福岡市の株式会社QPS研究所は2026年9月11日、小型レーダー衛星「QPS-SAR18号機(スサノオ-Ⅱ)」が初めて撮影した画像を公開しました。
打ち上げは2026年8月20日で、約18日後の9月7日から9日にかけて、スペインのセビリアや和歌山県白浜町など6地点を撮影しています。
公開されたのは、この衛星がいちばん細かく地表を写せる「高精細モード」の画像でした。
3行で分かるポイント
- QPS研究所の18機目のレーダー衛星が、打ち上げから約18日で初めての画像を撮影した
- 電波で地表を見る衛星のため、雨やくもりの日に撮った画像も含まれている
- 会社は2028年5月末までに24機をそろえ、同じ場所を平均10分間隔で観測できる体制を目指している
まず押さえたい背景
株式会社QPS研究所は、福岡市中央区に本社を置く2005年6月創業の人工衛星メーカーです。
人工衛星や搭載機器、電子機器、ソフトウェアの研究開発から設計・製造・販売までを手がけ、現在は「QPS-SAR」と名づけた小型レーダー衛星を自社で開発・運用し、そこで撮影した画像を提供する事業を主軸にしています(出典: 株式会社QPS研究所のプレスリリース、PR TIMES配信。以下、撮影日時・地点・分解能・機体の仕様は同じリリースによります)。
衛星づくりには、北部九州を中心とした全国25社以上のパートナー企業が関わっています。
SAR(合成開口レーダー)は、衛星から地表へ電波を当て、跳ね返ってきた電波を受け取って画像を組み立てる仕組みです。
カメラのように太陽の光を借りないので、夜でも、雲や雨に覆われていても地表の様子を写せます。
光学カメラを積んだ衛星は雲があると下が見えず、夜間も撮影できないため、この違いが両者の役割を分けています。
画像の細かさは「分解能」で表し、数字が小さいほど細かく写ります。
分解能46cmは、地表で46cm離れた2つのものを別々のものとして写し分けられるという意味です。
QPS-SARは高精細モード(スポットライトモード)で46cm、通常モード(ストリップマップモード)で1.8mの分解能を持ち、QPS研究所はこの46cmを民間のSAR衛星として世界トップレベルとしています。
電波を強く出すには大きなアンテナが要りますが、同社は打ち上げ後に広げる展開式の大型アンテナを使うことで、従来のSAR衛星に比べて質量を20分の1、コストを100分の1に抑えたとしています。
何が発表されたか
スサノオ-Ⅱは2026年8月20日22時4分(日本時間)、米国のロケット・ラボ社のElectron(エレクトロン)ロケットで打ち上げられました。
ロケット・ラボ社はカリフォルニア州ロングビーチに本社を置く企業で、小型ロケットElectronによる打ち上げサービスのほか、衛星の製造や宇宙機の部品供給、軌道上の運用支援も手がけています(出典: Rocket Lab Corp「Form 8-K 添付資料99.1」)。
今回の打ち上げには「The Lightning God Defends(嵐を統べる神が防衛する)」というミッション名が付けられました。
衛星は打ち上げの約50分後にロケットから分離し、そのさらに約40分後に地上との初交信に成功、翌21日の午後には収納していたアンテナの展開にも成功しています。
公開された画像は、いずれも高精細モードで撮影された6地点ぶんです。
スペインのセビリア(9月7日・晴れ)、和歌山県白浜町(9月8日・雨)、トルコのアンタルヤ(9月8日・晴れ)、バングラデシュのダッカ近郊(9月8日・小雨)、フィリピンのタール火山(9月9日・くもり)、カナダのハリファックス(9月9日・くもり時々晴れ)が対象でした。
分解能は2つの方向に分けて示されています。
衛星が飛んでいく向きが「アジマス」、電波を照射する向きが「レンジ」で、6地点のアジマス方向はすべて46cm、レンジ方向はセビリアの44cmからタール火山の59cmまででした。
宇宙業界にとっての意味
6地点のうち白浜町は雨、ダッカ近郊は小雨、タール火山とハリファックスはくもりの日の撮影です。
初画像の段階で悪天候の地点を含む画像が公開されたことは、この衛星が天候に左右されずに地表を観測できることを具体的に示しています。
地上の様子をすぐ知りたい場面ほど天気は選べないため、そこがSAR衛星の担う役割になります。
もうひとつの論点は機数です。
衛星は地球を回りながら観測するため、1機だけでは同じ場所の上空に戻ってくるまで時間がかかります。
同じ場所を短い間隔で繰り返し見るには、多数の衛星を連携させて分担する「コンステレーション」と呼ばれる仕組みが必要で、QPS研究所が18号機まで機数を積み上げているのは、この観測の間隔を縮めるためです。
今後の注目点
QPS研究所は2028年5月末までに24機、2030年にはさらに機数を増やしたコンステレーションを構築し、平均10分間隔という準リアルタイムの観測データ提供サービスを目指しています。
スサノオ-Ⅱは初画像を取得した段階なので、この先は軌道上での調整を経て、実際の画像提供に加わるかどうかが次の節目になります。
通常モードで撮影した画像や、防災・インフラ監視といった具体的な用途での活用例が示されるかどうかも、あわせて見どころです。
ほしまる6地点とも、進行方向の46cmは同じなのに、電波を当てる方向だけ44cmから59cmまで幅があるんだ。数字が2つ並んでいるのには、こういう理由があるんだよ。