Katalystが米国防総省の事業で宇宙から地上への送電を実証へ

米Katalyst Spaceは2026年9月21日、米国防総省のエネルギー技術支援制度に選ばれ、宇宙で太陽光を集めて地上へ電力を送る装置を軌道上で組み立てて実証すると発表しました。
同社のロボット宇宙機NEXUSが低軌道で板状の部品を自律的に組み立て、大型の送電装置を作ります。

米海軍研究所(NRL)は部品を開発中で、その中核となる変換技術を開発しました。

3行で分かるポイント

  • Katalyst Spaceが、太陽光を電波に変えて地上へ送る装置をロボットで組み立てる実証に、米国防総省の制度から選ばれました。
  • 組み立てる板状の部品は開発中で、電気を電波に変える中核技術は、米海軍研究所が開発しました。
  • 今回目指すのはキロワット級の送電で、同社はその先にメガワット級への拡大を見据えています。
目次

まず押さえたい背景

Katalyst Spaceは、米コロラド州ブルームフィールドに拠点を置く2020年設立の防衛技術企業です。
同社が開発するNEXUSは、ロボットアームで他の衛星をつかみ、機器を取り付けたり軌道を変えたりできる宇宙機です。
人工衛星は打ち上げたあとに手を加えられないのが普通ですが、NEXUSはそこへ後から手を入れることを狙った機体で、2027年後半には初号機NEXUS-1を静止トランスファ軌道へ打ち上げ、米政府向けの軌道上サービスを行う計画です。

米海軍研究所は、海底から宇宙、情報の領域までを対象に、米海軍と海兵隊のための研究開発を担う科学・工学の組織です。

今回の資金は、米国防総省のOperational Energy Capability Improvement Fund(OECIF)から出ます。
これは、部隊の運用に使うエネルギーの分野で、まだ前例のない技術を実用に近づけるために支援先を選ぶ制度です。

宇宙で太陽光を集めて地上へ送るという構想自体は、新しいものではありません。
JAXAによれば、1968年にアメリカのPeter Glaser博士が提唱したもので、宇宙空間に太陽電池と送電アンテナを置き、太陽光を電気に変えたうえでマイクロ波に変換し、地上の受電アンテナ(レクテナ)へ届ける仕組みです。
マイクロ波は電子レンジなどにも使われる波長の短い電波で、向きをそろえて飛ばせます。
宇宙では地上の約1.4倍の強さの太陽光が使え、昼夜や天候の影響も受けにくいと、JAXAは説明しています。

何が発表されたか

今回の計画はASGARD(Advanced Scalable Growth Architecture for Robotic Deployment)と名付けられています。
Katalyst SpaceはNEXUSを低軌道へ打ち上げ、タイルと呼ばれるモジュール式の板状の部品を軌道上で自律的に組み立てて、大型の送電システムを作ります。
組み上がったタイルは太陽光を集め、直流の電気をマイクロ波に変換して地上へ送ります。
このタイルは開発中で、直流をマイクロ波に変える変換技術を開発したのは米海軍研究所で、タイルはOECIFの資金によって提供されます(出典:Katalyst Space「Katalyst Wins OECIF Contract for On-Orbit Power Beaming」)。

計画の中心にあるのは、自律的に組み立てるという点です。
太陽光を多く集めるほど扱える電力は増えますが、ロケットに収まる大きさには限りがあります。
タイルに分けて運び、軌道上でつなぎ合わせれば、打ち上げ時の大きさに縛られずに面積を広げられます。

Katalyst SpaceのGhonhee Lee最高経営責任者は、この仕組みを当初から補給と拡張ができるよう設計しているとしたうえで、キロワットからメガワットへ育てていく将来像を語っています。
Director of Operational Energy – Innovationの職にあるRuthAnne Darling氏は、大規模な電力・エネルギー収集装置を宇宙で自律的に組み立てる技術の実証を、基礎となる第一歩だと評価しています。

宇宙業界にとっての意味

宇宙太陽光発電は、構想が生まれてから半世紀以上が過ぎた今も実用化していません。
JAXAは、日本でも1990年代に1万kW級、2000年代に100万kW級のシステムが検討されてきたとしたうえで、課題が多く、長期にわたる研究開発を続ける必要がある段階だと説明しています。
今回のASGARDが目指すのはキロワット級で、発電所と呼べる規模ではありません。
それでも、軌道上での組み立てと、そこから地上への送電という二つの工程を、実機で続けて確かめる機会になります。

Katalyst Spaceにとっては、事業の性格が広がる案件でもあります。
同社がこれまで示してきたのは、既存の衛星に近づいてセンサーを取り付けるといった軌道上サービスでした。
ASGARDでは、同じNEXUSが、新しい構造物を組み上げる側の役を担います。

今後の注目点

技術面で焦点になるのは、マイクロ波を地上の受電アンテナへ正確に向ける制御です。
JAXAは、マイクロ波無線エネルギー伝送の地上試験で5.8GHz帯を使い、ビーム方向制御の目標精度0.5度rmsに対して0.15度rmsを確認したとしています。
一方で、少なくとも0.001度の精度が要るとする値も示していますが、これは高度約36,000kmの静止軌道から送電する場合を前提としたものです。
ASGARDの実証はそれよりはるかに低い低軌道で行われるため、どれだけの電力をどの程度の精度で届けられたのかを、軌道の条件と合わせて見ることになります。

もうひとつは、規模を広げるための条件です。
Katalyst Spaceはメガワット級への拡大を将来像として掲げています。
実証の結果とあわせて、その先へ進むために何が必要になるのかが次の論点になります。

ほしまる

ぼくが飛び立ったときは、機体は地上で組み上げてから丸ごと打ち上げるものだったんだ。宇宙で部品を継ぎ足して大きくしていくのは、まるで違う作り方だよ。

出典

ほしまる
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