途に絞った集積回路です(出典:Google Cloud「Introduction to Cloud TPU」)。
パソコンのCPUが様々な処理をこなす汎用の計算器だとすると、TPUはAIの計算に特化した専用の計算器にあたります。

Project Suncatcherは、Googleが2025年11月に発表した研究プロジェクトです。
太陽光で発電する多数の衛星にTPUを載せ、近くを飛ぶ衛星同士をレーザー光による通信でつなぎ、複数の衛星を連携させて大規模なAI処理を担わせることを目指しています。
2025年の研究報告では、81機の衛星を半径1kmの範囲にまとめ、平均高度650kmで飛ばす構成を例として示しています(出典:Google Research「Exploring a space-based, scalable AI infrastructure system design」)。

今回の試作衛星は、Planet(Planet Labs PBC)と連携して開発されました。
Planetはサンフランシスコに主要拠点を置く会社で、地球を撮影する衛星を運用し、その画像データを提供しています。
これまでに450機の衛星を製造して打ち上げ、現在は200機以上を軌道上で運用しています(出典:Planet「Company」)。

何が発表されたか

試作衛星は、SpaceXの相乗りミッション「Transporter-18」で打ち上げられます。
相乗りミッションは、1機のロケットに複数の事業者の衛星をまとめて載せて打ち上げる方式です。

今回の目的は、TPUが宇宙の環境に耐え、実際の宇宙空間で正常に動くかを確かめることです。
Googleは、主な課題として打ち上げ時の衝撃、宇宙放射線、熱の3つを挙げています。

ひとつ目は打ち上げ時の衝撃です。
地球に比較的近い高さを回る軌道(低軌道)までの飛行では、機体に最大約10G(地表の重力の約10倍)の加速度がかかります。
TPUのような個々の部品には、50〜100G程度の力がかかる可能性があります。

ふたつ目は宇宙放射線です。
宇宙では、太陽の活動や宇宙線に由来する高いエネルギーの粒子が飛び交っています。
Googleは米カリフォルニア大学デービス校の施設でTPUに陽子線を当てる試験を行いました。
その結果、Googleが「Trillium」と呼ぶ世代のTPUは、5年間の宇宙ミッションで浴びると想定される量を上回る放射線量に耐えました(出典:Google「Project Suncatcher」公式ブログ記事)。

みっつ目は熱です。
地上のデータセンターでは、空気や冷却水に熱を移して機器を冷やしています。
宇宙は真空で、熱を受け取る空気がありません。
Googleは、熱を運ぶヒートパイプで熱を移し、放熱板から宇宙空間へ放出する仕組みなどを検討しています。

衛星同士のレーザー通信は今回の試験の対象外で、2027年に予定している衛星2機での試験で確かめる計画です。

宇宙業界にとっての意味

Googleが宇宙を計算の場所として検討する理由は電力です。
Googleは、衛星の軌道条件によっては長時間太陽光を受けられ、地上と比べて最大8倍の発電量を得られる可能性があると試算しています。
地上のデータセンターに必要な土地や冷却用の水への負荷を抑えられる可能性も挙げています。

これまで衛星は、地球の撮影や通信などに使われるのが一般的でした。
この構想は、衛星そのものに計算を担わせるもので、衛星の新しい用途になりえます。
今回、地球観測衛星を多数運用してきたPlanetが開発に加わったことは、衛星を量産・運用する会社がこのような用途の担い手にもなりうることを示しています。

実現までの課題は技術だけではありません。
Googleの2025年の研究報告は、打ち上げ価格が2030年代半ばまでに1kgあたり200ドル以下に下がる可能性があるとしています。
その水準になれば、宇宙のデータセンターの打ち上げと運用の費用が、同規模の地上データセンターの電力費用と1kW・1年あたりでおおむね比べられる水準になりうる、という試算です。
つまり構想の採算は、ロケットの打ち上げ価格がどこまで下がるかという条件に左右されます。

今後の注目点

最初の節目は、10月2日(日本時間)の打ち上げと、その後に衛星上のTPUが正常に動くかどうかです。
Googleが軌道上でどのようなデータを得て、どこまで公表するかが焦点になります。

次の節目は2027年の衛星2機による試験です。
多数の衛星を高速通信でつなぐには、動いている衛星同士の位置関係を高い精度で保つ必要があります。
Googleは地上試験で、1組の光通信装置を使い、一方向あたり800Gbps、双方向合計1.6Tbpsの通信に成功しています。
この性能を軌道上の衛星同士で出せるかが確認すべき点です。

あわせて、構想の採算の前提となる打ち上げ価格の動向も注目点です。

出典

ほしまる
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