Sophia SpaceとSLIが3億ドルの衛星リース条件で一致

アメリカの新興企業Sophia Spaceと、宇宙関連の資産を貸し出す会社SLIは、衛星10機の製造費に3億ドルを充てる資金調達の条件をまとめたと、2026年9月13日に発表しました。
SLIが衛星の製造費を負担して衛星を所有し、Sophia Spaceの顧客に貸し出す形です。

打ち上げは早ければ2028年を見込んでいます。

3行で分かるポイント

  • 宇宙空間で計算処理をおこなう衛星10機を、金融会社が買い取って利用者に貸す仕組みに、3億ドルの枠組みがまとまった
  • 航空機や船舶で使われてきた「買わずに借りる」資金の集め方が、衛星の分野に持ち込まれた
  • 今回の文書に法的拘束力はなく、正式な契約に進むには条件が残っている
目次

まず押さえたい背景

Sophia Spaceは、アメリカ・カリフォルニア州パサデナに拠点を置く企業で、宇宙空間で計算処理をおこなう「軌道上データセンター」を開発しています。
中心となるのが、同社がTILE(Thermal-Integrated LEO Edge)と呼ぶモジュール技術です。
発電と計算と排熱の処理をひとまとまりの板状の装置に収め、太陽光で電力をまかない、発生した熱をその場から宇宙へ逃がす構造になっています。

地上のデータセンターは冷却に多くの電力を使っており、同社は消費電力の40%が冷却に向けられていると説明しています。
空気のない宇宙では、熱は放射によってしか逃がせない代わりに、送風機や冷却水の設備が要りません。

もうひとつの狙いが、データを地上へ送らずに軌道上で処理することです。
地球を観測する衛星は大量の画像を撮りますが、地上局と通信できる時間も電波で送れる量も限られます。
撮った画像をその場で処理して必要な結果だけを送れば、順番待ちの時間を減らせるという考え方です。

一方のSLIは、正式名称をSpace Leasing Internationalといい、アメリカ・ニューヨークに本社を置くLibra Groupが2023年に設立した会社です。
衛星、地上局、次世代の航空機といった資産を保有して貸し出しています。

Libra Groupは約60か国で事業を持つ企業グループで、航空機のリースと海運を柱のひとつとし、過去15年で150億ドルを超える輸送分野の取引を手がけてきました(出典: Libra Group「Libra Group Launches World’s First Dedicated Space Leasing Company」)。
航空会社が旅客機を自社で買わずにリース会社から借りるのと同じやり方を、宇宙の設備に当てはめようとしている会社です。

何が発表されたか

両社がまとめたのは、TILE技術を使う衛星10機に対する3億ドルの資産金融の枠組みです。
SLIが製造と打ち上げの進み具合に合わせて資金を出し、衛星が軌道上で正常に動くと確認された時点で所有権を受け取り、Sophia Spaceの顧客へ貸し出します。
利用者は月ごとまたは四半期ごとに決まった額を支払い、契約は衛星の想定使用年数にわたる長期のオペレーティングリースとする計画です。

オペレーティングリースでは、所有するのは貸し手の側で、借り手は設備を買う費用ではなく利用料として支払います。

この10機がそろうと、最新のエッジサーバ240台分に相当する計算能力になると両社は説明しています。
想定する用途として、地球観測、気象の分析、供給網の管理、災害への備え、情報収集や監視偵察の分野が挙げられています。
Sophia Space最高経営責任者で共同創業者のRob DeMillo氏は、資産金融が航空や海運を生み出したわけではないものの、その拡大を加速させたと述べ、同じことを軌道上コンピューティングでおこなうと説明しています(出典: Sophia Space「Sophia Space and SLI Set Terms for $300 Million Asset Financing for 10-Satellite High-Performance Edge Computing Constellation」)。
SLI最高経営責任者のPraveen Vetrivel氏は、参入の壁を下げることが市場を開くと述べています。

ただし今回の枠組みは、法的拘束力のない支援表明書の形で示されたものです。
Payloadの報道では、正式な契約へ移るにはSophia Spaceが予定している最終の資金調達を完了する必要があり、リースの利用を確約した顧客はまだいません。
同社がこれまでに調達した資金は累計2,200万ドルです。

宇宙業界にとっての意味

衛星のコンステレーション(多数の衛星を連携させて運用する仕組み)は、収益が立つ前に製造費と打ち上げ費がまとめて必要になります。
新興企業はこれを株式の発行でまかなうことが多く、その分だけ創業者や既存株主の持ち分は薄まります。
今回のように金融会社が設備を買って貸す形を取れば、株式を発行せずに設備を用意でき、利用する側も初期費用ではなく毎月の支払いとして扱えます。
Vetrivel氏が「非希薄化の資本」と呼んでいるのは、この点です。

もっとも、貸し手が設備を保有するには、その資産に価値が残り続け、借り手が入れ替わっても使い道があると見込める必要があります。
航空機や船舶のリースが成り立ってきたのは、この条件が長年の実績で確かめられてきたためです。
衛星について同じ前提が成り立つかどうかは、これから積み上がる事例で決まります。
SLIはこれまでにAscendArcの静止衛星2機(2億ドル超)の購入に関する法的拘束力のない文書に署名し、北極圏の地上局を通信事業者RBC Signalsへ貸し出してきました(出典: Payload「Sophia Space, SLI Set Terms for $300M Satellite Leasing Deal」)。

今後の注目点

当面の焦点は、Sophia Spaceが最終の資金調達を完了し、今回の枠組みが拘束力のある契約へ移るかどうかです。
あわせて、計算能力を借りる顧客が実際に契約するかが問われます。
リースは利用者からの支払いで成り立つ仕組みであり、借り手が決まらなければ衛星を保有する側にも資金は戻りません。

機体側では、2028年という打ち上げ時期に向けて、TILEが宇宙空間の熱や放射線の環境で設計どおりに動くことを確かめる工程が残っています。

ほしまる

ぼくが旅をしていたころは、観測したデータを地球へ送るのに、電波の順番をひたすら待っていたんだ。計算まで宇宙の側で終わらせてしまう衛星は、ぼくの時代には無かった機械だよ。

出典

ほしまる
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